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オノ・ヨーコ個展「おぼえてて」

ニューヨークを拠点に前衛芸術家として活動し、イギリスにわたった1960年代後半から芸術活動と並行して平和運動を行ってきたオノ・ヨーコさんの個展が開催中だ。

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エキサイトイズムとは?

「高い美意識と審美眼を持ち、本物を知った30代男性」に向けたライフスタイルのクオリティアップを提案する、インターネットメディアです。アート、デザイン、インテリアといった知的男性の好奇心、美意識に訴えるテーマを中心に情報発信しています。2002年11月スタート。

※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 ニューヨークを拠点に前衛芸術家として活動し、イギリスに渡った1960年代後半から芸術活動と並行して平和運動を行ってきたオノ・ヨーコさんの個展「I WANT YOU TO REMEMBER ME / おぼえてて」が、東京・青山のギャラリー360°で開催中だ。

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 展示されているのは第二次世界大戦に着想を得て制作された、写真を中心にしたインスタレーション作品。黒縁の額におさめられた女性たちと幼い子供たちが写ったモノクロの写真は、広島で実際に原爆を体験した家族の集合写真だ。そこには原爆で母親を失い、この写真が撮影されたのち疎開先で命を落とした少年や、原爆の爆風で倒壊した家の下敷きになりながらも、命からがら生き延びた女性の姿などが写っている。

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 家族の集合写真とその写真から個別のポートレートを作成、それぞれ額装された作品は、ギャラリーの壁に架けられたあとアーティスト自身の手によりガラスが割られた。無惨にもひび割れたガラスやその行為は、戦争という暴力的で愚かな歴史により、突然に断たれた家族の繋がりや絆といった、戦争がひき起す悲惨な事実を直接的に表現している。

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 オノ・ヨーコさんは2010年、現代美術の分野で人類平和に貢献した作家に与えられる芸術賞「ヒロシマ賞」を受賞した。2011年8月、広島現代美術館で開催されたヒロシマ賞受賞記念展開催のために広島を訪れ、慰霊碑に献花をしたその脚で広島から長崎へと第二次世界大戦を巡る追悼の旅をした。そこで自身も経験した戦争がひきおこす過酷な運命を再確認したという。

 タイトルの「おぼえてて」には、戦後60年以上が経過し、戦争の記憶が薄れ風化していくなか、そこで失われた尊い命や、激動の時代に翻弄され続けた女性たちの存在を忘れないという、平和への祈りのような願いがこめられている。

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 写真作品とあわせて印象的なのがギャラリーに展示された書によるタブロー作品。「世界祈念」の文字や愛、希望、夢という文字などがみえる。なかでも冒頭の「世界祈念」は、震災後に訪れた東日本大震災の被災地である福島でも書かれた言葉。グローバルな視点で芸術活動を展開しているオノさんがえがくからこそリアリティがあり重みをもつシンプルな言葉といえるだろう。

 2011年3月11日、ニューヨークの自宅で東日本大震災の報を受けたオノ・ヨーコさんは、いち早くメッセージを表明し、その後の津波被害、原発事故に対し、同じ日本人として「悔しい」という想いを語った。その言葉には広島長崎の原爆投下、そして東日本大震災をきっかけとした原発事故と、100年に満たない間に2つの放射線による被害をこうむった母国への切実な思いがこめられていた。

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 これらの作品により私たちは第二次世界大戦で失われた命と人々の絆、現在進行形でいま直面している放射線汚染という問題に真正面から向き合うことを余儀なくされる。今年の夏の広島から長崎への巡礼の旅で、戦争が残した過酷な歴史の記憶を蘇らせるとともに、戦後の焦土から復興を果たした日本の先人たちの力を再認識したというオノ・ヨーコさん。この作品が失われた命によせた慰霊であると同時に、オノさんからの「ともに頑張りましょう」という未来にむけたメッセージであることを忘れてはならない。2012年1月28日まで。

「I WANT YOU TO REMEMBER ME / おぼえてて」

開催中〜2012年1月28日(土)

Open.12:00〜19:00、日祝休(12月25日〜1月9日は休業)、入場無料

ギャラリー360°東京都港区南青山5-1-27-2F

お問い合わせ:

TEL:03-3406-5823


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