機長が荷物運びを? シートの背もたれが倒れない? LCCの“格安”のヒミツ:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/4 ページ)
2012年3月1日、日本で初めてとなる本格的LCCのピーチがデビューした。大手とは異なるビジネスモデルで驚異的な低運賃を打ち出し、航空自由化が進んだ欧米で発達してきたLCC。2000年代に入るとアジアにも波及し、その数は現在、世界で120社を超えている。LCCはどうやって“格安”を実現しているのか?
2012年3月1日、関西国際空港からピンク色のカラフルな機体が2機、相次いで飛び立った。まず朝7時過ぎに最初の1機目が札幌・新千歳へ、そしてその約20分後には2機目が九州の福岡に向けて。日本で初めてとなる本格的LCC、ピーチのデビューだ。欧米で、アジアで、LCCが急成長を続けている。徹底したコスト削減による格安でのチケット販売で、各国の大手エアラインをしのぐ高い収益率を実現しているLCCも少なくない。LCCはなぜ安い値段でシートを提供できるのだろうか?(写真提供:チャーリィ古庄)
到着20分後には準備を終えて次の目的地へ
英国のイージージェットを利用して、オランダのアムステルダムからロンドンへ飛んだときのことだ。イージージェットは1995年に設立された、ロンドン郊外のルートン空港をベースとするLCCである。設立翌年の4月にロンドンからエジンバラとグラスゴーへの2路線で運航を開始し、その後はアムテルダム線を開設して国際線もスタート。現在は欧州を中心に約130の都市にネットワークを広げている。
そのイージージェットでアムステルダムからロンドン・ルートン空港に到着後、早く降りようとする人たちで通路が混み合っていたので少し待っていると、やがて機内に次のフライトの搭乗案内アナウンスが流れ始めた。乗降扉が開かれてから、まだ10分も経っていない。そしてそれからわずか10分ほどで、同機は新しい乗客を乗せて再び滑走路に向かっていった。
私がそのとき支払った運賃は、税込みで片道約42ユーロ。2012年2月現在のレートに換算すると、わずか4300円だ。この格安運賃を実現している秘密の1つが、じつは空港での滞在時間の短さにある。同社の広報担当は「運航する機材の回転率を高めることで、大手航空会社の2倍近い収益を上げることができた」と話していた。
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