ソニー×カシオで実現! 世界初「GPS+電波時計」G-SHOCKの秘密とは?:地球上どこでも正しい時刻が分かる(3/3 ページ)
世界で初めて「GPS+電波時計」を実現した腕時計、G-SHOCK「GPW-1000」。製品の心臓部ともいえるGPSチップは、ソニーとカシオの共同開発で実現したもの。密接に連携を取って開発したという、両社のエンジニアに取材した。
「ここまでやるのか」と驚いた
カーナビであればGPS衛星の信号から自分の位置を割り出すことが重要だが、時計の場合、知りたいのは「時刻」だ。タイムゾーン受信モードでGPS衛星から時刻情報を受信するとき、いかに消費電力を抑えるか? GPW-1000ではこの課題をクリアするために面白いアプローチをしている。
「GPS衛星から送られる信号を受信して時刻を知ろうとする場合、位置と時刻の両方を知りたい場合は衛星を4つ捕まえる必要がありますが、自分の位置を割り出す必要がなく時刻だけを知りたいなら、衛星を1つ捕まえるだけで済みます。時刻だけを取得するなら約6秒ですが、位置を取ろうとすると最低30秒はかかります。受信時間が短ければ短いほど消費電力が抑えられます」(ソニー デバイスソリューション事業本部アナログLSI事業部コミュニケーションLSI製品部 干台岳氏)
GPSチップ側から見ると、4つの衛星を捕まえるということは4つの受信チャンネルを使うということであり、捕まえる衛星が1つだけなら1チャンネルで済むため、消費電力を大きく減らすことができる。GPS衛星を捕まえる数を減らし、受信する信号をできる限り短くすることにより、GPSチップが使う電力を最小限に抑えているのだ。
この他にもCXD5600GFには、汎用品よりもクロックを落とす、受信チャンネルごとにロジックの回路を制御する、負荷に合わせて動作シーケンスを最適化する、回路ブロックごとに電源を制御する……など、省電力化のための工夫がさまざまに凝らされている。
GPW-1000が実現したのは、カシオとソニーが緊密なコミュニケーションをとり、キーデバイスであるCXD5600GFの省電力化に取り組んだからだとカシオの担当者は話す。そしてソニーのエンジニアも「自分たちももちろん低消費電力化には取り組んできたが、レベルが違った。『ここまでやるとは』と驚いた」と話していたのが印象的だった。
カシオとソニーの努力とアイデアが込められたGPW-1000。発売日は7月26日とのことなので、実際に試せる日が楽しみだ。
G-SHOCK「GPW-1000」
- 主な性能:耐衝撃性能、耐遠心重力性能、耐振動性能、20気圧防水
- 受信電波(GPS):1575.42MHz
- 受信電波(標準電波):40kHz〜77.5kHz JJY(日本、福島局 40kHz、九州局 60kHz)、WWVB(米国 60kHz)、MSF(英国 60kHz)、DCF77(ドイツ 77.5kHz)、BPC(中国 68.5kHz)
- 電波受信方法(GPS):時刻受信(自動、手動)、位置受信(手動)
- 電波受信方法(標準電波):自動受信(最大6回/1日、中国のみ最大5回/1日)
- ワールドタイム:世界27都市(40タイムゾーン、サマータイム設定機能)+UTC(協定世界時)の時刻表示、2都市時刻同時表示
- ストップウオッチ:1/20秒計測、24分計
- タイマー:セット単位 1分、最大セット 24時間、1秒単位で計測
- アラーム:時刻アラーム1本
- 使用電源:タフソーラー(ソーラー充電システム)
- 連続駆動時間:パワーセービング状態で約18カ月(暗所で一定時間が経過すると運針を止めて節電)
- サイズ:66.0×56.0×18.8ミリ(縦×横×厚さ)
- 重量:約126グラム
関連記事
- 地球上どこでも自動で時刻合わせ:世界初の「GPS+電波受信」、ハイブリッドG-SHOCK発表――カシオ
バーゼルワールドで参考出品されていた、世界で初めてGPS+標準電波を受信できるハイブリッドウオッチが製品化。G-SHOCKのハイエンドモデルとして7月26日に発売される。 - BASEL WORLD 2014:カシオ、世界初「GPS+電波時計」G-SHOCKやスマホ連携アナログウオッチをバーゼルで参考出展
スイスで開催中のバーゼルワールド2014。カシオ計算機は、世界初のGPS+電波受信機能の両方を搭載したG-SHOCKや、Bluetoothでスマートフォンと連携するEDIFICEなど注目モデルを多数出品している。 - 転換点となったG-SHOCK、カシオはスマートウオッチを作るのか――増田裕一さん
G-SHOCKインタビュー連載、最終回は、初代G-SHOCKの商品企画を担当し、以来ずっとカシオの時計事業を中から見続けてきた事業部長、増田裕一氏だ。30年間のG-SHOCKの歴史でターニングポイントとなったモデルとは? ブームの終わりをどう乗り越えたのか? 1万2000字以上のロングインタビューをお届けする。 - G-SHOCKは今や、ハイエンドも、売れ筋もアナログが主力――斉藤慎司さん
G-SHOCKブームから15年。実はここ4〜5年、海外市場でG-SHOCKの販売数が急増しており、2013年は過去最高の出荷本数となる見込みだ。好調を支えるアナログモデルについて、SKY COCKPIT最新作「GW-A1100」を中心に話を聞いた。 - 開発者インタビュー:建築物の耐震構造を応用――振動に強いG-SHOCK「GW-4000」の秘密
G-SHOCK「SKY COCKPIT」シリーズの最新作「GW-4000」は、20Gまでの耐振動性能を備える。激しい振動に耐える仕組みを考案したのは、入社2年目の若いエンジニアだった。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.