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» 2016年01月25日 08時00分 UPDATE

こだわりバカ:「お客様第一」がスローガンの会社は、なぜ「お客様第一」でないのか (1/5)

企業の経営理念やスローガンを調べてみると、「お客様第一」をよく目にする。しかし、そうした企業は本当に「お客様第一」を実践しているのだろうか。「実践できていない」理由について、筆者の川上徹也氏は……。

[川上徹也,ITmedia]

 さてこの連載も4回目。「飲食店」「大学」の空気コピー、「自治体」のメルヘンコピーなどを考察してきたが、今回がいよいよ本丸だ。一般企業の「経営理念」「ミッション」「企業スローガン」などに使われるフレーズを取り上げる(本題ではないので、本稿ではそれぞれの言葉の厳密な意味の違いは取り上げない)。

 前回のコラムで、企業・団体などが発信するキャッチコピーは「川下コピー」「川中コピー」「川上コピー」という3つの階層に分けられることを書いた。

 商品広告やPOPなどで使われる生活者が一番よく目にする「川下コピー」。長期的なキャンペーンやブランドを表現する時に使われる「川中コピー」。経営理念や企業スローガンなど使われる「川上コピー」。長期的に企業団体の価値を引き上げるには、何よりも「川上コピー」が重要であることも語った。水源である川上での旗印が明確になっていないと、川中や川下でどんなにがんばっても一時的な効果しか得られないからだ。

 そして、最も重要なのにもかかわらず、企業の広告広報活動において一番軽視され、空気コピーがまん延しているのがこの「川上コピー」なのだ。大学や自治体であれば、「川上コピー」が空気のような存在になっていても、営利がすべての活動目的ではないのでまあ許される。個人経営の飲食店であれば規模が小さいので仕方ないとも言える。しかし一般企業においては、それは大きな損失につながるのだ。

 CMなどで生活者向けの商品広告(川下コピー)やブランド広告(川中コピー)を大量にうっているような有名企業であれば、川上コピーが空気コピーになっていても、川下川中の圧倒的な存在感で誤魔化すことはできる。だが、日本の99%を占める中小企業において、川上コピーが空気のような存在になっているのは非常にもったいない。経営理念や企業スローガンは、額に入れて社長室に飾っておくものではない。朝礼で意味も考えず唱和するお経でも念仏でもない。中小企業にとって他社と差別化する最大の武器にすべき存在なのだ。

 「川上コピー」が軽視されがちなのは、商品の売り上げに直接すぐに影響しないことが大きな要因だろう。しかし、川上を軽視したツケは必ず数年後に川中、川下にくだってくる。ただの空気ならばもったいないだけだが、経営理念や企業スローガンが実態とかけ離れている「言行不一致コピー」になっていたら、源流から汚染物質を日々垂れ流しているようなものだ。

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