2015年にセブン-イレブンがカウンターでドーナツを販売し始め、にわかに過熱したドーナツ戦争。しかし16年は状況が一転、約1200億円といわれるドーナツ市場のパイを各社が奪い合う苦戦の年に。コンビニも専門店も会心の一手を繰り出せずにいる。
セブン-イレブンが15年から全国展開したコンビニドーナツ。当時過熱していたコンビニコーヒーブームの“ついで買い”需要を狙った企画にはすぐにファミリーマートやローソンが追随。コンビニのレジ横は“ドーナツの定位置”になった。
しかし現在、コンビニドーナツは苦しい状態になっている。11月には各社の苦心を示すニュースが相次いだ。
先駆者だったセブン-イレブンのドーナツは、当初は1店舗で1日100個売れるほどの好調を見せ、15年度は4億個、16年度は6億個の販売を目指していた。しかし、15年夏に失速。16年1月には新商品の投入や販売方法の刷新などを余儀なくされた。
そして11月8日、「全商品リニューアル」という再度の改革に踏み切った。定番商品の見直しのほか、焼きドーナツやもちもち食感のドーナツなど“変わり種”も投入し、ドーナツ売り場の大きな変化を狙う。セルフ式のドリップコーヒー「SEVEN CAFE」の販売数が引き続き伸長し、既存店売上伸び率に寄与しているだけに、伸び悩むドーナツにもどかしさを見せる。
他者の雲行きも悪い。価格を抑えて9種類のドーナツを提供していたファミリーマートも商品ラインアップを刷新し、11月15日から全10種類を販売。パッケージデザインもこれまでのシックなデザインからポップなものに大きく変更する。
ローソンはクイニーアマンやマフィンなど独自商品ラインアップをウリにしていたが、いずれもヒットは出ておらず、店舗売り上げにもあまり寄与していないもようだ。10月発表の17年度上期の決算は、10年ぶりに減益に転じ、さまざまな商品に関してテコ入れが求められている状態だ。
コンビニドーナツに客を奪われたのがドーナツ専門店だ。もっとも大きなインパクトがあったのはダスキンが展開する「ミスタードーナツ」だろう。売上高は年々減少傾向にあったが、15年度の1020億円から16年度は915億円と100億円以上の大幅減収。11月7日には定番商品の値下げを行い、“100円ドーナツ”を増やして割安感を打ち出す戦略を発表した。出店コストの問題などを解決するべく“持ち帰り専門店”の業態も開始する。
その一方で、コンビニドーナツやミスドドーナツとは客を奪い合わないドーナツもある。“SNS映え”する華やかなもの、変わり種のもの、素材にこだわったものなど、独自路線を追求した持ち帰り用・食べ歩き用のドーナツ専門店が、都内を中心に存在感を増しつつある。
このようなタイプのドーナツは、1個150〜250円とやや高価格で、中には400円近いものもある。これらのドーナツのライバルになるのは、コンビニやミスタードーナツではなく、シュークリーム、ワッフル、クレープなどの、食べ歩きできるスイーツを扱う店や、スターバックスなどのカフェ業界になる。
しかし高級路線・カフェ路線のドーナツの世界も、厳しさを増している。鳴り物入りで日本に上陸したクリスピークリームドーナツは、160〜230円のドーナツを提供し、「コーヒー&ドーナツ」の食文化をアピールし、当初は連日の行列が話題になった。しかし、味が日本の消費者に合わなかったのもあり、日本進出10周年を前に苦境に立たされている。15〜16年は24店舗を閉店し、直営店舗数は50を割り込んだ。日本に定着するために、イメージ戦略の転換を迫られている状況だ。
勝者がいないまま過熱するドーナツ戦争。お手軽なコンビニドーナツが勝つのか、低価格と豊富なラインアップをアピールする専門店が勝つのか、高価格路線が勢いをつけるのか。まだ答えは見えていない。
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