LINEのIPO後初決算は営業益10倍、最終黒字に転換広告事業が全体をけん引

» 2017年01月25日 17時35分 公開
[ITmedia]

 LINEが1月25日発表した2016年12月期通期の決算(IFRS)は、売上高が前期比16.9%増の1407億円、営業利益は前期比で約10倍の198億9700万円と大幅な増収増益を果たし、最終損益は79億円の黒字(前期は79億円の赤字)と、通期で最終黒字に転換した。「LINE NEWS」などのメッセンジャー型広告が好調だった。

LINEがIPO後初決算を発表

全体をけん引する広告事業

 広告事業の売上高は547億円(50.2%増)と大幅増。「LINE NEWS」「LINE@」などの有料公式アカウント数が拡大し、メッセンジャー型広告が全体をけん引した。パフォーマンス型広告も順調に推移した。

 「広告は増加トレンドにある。企業の公式アカウントを軸としたメッセンジャー型広告は、よりCRMに近いソリューションに入っていく。パフォーマンス型広告も、純粋なオンライン広告として成長していく見込み」(出澤剛社長)

ほぼ横ばい&下降トレンドのコミュニケーション&コンテンツ事業

 LINEアプリのスタンプ、着せかえなどコンテンツ販売や、音声通話機能「LINE Out」などが属するコミュニケーション事業の売上高は293億円(2.0%増)だった。年末年始に、お年玉をモチーフにした有料スタンプを買うと他のユーザー10人に“お年玉”を送ることができるイベント「LINEのお年玉」をスタート。ユーザーが相互購入し、オリジナルスタンプの購入者数とアクティブ使用率が増加した

 一方、「LINE GAME」「LINEマンガ」「LINE MUSIC」などが属するコンテンツ事業の売上高は448億円(9.1%減)にとどまった。「LINE ディズニー ツムツム」「LINE ポコポコ」など既存タイトルは順調だったが、新規タイトルが伸び悩んだ。「LINEの友達環境を活用した新しい機能や構造化を実装し、またしっかり作りこんだゲームタイトルを出していく。17年も、16年と同様に10以上のタイトルを予定している」(出澤社長)。LINEマンガの成長は著しいという。

LINE Pay、LINEモバイル……新規事業を新たな柱に

 決済サービスの「LINE Pay」や、格安スマホ「LINEモバイル」、カメラアプリ「B612」などその他事業の売上高は119億円。スタンプを使った「LINEのお年玉」キャンペーンをLINE Payと連動させ、新規ユーザーが増えた。今期は「土台を築くことを重視」し、利用者数と総額が増えつつあるという。スマホ決済市場ではAppleやAnyPayなどが参入しているものの、まだ大きくない市場の中で戦う姿勢を見せる。

 9月に開始したLINEモバイルは、ユーザーから好評という。Amazonでの取り扱いなど販路を増やし、拡大するMVNO市場の中で存在感を出していくという。

 また、キュレーションメディア問題で注目が集まるNAVERまとめについては、「著作権侵害の疑いがあるユーザー投稿を監視し、まとめ非表示などを行っている。発信者の情報開示についても一部対応している」(出澤社長)という。12月に発表した「オーサーランク作成」「1次権利者への還元」の方針を進めていくというが、具体的な時期については言及しなかった。

過去最高の営業利益・純利益となった2016年

2017年のLINEは?

LINE出澤剛社長

 「IPO(新規上場)を終え、黒字になった。グローバルプレイヤーとして大きな戦いをしていく中で、次の挑戦の準備が整った」(出澤社長)

 日本のコミュニケーションアプリではトップシェアを持つLINEだが、北米と中国でのシェア獲得に失敗するなど、グローバルでは挑戦者の立場にある。トップシェアを持つタイと台湾、トップ争いに参加できているインドネシアを重視し、現地に特化した施策を進める。

 今後は、LINEのサービス全体で作り上げる“スマートポータル”のさらなる拡大を目指す。AIエンジンと有人チャットを組み合わせたカスタマーサポートサービスも進める予定だ。今期の第1四半期(1〜3月)は、広告事業の順調な成長、コンテンツ事業とコミュニケーション事業の安定的な売上収益から、前年同期比で増収と営業黒字化を見込む。

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