タクシー「初乗り410円」に業界が期待する、2つの狙い短距離利用は値下げ

» 2017年01月27日 18時14分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 東京都23区・三鷹市・武蔵野市で1月30日、タクシーの初乗り運賃が410円に改定される。初乗り距離を短縮することで、高齢者などの「ちょい乗り」や外国人観光客の需要を取り込み、タクシーの利用客数減少に歯止めをかける。1月27日、東京ハイヤー・タクシー協会と東京都個人タクシー協会が会見し、狙いと期待を語った。

photo 新運賃について説明する東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長(左)と東京都個人タクシー協会の秋田隆会長

短距離利用は値下げに

 改定後の初乗り運賃は、1.052キロまでで410円(上限運賃)。それ以降、237メートルごとに80円が加算される。現行は2.0キロまでで730円であることから、利用距離が2.0キロまでなら運賃は値下げになる。2.0キロを超えて約6.5キロまでの運賃は、距離によって値下げになる部分と値上げになる部分がある。6.5キロ以上だと値上げになる。国土交通省が実証実験などを経て、2016年12月に公示した。

 新運賃が適用されるのは、1月30日午前0時以降に出庫する車両から。車庫に戻る時間は車両ごとに異なるため、30日は新運賃と旧運賃のタクシーが一部混在することになるという。

photo 現行運賃と新運賃(国交省のプレスリリースより)
photo 運賃と乗車距離のイメージ(国交省のプレスリリースより)

気軽に「ちょい乗り」増やす

 会見した東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長によると、運賃改定の狙いは2つある。1つは「ちょい乗り」需要の喚起だ。タクシーの初乗り運賃は値上げが続き、短距離で利用しにくくなっていた。高齢者などが通院や買い物で気軽に利用できるようになれば、利用客の増加が見込める。

 もう1つは外国人観光客の増加への対応だ。現行の初乗り距離2キロというのは世界的にも長く、高額運賃という印象を与えていた。初乗り距離短縮によって国際的な標準に近づけ、「ロンドンやニューヨークと比べても、十分リーズナブルと感じてもらえる」(川鍋会長)ようにした。

 16年8〜9月に都内4カ所で実施した実証実験の結果によると、日本人利用者の6割が「初乗り運賃が410円になれば利用回数が増える」と回答。外国人利用者は約8割が運賃について「安価」または「適当」と回答した。この結果からも、運賃改定の効果が見込めるという。

 川鍋会長は「タクシーの輸送人員はこの10年で3割減っている。強い危機感がある」と明かした。短距離利用客や外国人観光客にとって利便性を高めることで、その減少に歯止めをかけたい考えだ。

運転手へのフォローは

 一方、運転手にとっては短距離利用客の単価が減るため、「短距離利用者が乗車を嫌がられるのでは」という懸念がある。それに対しては、「短距離利用の回数が増えることで全体の売り上げがプラスになれば、運転手にも還元できる。大きな意義の浸透を図る」(川鍋会長)方針。各事業者で運転手や利用客の声を集めながら、接客サービスなどをフォローしていくという。

 東京五輪・パラリンピックを念頭に、利用しやすい運賃にするだけでなく、外国語対応のための機器導入や運転手のホスピタリティー向上などにも対応していく方針。そのためには、運転手の待遇改善や人手不足解消などが欠かせない。業界全体として、「中長期的な発展を目指し、新しい姿に転換していく」(川鍋会長)取り組みに注目が集まりそうだ。

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