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» 2017年07月19日 07時30分 UPDATE

劇的な変革のウラ側:「定時退社」「残業時間2割減」三井住友海上とJALの挑戦 (1/2)

社員約2万人に対して「原則午後7時退社」を可能にした三井住友海上火災保険、わずか半年で残業時間を2割減少させた日本航空――働き方改革を成功に導いた企業は、どのようにして変革を進めたのか?

[ITmedia]

 場所や時間に縛られず働きたい。生産性を向上し労働時間を短縮したい。「働き方改革」がうたわれ、新しい働き方や組織のあり方に期待を寄せる声が高まっている。

 そんな中、既に柔軟な働き方を実現した企業が現れている。例えば、三井住友海上火災保険は社員約2万人に対して「原則午後7時退社」を可能にした。日本航空はわずか半年で残業時間を2割減少させている。

 急激な組織改革には多くの障壁が存在するのも事実だ。上記の2つの企業も、労働時間短縮に伴う生産性向上や、多様な働き方への対応、社員の意識改革など、実現に向けてさまざまな課題を乗り越える必要があった。

 働き方改革を成功に導いた企業は、どのようにして変革を進めたのか。ITmedia ビジネスオンライン編集部が主催するセミナーで、三井住友海上火災保険の「働き方改革推進チーム」と、日本航空(JAL)の「人財戦略部ワークスタイル変革推進グループ」の事例が紹介された。

「原則午後7時退社」を実現する4つの取り組み

 基調講演では、三井住友海上火災保険 人事部の荒木裕也氏が登壇した。同社では、今年4月から「遅くとも原則午後7時前に退社」というルールを定め、全社員約2万人を対象に取り組んでいる。荒木氏は「働き方改革の主役は社員1人1人。『全社員総活躍』に向けて、個人がさらに生産性を高めることで、『活気あふれる最強の職場』の実現を目指す」とその狙いを話す。

 今回の取り組みにあたり、人事部を中心に本社部門各セクションの組織長から構成する「働き方改革推進チーム」が結成された。「遅くとも午後7時前退社」を実現するためには、労働時間の短縮=業務効率の向上が必要不可欠となる。推進チームでは「生産性の向上」「個人・マネジメント意識改革」「無駄・非効率の排除」「多様な働き方の支援」という4つの観点から就業環境の整備を実施している。

三井住友海上の「生産性向上の考え方」

 「生産性の向上」では、全社員へのシンクライアントPCの配布や社用スマートフォンの配備などのインフラ整備を実施し、完全ペーパーレス化を実践。「個人・マネジメント意識改革」では、トップからのメッセージを発信し、マネジメント層の研修も行うなど、働き方の意識を変えることに注力した。

 「マネジメント研修は同部門の部長が課長に向けて実施し、研修の成果を職場へ落とし込んだ。加えて、外部の専門家が監修した『働き方改革ガイドブック』の作成や、全拠点を対象にした『働き方改革セミナー』の開催などを通じ、全社員への浸透を図った」(以下、荒木氏)

 「無駄・非効率の排除」では、全業務の棚卸しによりプロセスを抜本的に見直し、毎月1人30分〜1時間かかっていた定型業務を洗い出し、職場毎に見直しを行った。また、全国の拠点で発生している約400の定型業務をExcelやVBAを使ってワンクリックで終えられるよう自動化することに成功した。

 在宅勤務のルールを拡充した「多様な働き方の支援」では、昨年10月からの9カ月間で、1100人の社員が在宅勤務を実施している。また、育児休業中の社員によるテレワークも試行中。キャリアロスの解消や職場復帰に備えたリハビリを実現するために、制度を利用する不安感を払拭するためのトライアルを実施している。

荒木裕也氏

 「働き方改革においては、変化に消極的になってしまう社員も生まれがち。社員全員が笑顔で改革に取り組めるよう、社内の雰囲気を盛り上げる施策も重視している。ポータルサイトの新設や定期的なニュースの発信などを通じ、各拠点での取り組みをピックアップしているのもその1つ」

社員1人1人の当事者意識を高める

 「『働き方改革』という言葉は、いわばバズワード。一過性の施策ではなく、当たり前の業務として定着して初めて意味がある」と荒木氏は話す。そのためには各職場単位での取り組みも欠かせない。

 ユニークなのは「退社時間宣言ツール」だ。毎朝、始業前に退社時間が書かれたカードを自席に掲示しておき、退社予定を他の社員に周知するというもの。カードは午後3時〜6時半までは青、午後7〜8時は黄、午後9時は赤と色分けされている。職場を見渡し、青が多ければ閑散期、黄や赤が目立てば繁忙期と、一目で勤務状況を把握できる。

「退社時間宣言ツール」

 「以前は退社時間をスケジューラに記入していたが、あえて物理的に可視化した。勤務時間の管理だけでなく、部下や同僚への『思いやり』としても機能している。例えば、黄色や赤のカードを掲示している社員に対しては、急ぎでない仕事を頼みづらい。結果として組織の生産性向上にも効果がある」

 全国各地の拠点で行っている取り組みも盛んだ。金沢では「残業チケット」を1人5枚(1カ月分)配布し、残った枚数に応じて表彰をしている。名古屋では「残業ルーム」という専用の会議室を設け、午後7時以降の残業は社員が集まって集中して終わらせる。働き方改革の機運を盛り上げる施策が、社員2万人の当事者意識を育み始めている。

 「当社の働き方改革は決してハイテクなものではなく、むしろローテク。ITを活用した取り組みを進めるなどまだ改善の余地はある。働き方改革は個人と組織の両軸で回すもの。創出した時間で自己成長を図ってもらい、ひいては組織を強化してもらいたい」

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