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» 2017年08月15日 07時30分 UPDATE

個人間モバイル決済は便利?:コミケで「pixiv PAY」使ってみた

小銭を中心とした少額決済が繰り返される巨大な市場コミックマーケット。ピクシブが直前にリリースした個人間モバイル決済アプリ「pixiv PAY」の実力は? 夏コミで実際に使ってみた。【訂正】

[青柳美帆子,ITmedia]

 8月11〜13日に開かれた日本最大級の同人誌即売会「コミックマーケット」(コミケ、東京ビッグサイト)。コミックマーケットは「サークル」と呼ばれる出展者が同人誌やグッズなどを販売し、一般参加者がそれを購入するイベント。3日間累計で約3万2000サークルが出展し、約50万人が訪れるコミケは、日本最大級の個人間売買が成立している巨大な市場だ。

 開催直前の8月10日、イラストSNS「pixiv」を運営するピクシブが、イベントなどでの購入代金をクレジットカードで支払えるようにするスマートフォン向けアプリ「pixiv PAY」(iOS)をリリース。売る側がアプリ上に表示した2次元コード(QRコード)を買う側がアプリで読み込むと、登録しておいたクレジットカード(VISA、Master)で支払える仕組みだ。

コミケにモバイル決済アプリ「pixiv PAY」が登場。その実力は……?

 「イベント時の会計で長い行列を待ったり、大量のお金を持参したりする現状に対し、クリエイターがもっと便利で手軽に取引できる決済環境を実現することを目指した」とピクシブは狙いを説明する。

 コミケに行ったことがない方は、「なぜ大量のお金を持参する必要があるのか?」と疑問に思うかもしれない。

 コミケを運営するコミックマーケット準備会が2011年に発表した調査結果によると、コミケでは3日間で約900万冊の同人誌が売れており、1人の平均支出額は男性が2万8400円、女性が2万2865円という(企業ブースでの支出は除く)。コミケでは多くの本が1000円未満で売られている(基本的に100円単位)が、サークル側が釣り銭を用意しきれない可能性があるため、ぴったりと払えるように小銭を多めに持っていくことがマナーとして普及している。小銭を中心とした少額決済が3日間で膨大な数繰り返される、それがコミケでもある。

1人の平均支出額は2万円を超える(=コミックマーケット35周年調査より)

 参加者は大量の1000円札と小銭を大混雑の中持ち歩き、支払うことになるが、現金(特に硬貨)は重くてかさばる上に、危険でもある。コミケではスリや置き引きへの注意が呼び掛けられているし、最近は偽札が出回ったことが話題になった。

 そんなコミケで気軽に利用できるモバイル決済が普及すれば、こうした被害の予防にもなり、何より参加者の利便性が高まりそうだ。

pixiv PAY、実際に使ってみてどうだった?

 私(記者)もサークル側として参加し、20年前のアニメに関する評論同人誌を頒布した。せっかくコミケに売り手側として参加するのだから、pixiv PAYも試してみたい。そう考え、自分のTwitterで「pixiv PAY決済利用できます!」と告知。アプリをダウンロードし、当日に備えた。

 結果、サークルに訪れて本を買ってくれた約400人のうち、pixiv PAY決済の利用者は6人(そのうち1人は「ここでpixiv PAY決済ができると聞いて……」とやって来たピクシブの中の人)。利用率はおよそ1.5%、売上額は4700円だった。

 使ってみた感触は「悪くない」。現金のやりとりに比べてやや決済までに時間がかかる印象だが、操作はシンプルで使いやすいし、表示もサクサクしていた。その反面、「1000円や500円などのキリのいい価格を設定していたら、現金の方がずっと速いかもしれない」と感じた。

サークル側からのpixiv PAY利用画面。事前に作品を登録し、タッチして操作する。レジとしての利用も可能

 購入者側の利用体験はどのようなものだろうか。購入者としてpixiv PAYを利用した「ねとらぼ」の記者に感想を聞いてみたところ、「小銭のやりとりをしなくて済むのは非常に楽。決済時間も想像していたよりも速かった」とプラス評価の一方、「決済中にインターネットブラウザに遷移する部分がありやや煩雑な印象を受けたので、全てがアプリ内で完結するようにしてほしい」という懸念点も挙げていた。

【訂正:2017年8月15日午後5時 初出でアダルト商品の取り扱いについて誤った情報を記載していたため、該当する文章を修正し、詳細を追記しました】

pixiv PAYでR18商品は取り扱えるのか?

 pixiv PAYの利用規約には登録禁止商品として「わいせつ物、児童ポルノに関連する商品」が挙げられている。コミケでは成人向け同人誌も数多く頒布されており、これらの商品が取り扱えない場合、普及が難しくなりそうだ。しかしピクシブの担当者によると、「基本的に取り扱いはOK」という。

 規約に記載してある「わいせつ物」は、刑法175条に該当するものであり、性器の露出の描写などが抵触する。しかし、コミックマーケットの規則「コミケットアピール」に準じ、商業誌レベルの修正を行ったものであれば、pixiv PAYでも取り扱うことができる。

コミケで電子決済は増えるのか

 pixiv PAYは、今回の夏コミで初めて実戦に投入された。利用状況をピクシブの担当者に聞くと、「夏コミの具体的な数字は公開できないが、ちらほら利用している方がいた。想定しているくらいの利用状況だった」という。

 夏コミではiOS版のみだったが、冬コミに向けてAndroid版のリリースも予定する。また、ピクシブが展開するECサービス「BOOTH」との連携や、サークル主以外との共有機能、レジとして使う機能などの充実を図る。

 また、夏コミでは通信状況の検証を行った。「リリースにあたって、コミケの通信状況に耐えられないリスクも想定していたが、夏コミでは快適に利用できた。冬コミは夏コミよりはpixiv PAYでの決済は増えると考えられるが、通信の問題が発生する可能性は低いと考えている」(担当者)という。

 “想定通り”の滑り出しとなったpixiv PAY。今後さらに広がっていくためには、購入者側はもちろんのこと、サークル側に周知を進めていかなければならない。しかし現時点では、1会計につき発生する決済手数料3.6%+10円の手数料(17年12月まではキャンペーンで無料)や、場合によっては現金払いの方が速いことなどが導入の壁になってくるだろう。

 巨額の現金が動くコミケで、モバイル決済は存在感を出すことができるのか。ピクシブ以外のプレイヤーは参加してくるのか。冬コミでの変化に期待したい。

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