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» 2017年11月20日 10時00分 公開

「AIに仕事を奪われない働き方」「生産性を高めるのは集中力」――専門家たちが語る働き方改革のホンネ

ITmediaビジネスオンライン編集部が主催する働き方変革セミナー「日本の『非生産的な文化』から脱却せよ――社員ひとりひとりが輝くための働き方シンカ論」(協賛:ヴイエムウェア、ダイワボウ情報システム)が大阪市内で開かれた。基調講演および特別講演では専門家たちが企業や個人が本当に考えるべき働き方改革について論じた。

[PR/ITmedia]
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 「働き方改革」や「ワークスタイル変革」に関する話題を聞かない日はないというほど、日本においてこのテーマは大きな関心ごととなっている。企業はもちろん、ビジネスパーソン個々人でもいかにして従来の働き方から脱却していくかを考える機会は格段に増えているだろう。

 そうした中、ITmediaビジネスオンライン編集部が主催する働き方変革セミナー「日本の『非生産的な文化』から脱却せよ――社員ひとりひとりが輝くための働き方シンカ論」(協賛:ヴイエムウェア、ダイワボウ情報システム)が10月19日に大阪市内で開かれた。本稿ではその基調講演および特別講演に登壇した専門家たちのスピーチから、今、企業や個人が本当に考えるべき働き方改革の論点を見ていこう。

日本人にこそ勧めたい「work 3.0」という働き方

 「日本人の生産性はG7(日米欧の主要7カ国)の中で最低」。こう厳しい口調で指摘するのは、プロノイア・グループ代表取締役およびモティファイ取締役チーフ・サイエンティストを務めるピョートル・フェリークス・グジバチ氏だ。同氏は「0秒リーダーシップ」、「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法」などの著書で知られ、長年にわたり人材開発に携わってきた実績を持つ。

モティファイ CSOのピョートル・フェリークス・グジバチ氏 モティファイ CSOのピョートル・フェリークス・グジバチ氏

 ピョートル氏が示したある調査によると、日本人の就業1時間当たりの付加価値は41.30ドルで、米国(67.30ドル)やドイツ(64.40ドル)などと比べてその差は歴然としている。それどころか、「昼間からワインを飲んだり、昼寝したりするスペイン人やイタリア人よりも生産性が低いのが日本人なのです」とピョートル氏は苦笑する。

 なぜこうした事態に陥っているのか。ピョートル氏によると、日本企業のビジネスパーソンは、(1)分析しすぎる(2)持ち帰って検討する(3)無駄な打ち合わせばかり、という悪しき習慣があり、これがボトルネックになっているという。

 「経営会議などの参加者がエクセルシートを眺めたり、自らデータ入力したりしています。これは高い給料をもらっている管理職のやる仕事ではありません。また、営業マンが持ち帰って検討するというのは、その彼に案件を決定する意識がないことの表れです。そんな営業マンに会うのは顧客にとっても時間の無駄でしょう」(ピョートル氏)

 こうした働き方をしているようなビジネスパーソンは、近い将来、人工知能(AI)をはじめとするデジタル技術に仕事が奪われてしまうはずというのがピョートル氏の見解だ。

 そうならないためにはどうすれば良いのだろうか。ピョートル氏は「work 3.0」を提唱する。work 1.0は勤勉さによる生産経済、work 2.0は知能や服従によるナレッジエコノミー、そしてwork 3.0は情熱や創造性、率先によるクリエイティブエコノミーの世界を実現するような働き方だとする。

 「1.0は同じ動作を繰り返してモノを生産していくこと、2.0は専門性や資格といった知を武器に働くことで、現在多くの人たちがこのステージにいます。ただ、これらの仕事はデジタルによって自動化やアウトソーシングが可能なので、今後は厳しいでしょう。そこでゼロから新しいビジネスやアイデアを生み出すような仕事である3.0が不可欠なのです」(ピョートル氏)

 そうした働き方を実現するためには、企業における仕事のあり方を自前主義からオープンにしたり、社員の長時間労働を優遇するのではなく、社員にさまざまな体験を与えるようなエンプロイーエクスペリエンスを提供したりするべきだとピョートル氏は力を込めた。

生産性向上のカギは「集中力」

 「集中力」という切り口で働き方改革を実践するのが、メガネブランド「JINS」を展開するジンズである。同社の商品であるメガネ型デバイス「JINS MEME」には3点式眼電位センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーが付いていて、ユーザーのさまざまな心身データを収集することができる。大きな特徴の1つが、まばたきの回数や眼球の動きなどから導き出される集中力の測定だ。

 「働き方改革の議論を見ていると、残業時間の削減ばかりが目につきますが、果たしてそれが本当の改革と言えるのでしょうか。仕事の生産性をどうやって高めていくかが重要だと考えています」と話すのは、ジンズでJINS MEME Grマネジャーを務める井上一鷹氏だ。

ジンズ JINS MEME Grマネジャーの井上一鷹氏 ジンズ JINS MEME Grマネジャーの井上一鷹氏

 では、生産性を高めるにはどうすればいいのだろうか。そのカギは「集中している時間の有効活用」にあるという。井上氏によると、人間が本当に集中できるのは1日に4時間程度で、この時間をどの仕事につぎ込むことができるかが生産性アップに大きく関係するという。

 そこで同社では、JINS MEMEを社員に装着させて、集中力の高い曜日、時間帯、場所などを分析した。例えば、曜日については月曜日や金曜日は集中力が低く、水曜日が高いという結果が出た。また時間帯については、午前中に集中力が高い、夕方に高いなど社員によって傾向が分かれることが分かった。

 次に、社外の企業に協力を仰ぎ、実証実験を行った。人材サービスのビズリーチにおいて26人の社内エンジニアを対象に、1週目はJINS MEMEをかけて集中度を測定し、2周目は集中できる時間に重要タスクを寄せて作業時間をシフトした。すると1日の集中時間は実験前後で15分増加、年間換算で61時間も増えるという結果が出た。

 そのほかにもいくつかの企業で実証実験するなどして、仕事をいつ、どこで行うのが最適なのかを数値データとして可視化していった。これを基に各自が働き方を柔軟に変えていけば、少なくとも従来よりも生産性は高まると言えるだろう。

 ただし、集中力にも課題があった。ある調査によると、人間が深く集中するには23分かかるそうだが、オフィスで仕事をする場合、11分間に1回のペースでメールやチャットが来たり、同僚に直接話し掛けられたりするため、深い集中に入るのは非常に難しいのだという。実際、ジンズでも多くの社員がオフィスにいる午前9時〜午後8時の時間帯は、ほとんど深い集中ができていないというデータが出たのだ。

 そうしたビジネスパーソンが抱える課題に対して、ジンズが考え着いたのは「世界で一番集中できる場所を作る」ということだ。これまでの実証実験によるデータに加えて、行動科学などの専門家である医師の石川善樹氏監修の下、「Think Lab」というワークスペースをオープンする。科学的根拠に基づき、人間が集中状態を生み出すために必要な要素を盛り込むとともに、例えば、収束思考(ロジカルチェック)や発散思考(アイデア創出)など集中する作業の内容に応じて最適な場所を用意する。

 「イノベーションを起こすためには、チームのコミュニケーションと個人の集中の両方が必要です。今の日本企業には500万人の“集中難民”が存在すると見ており、彼らを支援し、仕事の生産性をもっと高めることが私たちの役目だと考えています」と井上氏は意気込む。

 同社は今後、場の提供だけでなく、さまざまな企業と連携して集中状態を作るためのソフト面も提供していく予定だ。集中というキーワードを通して個人がハイパフォーマンスを発揮できる働き方、新しいワークスタイルを提示したいと考えている。

社内ネットワークを信じるな!

 柔軟な働き方を実施するために欠かせないもの、それが「リモートワーク」である。社員がオフィスに出社せずとも、各自がパフォーマンスを最大限発揮しているのが、情報セキュリティサービスを提供するゲヒルンだ。

 同社社長の石森大貴氏は、さくらインターネットのCISO(最高情報セキュリティ責任者)や、セキュリティ・キャンプ実施協議会 顧問・企画実行委員を務めるなど、この分野のスペシャリストとして著名である。石森氏の講演では、リモートワークにおける危険性や、企業が取り組むべきセキュリティ対策などが語られた。

ゲヒルンの石森大貴社長 ゲヒルンの石森大貴社長

 リモートワークする際のネットワーク環境として、多くのビジネスパーソンは自宅の無線LANや公衆無線LANを活用するのが一般的だろう。しかし、これらのネットワークは「基本的に他人も勝手に使っていたり、知らない人同士が接続していたりするもの」と石森氏は説明する。

 ユーザーも当然そういう認識は持っている。総務省の調査によると公衆無線LANを脅威に感じる人は64.8%に上る。しかしその一方で、回答者の48.6%が脅威への具体的な対策をしていない現状があるという。実際、そうした無防備なユーザーを狙って通信内容を盗み見る盗聴などが頻繁に起きているのだ。

 では、安全なネットワーク環境というのはあるのか。社内ネットワークは堅ろうで安全だという認識を持っている人は少なくないだろうが、「それは神話にすぎない」と石森氏は言い切る。社内ネットワークも外部ネットワークと何ら変わりはなく、社内ネットワークという考え方こそが企業の情報セキュリティのぜい弱性の根源だという。仮に社内ネットワークにマルウェアが侵入すれば、すべての前提は破たんする。

 ほかにも企業にはこのようなセキュリティ上の誤解がはびこっている。「90日に1度パスワードを変更したり、メールの添付ファイルをZIPで暗号化したりするなど、手順や手間が増えれば安心だと思っていませんか? 決してそんなことはあり得ません」と石森氏は指摘する。

 そもそも「リスクマネジメント」や「リスクコミュニケーション」など、セキュリティに関するキーワードは「リスク」が主体となっていて、「セーフティ」ではないところからも、前提として常に危険性はあるのだということを理解しておかねばならない。

 そうした中、ゲヒルンでは、ほぼすべての社内システムはインターネットに公開されたサーバ上で稼働している。VPNや社内ネットワークという境界防御を行わずに、自社IDやGoogle IDを使用してアクセス権を管理している。「実は先進的な企業ほど今はそうした仕組みで運用しています」と石森氏。代表例として挙げたのが、グーグルの「BeyondCorp」だ。これは同社のコミュニティーなどに集まったベストプラクティスなどを加味して設計された企業セキュリティモデルで、アクセス制御地点をネットワークの境界から個々の端末やユーザーに移すことで、従来のように VPN を介さなくても従業員がどこからでもより安全に働けるようにした取り組みである。

 こうした取り組みを参考に、企業それぞれがリモートワークのセキュリティについて真剣に考えてもらいたい、リモートワークするには、まず社内ネットワークを見直そうと、石森氏は繰り返し強調した。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2017年12月19日