生産者と一緒に、食卓に「楽しさ」を届けたい――。その実現を目指して、全国各地の食材を取り扱うインターネット通販サイト「うまいもんドットコム」「築地市場ドットコム」などを運営する企業が、食文化だ。入手や大量生産が困難な食材などを商品化し、食に対して関心が高い消費者の支持を得ている。取締役の井上真一さんは、入社して13年目。全国の産地で眠っている青果や水産物などを掘り起こし、ヒット商品を生み出してきた。
同社が販売する商品には、「他にはない」コンセプトがあるものが多い。農産物は全国各地で生産されているのに、独自性のあるコンセプトを生み出せるのはなぜなのか。どのようにして食材を見つけ出しているのか。井上さんの経験と信念に迫った。
まず、「売れる商品」とはどのようなものだろうか。味がおいしいだけでヒットするわけではない。加工方法やパッケージ、ネーミング、情報発信方法、生産者の人となり……など、さまざまな要素が組み合わさって、ヒット商品は生まれている。
さまざまな食材をプロデュースしてきた井上さんは、食材と生産者に接するときに、「『いいな』『この部分はちょっと違うな』という感覚が芽生える」と話す。その“目利き”は、膨大な量の知識があるからこその感覚だ。多くの食材から良いものを選ぶ仕入れ業務や商品づくり、商品の見せ方を考えるプロモーションまで、「何でもやってきた」経験から身に付けた。
「仕入れの段階で、文章や写真で表現する方法まで考えていくと、成功しやすい。商品紹介の文章を作る工程を切り離して、外注しようとしたこともあったのですが、うまくいきませんでした」。現在、「築地市場ドットコム」の事業を統括する立場でもあるが、生産者の思いを理解し、的確に伝えるために、今でも現場の第一線に携わっている。
おいしい商品を提供するために大事にしているのは生産者との出会いだ。2017年11月から本格的に販売を始めた福島県産ネギ「とろねぎ」は、ある若い生産者との出会いがきっかけで生まれた。
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