Amazon「プライム・ビデオ」の統計が内部文書で判明プライム会員1人を63ドルで獲得

» 2018年03月16日 12時39分 公開
[ロイター]

[15日 ロイター] - 米アマゾン・ドット・コムの動画配信サービス「プライム・ビデオ」が2017年序盤までに世界で500万人余りを同社の「プライム」ショッピングクラブへ呼び込んだことが、ロイターが入手した同社の社内文書で明らかになった。同社のプライム・ビデオへの投資が経営にどのような効果をもたらしているかが初めて示された。

photo 3月15日、米アマゾン・ドット・コムの動画配信サービス「プライム・ビデオ」が2017年序盤までに世界で500万人余りを同社の「プライム」ショッピングクラブへ呼び込んだことが、ロイターが入手した同社の社内文書で明らかになった。写真はアマゾンのロゴ。インドのバンガロールで2015年8月撮影(2018年 ロイター/Abhishek N. Chinnappa)

内部文書によると、他社から使用許諾を取得した映画やテレビドラマを含むプライムの全ビデオプログラミングの米国内視聴者数は17年序盤時点で約2600万人だった。アマゾンはこれまでプライム・ビデオの視聴者数などの数字を公表していない。

内部文書は、アマゾンが独自に制作した「プライム・オリジナルズ」と呼ばれる19作品についてそれぞれ、コストや視聴者数、プライム会員として登録した人数などのデータを比較。これらのオリジナル作品は、2014年終盤から17年序盤にかけてプライム会員として登録したとアナリストが推計する総人数の4分の1程度を占めた。

動画ユーザーを買い物客に転換するのがアマゾンの戦略の中核だ。プライムに年会費を払って加入すれば、翌日配送やその他の特典が受けられる。

アマゾンは取材に対し、ロイターが入手した文書に関するコメントを拒否した。

ただ、ジェフ・ベソス最高経営責任者(CEO)はこれまで、娯楽コンテンツを利用して物品販売を促進する戦略について率直に語っている。同社は2010年にアマゾン・スタジオを設立して独自番組を制作しており、一部の作品は各賞を受賞するなどハリウッドでも話題となっている。

ベソス氏は16年の技術関連の会議で「ゴールデングローブ賞を受賞したら、靴がよく売れた」と語った。その上で、プライムで映画やテレビ番組を視聴する顧客は、視聴しない顧客と比べて無料体験から年会費を払って契約を締結する比率が高いことを明らかにした。

事情に詳しい関係者2人は、アマゾンでは動画支出が年間50億ドルと、最も大きな支出項目の1つになっていると述べた。アマゾンはその結果、何人の加入者が得られたかをこれまで公表していない。

内部文書では、人気ドラマ「高い城の男」の最初のシーズンは17年序盤時点で米国で800万人が視聴。制作費とマーケティング費用が合計7200万ドルで、世界で115万人の新規加入者を獲得したと説明されている。

これによると同社は、新たなプライム会員を平均で会員1人当たり63ドルで獲得した計算になる。これは米国内の会員が支払う年会費の99ドルをかなり下回る。ベソス氏によると、プライム会員は非会員と比べて、より多くの商品を購入するため利益をさらに押し上げるという。

アナリストの推計によると、世界のプライム会員は7500万人超で、このうち約半数を米国の世帯が占める。

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