コラム
» 2018年06月13日 08時00分 公開

生き残る道は?:加速する人口減少 地方鉄道の維持・再生の可能性を探る (1/3)

全国各地に存在する地方鉄道や第三セクター鉄道の多くは存亡の危機に直面している。地方鉄道の多くは、かつて大手民鉄の系列下でさまざまな支援を受けていたが、今日は独自で事業を維持していかねばならない状況だ。そうした中、特色を出し、生き残りを図る地方鉄道・第三セクター鉄道がある。

[高田伸朗,野村総合研究所]
株式会社野村総合研究所

 全国各地に存在する地方鉄道や第三セクター鉄道の多くは、沿線人口の減少に伴い通勤・通学輸送需要だけでは事業を維持していけず、存亡の危機に直面しています。沿線外からの観光客の輸送で生き残りを目指す事業者もありますが、全ての鉄道会社が観光鉄道を目指すわけにはいきません。

 また地方鉄道の多くは、かつては大手民鉄の系列下でさまざまな支援を受けていましたが、今日でその系列を離れ、独自で事業を維持していかねばならない状況に直面しています。

特色を出し、生き残りを図る地方鉄道・第三セクター鉄道

 このような中、沿線自治体や公営企業・第三セクター企業などが土地や施設などの資産を保有し、それを民間会社や第三セクターが借り受けるなどして運行・運営を行う上下分離方式を導入する事例が増えてきています。

 上下分離方式の多くは自治体等が税金を投入して鉄道の維持を図っていますが、鉄道の維持に強い関心を持つ鉄道ファンや市民が参画する事例も見られます。

いすみ鉄道

 千葉県の房総半島の中央部を走るいすみ鉄道(大原・上総中野間26.8キロ)は、旧国鉄木原線を国鉄分割民営化の際に第三セクター化した路線。第三セクターとして出発したものの、赤字経営が続いていたため、社長が一般公募され、2009年に就任した鳥塚社長のもと、事業再建が進められています。

 10年には、JR西日本で使用していた国鉄型ディーゼルカーのキハ52-125を購入し、11年4月から観光急行列車として運転を開始。「いすみ鉄道沿線の里山の中で昭和の国鉄時代のシーンを再現し、観光資源として地域の活性化に貢献し、また鉄道文化遺産として後世に伝えていきたい」という思いが込められています。

いすみ鉄道の観光急行列車(撮影:高田伸朗) いすみ鉄道の観光急行列車(撮影:高田伸朗)

 春には菜の花や桜が咲くのどかな里山風景を背景に走る旧国鉄車両は、いわゆる「乗り鉄」「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンを数多く集めることに成功しました。

 また、いすみ鉄道では、「昭和の国鉄形気動車オーナー・サポーター」制度を開始しています。これは、年間5000円、5万円、50万円を寄付することによりオーナー・サポーターとなり、それぞれ特典を受けることができる制度です。鉄道ファンをつなぎ留め、リピーターを増やす効果が見込まれます。

 しかし、いすみ鉄道の取り組みにもさまざまな課題が残ります。旧国鉄型気動車は老朽化が進んでおり、いつまで維持していけるかが予想できません。また沿線に集まる「撮り鉄」は、必ずしも同社の売り上げ収入につながらない。今後は、地元自治体等と連携し、地域活性化にどのようにつなげていくかも重要になってくると考えられます。

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