医療と食マーケティングと塩分濃度の関係(1/3 ページ)
2014年度、日本の医療費が40兆円を超えた。このままでは団塊の世代が後期高齢者となる2025年度以降に、国家財政が医療費で破たんしかねない。ここにビジネスチャンスがある。
著者プロフィール:竹林篤実(たけばやし・あつみ)
東大寺学園高校卒業、京都大学文学部卒業。印刷会社営業職、デザイン事務所ディレクター、広告代理店プランナーなどを経て、2004年にコミュニケーション研究所の代表。ブログ:「だから問題はコミュニケーションにあるんだよ」
人は歳を取るとともに、体のあちこちに衰えが出る。これを治すためには、適切な治療を受けることが必要だ。従って、高齢者が増えれば医療費も増える。極めて当たり前の現象である。
日本には、団塊の世代と呼ばれる、1947年から49年の間に生まれた合計約800万人の人がいる。この人たちが、後期高齢者つまり75歳となるのが2025年であり、何もしなければ医療費が急増するだろう。
日本医師会総合政策研究機構の推計によれば、2025年度の医療費は48兆円となる。これは現状の国家予算の約半分に相当する。このまま放置しておけば、国家財政が破たんするおそれがあるため、厚生労働省はさまざまな対策を講じている。その最も分かりやすい例が、ジェネリック医薬品の推奨だ。
厚生労働省は、2017年にはジェネリック医薬品のシェアを70%以上に、さらに2020年までには80%以上にする取り組みを始めている。そのため、ジェネリック医薬品業界には、奇跡的な追い風が吹いている。
健康インセンティブとペナルティ
医療費を抑制する方法は他にもある。最も分かりやすいのは、病気になる人を減らすことだ。メタボ健診が始められた目的は、30代後半ぐらいから健康に対する関心を高めることにあった。
ウエストサイズ85センチに根拠があるかどうかは議論の分かれるところだが、ともかく内臓に脂肪が貯まるタイプの肥満に、脂質異常、高血圧、高血糖などが重なると、生活習慣病の発症率が高まる。そこで、肥らないように意識付けるためのメタボ健診である。
組合健保を持つ大企業では、基本的に手厚い保障を行っているため、多数の組合員が病気になると保険制度の維持が危うくなる。これを防ぐためメタボ検診を受けることを義務化したり、受けない社員に対してペネルティを課すところも出てきた。
とはいえ、メタボ検診の受診率は2013年度で47.6%にとどまっている。これが意味するのは、健康に対する意識の低さである。少々太っていたとしても、40代ぐらいで特に何らかの症状が出ることはまれだ。完全に健康であるとはいえないまでも、明らかな不具合がない人に健康を意識させるのは難しい。
そこで個人に対してインセンティブを提供して、運動プログラムに参加させる自治体も出てきている。筑波大学・久野教授が中心となって千葉県浦安市などで進められている「Smart Wellness City」プロジェクトでは、参加した市民に対して年間2万4000円分の買い物ポイントを付与することで、運動を促そうとしている。運動による健康づくりに取り組めば、1人当たり9万円の医療費抑制効果があるとされるから、十分に元を取れるプロジェクトである。
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