あれ? なぜコインパーキングで「予約」ができないのか:水曜インタビュー劇場(駐車場公演)(4/7 ページ)
駐車場シェアリングが拡大している。利用者のメリットは、空き駐車場を予約できることだが、なぜ既存のコインパーキングでは予約することができないのか。駐車場シェアリング「akippa」を運営する金谷社長に話を聞いたところ……。
コインパーキング会社の悩ましい問題
金谷: いえ、そうではありません。利用者に「なぜ駐車場シェアリングを利用しているのですか?」と聞いたところ、トップは「料金」ではなく、「予約できるから」なんですよ。例えば、スタジアムの近くにある駐車場はコインパーキングよりも高いのですが、それでも利用される人が多い。
土肥: 既存のコインパーキングは予約ができない?
金谷: 基本的にできないですね。数年前、大手の会社が「予約ができる駐車場」を実験的に始めましたが、すぐに撤退されました。
土肥: でも、駐車場シェアリングを手掛けている会社が増えてきた。駐車場も増えている、利用者も増えている……となれば、大手のコインパーキング会社も「ウチも予約できる駐車場を始めようじゃないか」と考えても不思議ではありません。この事業に参入する企業がでてくるのではないでしょうか。
金谷: 参入する可能性はありますが、その一方で“悩ましい問題”があるのではないでしょうか。例えば、「予約ができる駐車場」を増やしていくと、従来の「予約ができない駐車場」の売り上げが低迷する可能性が出てくるんですよ。
土肥: どういう意味でしょうか?
金谷: 利用者は「新しい駐車場は予約ができるのに、既存の駐車場は予約できないじゃないか。なぜ予約できないんだ」と不満を感じてしまうかもしれません。
土肥: であれば、既存の予約できない駐車場を予約できるようにすればいいのでは?
金谷: それも難しいんですよ。なぜなら、既存のコインパーキング……特に大手は「看板マーケティング」だから。お客さんは駐車場の看板を見つけてそこに停めようとする。でも、満車だったら停めることができません。つまり、“駐車率100%はダメ”というビジネスモデルなんですよ。駐車率70%くらいで、利用者はいつ行っても停めることができる――。これがコインパーキング会社にとっての理想なんです。
土肥: あ、なるほど。いつも停めれる状態にしたいのに、予約制を導入すると停めることができない人が増えてしまう。
金谷: というわけで、既にある駐車場を予約できるようにするのは難しい。別会社にして「予約ができる駐車場」を始められるかもしれませんが、利用者の間で「予約ができる駐車場のほうが便利だなあ」という認知が広まれば、「予約ができない駐車場は不便だなあ」という口コミが広がるかもしれません。
土肥: 悩ましい問題を抱えながらも大手のコインパーキング会社は、いずれ「駐車場シェアリング」または「予約ができる駐車場」を手掛けるかもしれません。そのように考えると、あきっぱにとっては「時間との勝負」になりませんか? 大手が参入する前に、駐車場をどんどん増やさなければいけません。
金谷: そうなりますね。そのために資金調達をしました。数年後、この分野の勢力図は大きく変化しているのではないでしょうか。
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