リサイクルの「エンタメ化」がデロリアンを走らせた(1/8 ページ)
2015年10月、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で活躍したデロリアンが復活――。映画ファンのみならず、多くの人はこのニュースに驚いたのでは。ハリウッドとどんな交渉があったのか? 日本環境設計の岩元社長に話を聞いた。
アイディール・リーダーズの永井恒男Founderを聞き手に、一見非常識な、しかし実は優れた決断がビジネスを成功に導いているケースを学ぶシリーズ。第4回目はバック・トゥ・ザ・フューチャーで活躍したデロリアンをリサイクル燃料で走るクルマとしてよみがえらせ海外からも注目を集めた日本環境設計株式会社の岩元美智彦氏に話を聞く。輸送や保管だけでもかなりの費用が掛かった今回の取り組み、ハリウッドとのどんな交渉があったのか? 再生燃料の未来にどのように貢献するのか? 岩元氏の型破りだが実に筋の通った経営を紐解いていこう。
日本環境設計株式会社 代表取締役社長 岩元美智彦氏:
1964年鹿児島県生まれ。大学卒業後、繊維商社に就職。営業マンとして勤務していた1995年、容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年1月、現専務取締役の郄尾正樹とともに日本環境設計を設立。国内5人目となるアショカ・フェローに選出される。著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。
みんなで集めた古着があの日デロリアンを動かした
永井: 2015年10月21日に映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で主人公たちがタイムスリップした日時を迎えたその瞬間、バイオ燃料で動くデロリアンをお披露目し、大きな注目を集めましたね。
岩元: イベントには80社近くのメディアが来てくれたんです。ホント想像以上の反響があって、国内主要メディアはもちろん海外ニュースでも繰り返し紹介されました。
永井: 映画ではバナナの皮など身近にあるゴミでデロリアンは未来へと向かいましたが、岩元さんたちのデロリアンは、バイオ燃料で動きました。あのバイオ燃料は古着から作られたものだそうですね。
岩元: 我々はイオンなど全国のショッピングモールに、古着などバイオ燃料の元となる資源の回収拠点を設けさせてもらっています。モールではワークショップを開催したりもしているのですが、そこで呼びかけて集まった古着などからできたバイオ燃料でデロリアンは動きました。
当社では、3つの要点を押さえながら循環型社会を実現しようとしています。1つめは技術。古着に含まれる綿をまず糖に変換して、それを発酵させバイオ燃料のもとになるエタノールを量産する工場を擁しています。また現在、ポリエステルから再生ポリエステルにリサイクルさせる技術を導入したプラントも建設中です。
永井: この燃料、僕の好きなお酒の臭いがします(笑)。
岩元: お酒のようなものですが、飲んじゃダメですよ(笑)。アルコール度数99.6%で、自動車のガソリンに混合できる純度になっています。そしてエタノールは基礎原料ですから、プラスチックなどいろんなものに「化ける」ことができます。
また、我々は携帯電話のリサイクルも行っています。ご存じの通り、携帯電話には非常に貴重な鉱物資源が含まれています。その資源を含む基板と外側を囲むプラスチック部分を分離させる工場を稼働させています。特徴的なのが携帯電話を分解せず、装置に放り込むと成分レベルで分解する技術のため、人力による分別や分解作業分のコストカットにもつながる点が私たちの強みですね。携帯電話のリサイクルでは国内で約60%のシェアを持っています。
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