なぜ舛添都知事の説明は響かないのか(1/4 ページ)
毎週公費での湯河原別荘送迎などへの強い批判を受け、舛添都知事本人が釈明しました。しかしそれは効果があったでしょうか?
著者プロフィール:
増沢隆太(ますざわ・りゅうた)
RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。
大名旅行と呼ばれるファーストクラス、超一流ホテルスイートルーム、そして毎週公費での湯河原別荘送迎などへの強い批判を受け、舛添都知事本人が釈明しました。しかしそれは効果があったでしょうか? ロジック頼りの、「正しい情報提供」という典型的エリート・コミュニケーションの落とし穴が見て取れます。
謝罪とロジック
舛添氏の弁によれば、批判を受けているいずれの行動もすべて完全合法であり、都の規定も正規の承認の上で特例が認められているとのことで、少なくとも違法性や犯罪性は無さそうなことはわかります。ではこうした説明で一件落着でしょうか? 恐らく視聴者や都民で、納得した人は誰もいないことでしょう。
舛添氏の説明は正に「説明」であって、謝罪ではありません。法的に問題ない、コンプライアンスに反しない以上、何ら責めを負う必要が無いというロジックで貫かれています。そうです、舛添氏は正しいのです。
いきなりですが、これこそが今回の件のポイントだといえます。正しいことを言ったとしても批判が集まってしまうことが、コミュニケーションにおける一側面なのです。炎上を起こしてしまう有名人は皆このことを分かっていないとしか思えません。ロジックの正当性と謝罪は全くの別物です。
外国語に長けた舛添氏は、欧米的なロジカルシンキングで正しい情報を正面から説明したに過ぎません。しかしそれはコミュニケーションとはいえないのです。
関連記事
- 災害取材を行うマスコミが、現地で非常識な行動をとる理由
関西テレビ放送の中継車が、被災地のガソリンスタンドで給油待ちをしていた車列に割り込んだことが発覚した。過去にも被災地でマスコミの非常識な行動が問題になっているが、なぜ彼らは“迷惑”なことをしてしまうのか。筆者の窪田氏によると……。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.