なぜ鳥越俊太郎さんは文春・新潮を告訴するという選挙戦略をとったのか:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんが、都知事選で落選した。敗因については、既にあちこちで評論がされているが、ひとつ疑問が残る。なぜ女性問題を報じた「文春」や「新潮」を告訴したのかということだ。この問題について、筆者の窪田氏は……。
鳥越さんが「週刊誌告訴」に踏み切った理由
かつて今の鳥越さんのように「傷つけられたという女性の告発を事実無根だと主張してやりすごした政治家」がいた。
宇野宗佑首相である。
覚えている方も多いかもしれないが、神楽坂の芸者さんが宇野首相と月30万で男女関係をもっていたとことを、週刊誌に告発したのだ。
当初、この問題は新聞やテレビはこぞってスルーをした。政治家の番記者には、「カネ」を書いても、「下半身」は追及しないという不問律があったからだ。
いい悪いは別にしてそれが「常識」だったため、宇野首相も国会で野党から女性問題に質問をされても、「こうした報道には、公の場でお答えすることは差し控えたい」とやりすごし、街頭での演説中にヤジが飛んでも無視を決め込み、周囲にも「事実無根だ」と説明をしていた。
しかし、このネタは海外メディアが「日本の首相にセックススキャンダル」と大きく報じたことをきっかけに、女性人権団体などが問題視をして抗議、地方議会でも首相の説明を求める決議がなされるなど、逆輸入的炎上を果たし、宇野さんはついに首相退陣まで追い込まれてしまう。
この芸者さんの告発を掲載したのが『サンデー毎日』。当時の編集長は鳥越さんだった。
『夕刊フジ』などが指摘するように、今回の女性問題が「ブーメラン」になっているなどという言いたいわけではない。
鳥越さんが「週刊誌の告訴」という戦略に踏み切ったのは、このときの宇野首相の対応ミスを教訓とした可能性がないのか、と申し上げたいのだ。
自分が仕掛けた「告発」によってじわじわと追い詰められ、「説明責任を果たせ」の大合唱のなかでボコボコにされた宇野さんの姿は鳥越さんの脳裏にこびりついているはずだ。
関連記事
- 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.