なぜ鳥越俊太郎さんは文春・新潮を告訴するという選挙戦略をとったのか:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんが、都知事選で落選した。敗因については、既にあちこちで評論がされているが、ひとつ疑問が残る。なぜ女性問題を報じた「文春」や「新潮」を告訴したのかということだ。この問題について、筆者の窪田氏は……。
鳥越さんはジャーナリストらしいジャーナリスト
ああいう惨めなサンドバック状態だけは避けたい。そういう恐怖にとらわれれば、宇野さんのように無視を決め込んだり、「事実無根だ」という主張を繰り返したりするだけでは心もとない。そこで念には念をということで、「告訴」という策をとったのではないか。
そこにはジャーナリストだからできた「打算」もある。女性の夫である男性と3人で面談をしているということを鳥越さん自身もお認めになっているように、会見などで釈明をすればドツボにハマる恐れがある。
そこで「告訴」というアクションに出れば、「弁護士先生に任せています」というコメントで乗り切ることができる。おまけに、弘中淳一郎さんのような週刊誌キラーの弁護士が立てば、冤罪事件などの支援をしていた人の理解・支持も得られる。そう考えると、51年間のジャーナリスト経験から導き出された老獪(ろうかい)な広報戦略といえるかもしれない。
もちろん、選挙前の候補者としての立ち振る舞いとしてはまあ分からんでもないが、ジャーナリストとしてはどうなのさという意見もあるだろう。
確かに、それまでタブーだった政治家と芸者の関係を白日のもとにさらした際、鳥越さんはこんな男前なことをおっしゃっている。
『宇野さんの問題でいえば、現職の首相に愛人がいたという男女問題だけで報じるつもりはなかった。しかし、取材すると女性はコールガールのような扱いをされ傷ついていた。売春という犯罪行為と判断し報じたわけです』(2000年10月28日東京新聞)
「文春」「新潮」によれば、女性は今も心に傷が残っているというが、鳥越さんは「あっちの妄想です」と言わんばかりにだんまりを決め込んでいる。「愛人関係」を「売春」と断定するほど、被害者によりそうジャーナリストにしては、あまりにも二枚舌じゃないのという方もいるかもしれない。
ただ、かばうわけではないが、鳥越さんほどジャーナリストらしいジャーナリストはいないと思っている。
国際経済学者の浜矩子さんが2008年、新聞業界の集まりである「新聞大会」に招かれ、基調講演を行った。そこで、国際経験豊富な浜さんらしい興味深い指摘をしている。
『ジャーナリストとエコノミストには共通点がある。よきエコノミストが備える条件は、独善的で懐疑的で執念深いこと。ジャーナリストも同じ。謙虚で疑問を抱かず、あっさり敗北を認めるのは「いいジャーナリスト」ではないと考える』(2008年10月20日 新潟日報)
関連記事
- 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.