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トヨタが送り出したTNGA第2弾 C-HRの実力とは?池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

各国での念入りなお披露目を経て、今年末にようやく国内デビューすることになったトヨタの新型SUV「C-HR」。プリウスに続くTNGAを採用したクルマだが、その実力はいかに……?

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 トヨタ自動車の新型SUV「C-HR」は、2014年のパリショーにコンセプトカーとして出品されて以来、2015年のフランクフルトショー、同年の東京ショーと各国でのお披露目を重ねて、2016年末にようやく国内デビューすることになった。クルマとしてはプリウスのSUVと言うのが一番分かりやすいだろう。念入りなティーザーキャンペーンを見てもトヨタの力の入り具合がよく分かる。

2016年末に発売するトヨタの新型SUV「C-HR」
2016年末に発売するトヨタの新型SUV「C-HR」

変革のターニングポイントだったプリウス

 鳴り物入りで登場したTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)の第1弾、プリウスのローンチは大成功を収めた。先代プリウスの販売動向は特にモデル末期であった最終年、これまでのような一方的な強さを発揮できなくなっていた。同門のアクア、そしてホンダのフィット・ハイブリッドと激しく首位争いを繰り広げたが、その勝率はかつてのプリウス隆盛の時期から考えれば、だいぶ心許ないものであった。

 特にアクアは、先代プリウスよりさらにひと世代遅れのハイブリッドシステムを使っており、クルマの出来は散々なものであるにもかかわらず、販売的には数字を出し続けている。これに頻繁に負けたのでは、プリウス的にはハイブリッドのフラッグシップとして名が廃るというものだ。

 しかし、渾身のモデルチェンジでレベルを大幅に向上させたプリウスは、ふたを開けてみれば、車名別新車販売台数では2016年1月〜10月まで一度も首位を明け渡していない。この分だと恐らく通年で全勝するだろう。

 ちなみにピークは3月の3万1434台。異常な数字である。普通ならば2万台売っていればほぼ間違いなく新車販売のトップを獲れる。3万台超えしているのだから恐ろしい。ちなみにこのランキングで、ベスト10に入るには概ね5000台。ベスト30で2000台。もちろん売れる月と売れない月があるから一概には言えないのだが、販売台数を評価する際のざっくりした指標として覚えておくと良い。

 さて、プリウスは数字で見る限り成功した。その理由は先代に比べて大幅に進歩したシャシーとパワートレインの能力にある。ただし、それは今までのトヨタハイブリッドのレベルがお粗末だったからで、現行プリウスが素晴らしい名車というわけではない。ようやく普通のガソリン車のレベルに大きく引けを取らなくなったというのが正直な評価である。仮にまったく引けを取らなければ、ユーザーは燃費の差を丸々利得として得られることになる。筆者の運転ケースで言えば、ハイブリッドはガソリンの低燃費車に比べて25%くらい良かった。ただし、最近のクルマは総じて燃費が良いので、仮にリッターあたり15キロと20キロでも、単月1000キロ走って年間で2万4000円の差額にしかならない。冷静に計算するとユーザーの夢が膨らむほどには差額は大きくないが、5年後の下取り価格はその夢の分値段が上乗せされるのもまた事実だ。

 損得の話は別として、クルマそのものの出来で見たときには、これまで「ハイブリッドだから」という理由でもらっていたハンデが概ねいらなくなっただけにすぎず、目標はまだまだ先にある。本来なら「なるほどハイブリッドは素晴らしい」にしなくてはならない。だから、TNGAはまだまだ磨いていかなくてはならない。豊田章男社長が「もっといいクルマ」と言い続けているスローガンをウソにするわけにはいかないのだ。

 年明け以降のプリウスの売れ行きを見れば、もっと販売量を増やそうというのは無理だ。飽和点に近い台数を既にさばいている。これ以上増やすと巷にプリウスがあふれすぎて陳腐化が避けられない。それは製品寿命を短くすることにつながる。それを避けるには同じコンポーネンツを使った別種のクルマを作って、異なる顧客層にアピールしなくてはならない。となれば、当然狙うのは世界中で売れまくっているコンパクトSUVというのは順当な判断だ。

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