謎に包まれたトヨタの改革:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
昨年末に発売となった4代目プリウスは、トヨタの新たなクルマ作り改革であるTNGA(Toyota New Global Architecture)のデビュー商品となった。これは単にクルマ作りの手法が変わっただけでなく、トヨタの組織そのものにも変革を起こした。なぜそうしたことが実現できたのだろうか?
既にご存じのように、トヨタは新たなクルマ作り改革としてTNGA(Toyota New Global Architecture)を打ち出し、その第一弾として4代目プリウスが登場した。この新生プリウスを機に、確かにトヨタのクルマ作りが大きく変わっていきそうだということは、実際に試乗してみて明らかになった(関連記事)。
今回はその変化の本質と、トヨタがその改革をどのように成し遂げていったのかについて考えてみたい。
運転し易いクルマは限られている
この連載で既に再三触れてきたように、TNGAとはトヨタが「良いクルマ」とは何かについて全社的リファレンス(基準)を決めたことと、そのリファレンスに沿ったクルマを効率良く作っていくための体制作りにある。それはさまざまな角度から定義されるものである。ちょっと列挙してみる。
- ドライバーとクルマのインタフェースの見直し
- 低重心化
- 重量物の集中化
- 部分最適化から全体最適化へのシフト
- 運転のしやすさと満足感への配慮
TNGAでは、さまざまなクルマの設計要件の中で、特定の要素の重要度をそのほかの要素より高い優先順位に置くことになった。上に挙げた5つのポイントは、一見いろいろなことを言っているように見えるが、実は全ての要素は1つの目的に収斂(しゅうれん)している。それはトヨタ自身が広告で使った言葉「運転うまくなったね」と言われるようなクルマへの変化ということになると思う。言い換えれば「運転のし易いクルマ」ということだ。
工業製品としてのクルマは運転し易く作られて当たり前だと思われているが、その当たり前がちゃんとできているクルマは決して多くない。そういう限られたクルマの仲間入りを目指すというトヨタの決意表明である。
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