大和証券に学ぶ、タレマネ最前線:全社員参加型(前編)(1/5 ページ)
従業員の能力を生かすシステム「タレントマネジメント」を導入する企業が増えてきた。日本企業をみると「全社員型」を試みているところが多いが、具体的にどのようなことを行っているのか。大和証券グループ本社の事例をみると……。
全社員型タレントマネジメントの時代へ
読者の皆さんは、「タレントマネジメント」という言葉を聞いて何をイメージされるだろうか。
タレントマネジメントという言葉は、もともと1997年、マッキンゼーによる「War for Talent」の出版以降、主に実務家の世界で広く一般化してきた言葉だが、今日に至るまで学問的には確立した定義はなく、世界各地で幅広い捉え方がなされてきた。
実務家間における最近までの共通の理解としては、「欧米企業に端を発した、育成・活用・リテンション(離職防止)を通じて、『優秀な人材』に自社の発展・成長に継続的に貢献してもらうための企業からの働きかけ」ということになるだろう。より具体的には、「リーダーとしてポテンシャルのある人材を特定し、ストレッチアサインメントや育成投資の優先配分により、チャンスと成長の機会を提供して、高いエンゲージメントを実現しながら彼らの最大限の貢献を引き出す」というものだ。
しかし、ここ数年、日本企業において、そうしたタレントマネジメントのスタイルに変化が見られている。それは、一部の優秀者層を対象にした「リーダー型タレントマネジメント」から、社員全員を対象にした「全社員型タレントマネジメント」へのシフトである。
その背景には、まず人手不足の深刻化や就業価値観の多様化(転職の一般化など)といった働き手の変化が挙げられる。日本の生産年齢人口に当たる15〜64歳の人口は、4年前の2012年から約420万人減少し、10年後の2026年には現在からさらに約560万人が減少する見込みとなっている。また、個人の働き方も変化している。1社で勤め上げることが普通と考えられていた時代から、自分の働きがいやライフスタイルに合わせて転職することが当たり前の時代になってきた。こうした個人側の変化によって、今まで以上に人材の採用が難しくなる中、「今いる社員全員の戦力化と活用」が求められている。
さらに、ビジネス環境の変化も大きく影響している。現場で働く社員一人ひとりの創造性や提供するサービス価値が企業の競争優位を左右する重要な鍵になるという認識が経営や人事の間に広まってきた。過去の成功を支えた知識やスキルを基準にした評価のモノサシでは特定し得ない「イノベーション人材」の育成・確保が、より重要性を増してきている。
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