「“働かせない”改革が必要」 休息時間をどう確保する?
情報産業労働組合連合会(情報労連)は、勤務開始時間までに一定の休息時間を確保する「勤務時間インターバル制度」の必要性や導入状況について説明した。
従業員の休息時間をいかに確保するか――。情報産業労働組合連合会(情報労連)は11月16日、勤務開始時間までに一定の休息時間を確保する「勤務時間インターバル制度」の必要性や導入状況について説明した。
同制度は、24時間につき、最低でも連続11時間の休息を設ける制度。例えば、前日の勤務終了時間が午後11時だった場合、翌日の勤務開始時間は午前10時以降でなければならない。この制度は欧州連合(EU)諸国で義務付けられている(EU条約第137号)。
一方、日本では「1週間につき40時間、1日につき8時間を超えて労働させてはならない」と法律で定めているものの、労働基準法(労基法)に基づく「三六協定」で労使合意による届け出があれば、これを超えて労働させることができるのが現状だ。「事実上、国は長時間労働を野放しにしている」(情報労連)として、労基法に対する批判も少なくない。
厚生労働省の調査によれば、残業時間に比例して睡眠時間が短くなり、それが健康上のさまざまなリスクを引き起こすことにつながっているという。
こうした背景から、情報労連は勤務時間インターバル制度の導入を促進する取り組みを2009年から開始。ガイドラインを策定するなど、取り組みを強化していった結果、現在17社が導入し、25社が導入に向けた協議を継続している。
2012年から同制度を導入したKDDIは、その効果について「確実に休息時間を確保できるようになったほか、生産性を意識した働き方への意識改革につながった」「職場全体で“しっかり休もう”という意識が高まった」――などとコメントしている。
ゲストとして登壇した労働問題の専門家、常見陽平さんは「全員がバリバリ働けるわけではない。長時間働くから偉いのではなく、『必ずしっかり休む』ことが絶対に必要だという意識の変化が社会全体に求められている」と話した。
「働き方改革が働かせ方改革になってはいけない。“いかに働かせないか”という視点で、仕事の絶対量を見える化したり、減らしてく改革が必要だ」(常見さん)
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