反対運動の日当は、なぜ「2万円」だったのか:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
TOKYO MXの『ニュース女子』が沖縄・高江のヘリパッド移設問題を取り上げ、「反対派は弁当付きで、日当が支払われている」と報じた。日当は「2万円」というが、本当にそれほどの金額が支払われていたのだろうか。筆者の窪田氏が注目したことは……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
少し前、TOKYO MXの『ニュース女子』という番組が沖縄・高江のヘリパッド移設問題を取り上げ、「反対派は弁当付きで、日当が支払われている」と報じたことが「デマ」ではないかと大きな話題になった。
番組が「日当」の根拠としたのは、NPO法人が高江の情報をSNSで発信する「特派員」を募集したビラと、誰が使用したか分からぬ茶封筒のみだったことを受け、反対派のみなさんが「運動を排除するための悪質なデマ」だと怒りの声をあげたのだ。一方、ネットでは「図星だから怒っているのでは」といまだ番組を擁護(ようご)する声もあり、今も一部の方たちの間で激しい論争が続いている。
この手の話は数年前からネット上ではまことしやかに囁(ささや)かれている。いい機会なのでどこかのメディアが徹底的に調べあげて、白黒つけていただきたいと心から願う一方で、個人的にはそれとは別に気になっていることがある。
それは反対派の方たちに支払われているという日当が「2万円」とされている点だ。建設現場で未経験者が日雇いで働いても日当1万円がいいとこだ。なぜ座り込みや集会参加だけで2万円という高額な報酬がもらえるのか、ということがどうにも引っかかってしまう。
そんなちっちぇえ話はどうでもいいだろ、なんて声が聞こえてきそうだが、もし今回の話が反対派のみなさんが主張をするような「デマ」だとするのなら、「2万円」はその「犯人」を突き止めるうえで重要なポイントになるのだ。
火のないところに煙はたたぬと言うくらい、デマを流す者は、受け取った人たちが「この話はホントっぽいな」と思うような説得力をもたせるため、なにかしらの「事実」をベースにしてデマをつくりだす。今回もデマだというのなら、「2万円」は犯人像を読み解く重要な痕跡なのだ。
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