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歴代ロードスターに乗って考える30年の変化:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
3月上旬のある日、マツダの初代ロードスターの開発に携わった旧知の人と再会した際、彼は厳しい表情で、最新世代のNDロードスターを指して「あれはダメだ」とハッキリ言った。果たしてそうなのだろうか……?
最新型、NDロードスターには最後に乗った。NC型から乗り換えると、上着を脱いだように軽快だ。確かに接地感や盤石感はNC型に一歩譲る。だがNB、NCと失って来た軽快感がそこには確かにあった。
マツダにはロードスターのための「ライトウェイトスポーツのパッケージ哲学」がある。
- フロントミッドシップのFR方式
- 軽量コンパクトなオープンボディ
- 50:50の前後重量配分
- 低ヨーイナーシャモーメント
- アフォーダブル(手ごろな価格)
これは歴代すべてのモデルが守った掟(おきて)である。筆者は最初にこの5カ条を見たときに、無駄のないライトウエイトスポーツの定義に深く感銘を受けたが、今、振り返ると1つ足りない。それは「いかなる速度でも楽しいこと」だろう。
NA型からNB型はまさに正常進化であり、NC型ではそれをさらにブラッシュアップしている。では、そのままさらに性能向上を目指したとしたら、それはライトウェイトスポーツと呼べるものになっただろうか? 歴代ロードスターは丹念に性能の向上を図ってきた。数値化できる目標において、新しいモデルは常に前のモデルより優れていたが、最後の最後、「運転する楽しさ」という点については初代を凌駕(りょうが)することができなかった。マツダのエンジニアたちにとって、それがはっきりしたのは開発前の試乗会のことだった。
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