トランプの暴言を止めることができない、お手上げの理由:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
トランプ大統領のトンデモ発言が続いている。身内の共和党内部からも批判が噴出しているのに、なぜ大統領は暴言を繰り返すのか。ひょっとしたら、暴言を吐き続けることができる理由があるのかもしれない。
暴言を吐き続けることができる理由
トランプが発するような暴言は、日本はもちろんのこと、米国以外なら一発アウトだろう。ただトランプが職を追われることなく次々暴言を吐き続けられるのにはワケがある。
現状のように、大統領制の米国で、議会を大統領の政党が支配している場合、大統領は簡単に辞職(弾劾からの罷免)に追い込まれることはない。また米大統領は、誹謗中傷であっても発言によって名誉毀損のような訴訟を受けることが基本的にない(1982年の最高裁判決で大統領は職務にあればすべての民事訴訟から免責されるという判例がある)。それを分かっているトランプは発言を緩める必要がそもそもないのである。残念ながら、言われたほうも、メディアで反論するくらいしかなす術はない。
しかもトランプは、こうした暴言ツイートを意図的に行なっており、巧みに利用しているとも指摘されている。彼の最近のトンデモ発言は、基本的にターゲットが米国内のメディアに絡んだ人や組織が多い。CNNを攻撃したプロレス動画もその一例だし、女性批判も基本的にメディアに関係する人たちだ。その理由は、メディア叩きこそ、トランプが支持者のサポートを確保し続ける手段のひとつになっているからだ。
トランプは大好きなテレビ局であるFOXニュースなどを除いて、基本的に大手メディアを「フェイクニュース」と呼び続け、とにかくメディアを目の敵にしている。例えばこれまでの政権でずっと行われてきたホワイトハウスの定例記者会見もどんどん減らしており、最終的には文書のみの発表に切り替えていきたいと考えている。事実、バラク・オバマ前政権時は毎日のように行われ、ネット上でもアーカイブされて視聴できた定例記者会見だったが、トランプ政権では、例えば6月はテレビカメラによる撮影を許した記者会見はたったの5回しか実施されておらず、そのほかカメラなしの記者会見でも10回しかなかった。
逆に、一方通行のTwitterなら自分で内容も発表のタイミングもすべて支配でき、記者から直接質問を受ける必要もない。そんなことから、トランプはさまざまな意見(と嘘や暴言)をTwitter上で発表し、国民の「知る権利」に寄与しているつもりでいる。そしてメディアは嘘ばかりを報じるとしつこく繰り返して、対立構図を作り出しているのだ。これまでホワイトハウスの報道官たちはトランプの事実と反する無責任なツイートの釈明を強いられてきたが、トランプが自ら発言について説明することはあまりない。
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