なぜマスゴミの「ブーメラン報道」が目立ってきているのか:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
マスコミの「ブーメラン報道」が目立ってきている。最低賃金の問題について、中日新聞は政府が掲げる「時給1000円」を目指すべきと主張したものの、自社のデスク補助業務の学生アルバイトを「時給910円」で募集していることが判明。なぜこのような報道が起きるかというと……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
森友、加計学園問題の報道論調があまりにも偏っているということで「マスゴミ」に対する風当たりが強くなっているが、先週そのムードにさらに拍車をかけるような「ブーメラン騒動」が起きた。
きっかけは、今年度の最低賃金の引き上げ幅が25円なり、昨年比3%アップ、時給で決める方式となった2002年以降最大となったことを受けて、8月17日に『中日新聞』(Web版)に掲載された「最低賃金改定 生活できる額へ速く」という社説である。
このなかで中日新聞は、これっぽっちでは非正規労働で生活するにはとても十分ではないと苦言を呈し、安倍政権が掲げる「時給1000円を目指す」という目標を引き合いに出して、「一日も速く目標額に到達すべきだ」と主張したのだが、ほどなく中日新聞がデスク補助業務の学生アルバイトを「時給910円」で募集していたことが判明して、「ブーメランすぎて笑った」「さすがマスゴミ、自分に甘すぎる」とちょっとした「祭り」となった。
ヒトラー安倍の暴走を監視してくれている立派なジャーナリストに対して揚げ足取りのようなヘイトスピーチをやめろ、と不快に感じる方もいらっしゃるかもしれないが、実はここ最近のマスコミには、ツッコミを入れざるを得ないほど見事なブーメランを炸裂させるケースが多くなっているのだ。
例えば、2016年秋に大きな話題となった大手広告代理店の電通で、女性社員が「過労自殺」をした事件を扱った『朝日新聞』が分かりやすい。
2016年10月12日、朝日は社説で、「形式的で不十分な労働時間の把握、残業は当然という職場の空気。企業体質の抜本的な改善が必要だろう」とごもっともな主張をしていた。が、なんとその1カ月後に、朝日新聞東京本社が社員に長時間労働をさせていたとして中央労働基準監督署(労基署)から是正勧告を受けたのだ。
美しい放物線を描く特大ブーメランもさることながら、朝日が批判されたのは、この是正勧告をマスコミ各社が相次いで報じるなかで、当事者として誰よりも状況を知っておきながら、しれっとスルーしたことが大きい。
各社が報道した翌日、「労基署、本社に是正勧告」という記事を掲載したものの、見落としてしまいそうな240文字のベタ記事扱い。しかも「特オチ」した言い訳は、「社内で協議していたから」というもので、企業や政治家、役所に対していつも「説明責任」とか「迅速な情報公開」とご高説を垂れている者とは思えぬお粗末な対応に、「他人に厳しく自分には甘い」という厳しい声が寄せられたのである。
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