地方が稼ぐために、何を強みにすればいいのか?:一橋大学大学院の名和教授が説く
地方創生フォーラム「まちてん2017」が開催。その特別セッションで一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の名和高司教授が「地方が稼ぐ力」について考えを語った。
「なぜ地方に稼ぐ力が必要なのか。それは再投資して良い循環を生み出すため。では、その循環を作るにはどうすればいいか。自分だけ良ければいいという考えは捨て、仲間を増やすなど外の力を使って回転をどんどん速く、大きくしていくことが求められる」
こう語るのは、一橋大学大学院 国際企業戦略研究科の名和高司教授だ。12月8日に東京・渋谷で開催された地方創生フォーラム「まちてん2017」でパネルディスカッションに登壇し、伊藤園の笹谷秀光常務執行役員 CSR推進部長とともに、これからの日本の地方のあり方を議論した。
名和氏は、多くの地方に足りないのは「発信力」だとする。ただし、やみくもに何でも情報発信すればいいというわけではない。この点について笹谷氏は「人々に共感を得られるまで説明することが大切」だと話す。
例えば、地方の名産品などは「いいね」と言われることは多いだろうが、ほとんどはそれでコミュニケーションが終わってしまう。そこから相手に「なるほど」と思わせる説明があれば、その後も継続的に興味を持ってもらえるような関係性が築けるという。「いいね、なるほど、またね。この繰り返しによって共感を得られるようになるのだ」と笹谷氏は強調する。
では、地方が人々を引き付けるための強みとは何だろうか。
名和氏は「アナログ」だと断言する。日常生活の中にデジタルが普及することによって、人々はよりリアルな実体験、アナログ的な価値などを求める傾向が見られる。現に、以前は科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)の頭文字を取った「STEM」人材が米シリコンバレーなどで求められていたが、グーグルやアマゾンでは今、理系ではなく文系、例えば文化人類学を専攻する人材などを積極的に採用しているのだという。
「都会の最先端の流れに沿うのではなく、時代の逆を行き、アナログな部分を訴えることで差別化を図れる。それこそ地方にはたくさん存在しているのだから」(名和氏)
加えて、画一化したものを大量生産、大量消費するというやり方はもう古く、規格化されていない、個性的なものに人々が価値を感じる時代になりつつある中、地方企業や中小企業にこそチャンスがあるという。「その価値を突きつめるのが結果的に勝ちパターンになるはず」と名和氏は意気込んだ。
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