「地方は不利」――そんな常識を覆す手段はあるのだ:地域活性化伝道師が語る(3/4 ページ)
2017年は地方創生政策がスタートして3年が経過。計画ではなく実績が問われるようになりました。従来のように人口だけでどうにか地方を保持しようとするのではなく、新たな地方の持続可能な仕組みを考えるというテーマに地方創生はシフトしていくはずです。そうした中で地方は何をすべきでしょうか。
「技術革新」を地方自立に向けた挑戦につなげよ
そもそも都市は技術革新によって成立、発展してきました。
産業革命による動力革命で鉄道が開発され、物資の大量・定期輸送、そしてさまざまな企業による製品の大量生産が可能となり、近現代の大都市が成立していきます。人々が高密度に生活しても、衛生的な生活ができるのは、上下水道など含めたさまざまな技術革新があったからです。人口が急激に増加、密集するという社会問題も解決したのは技術なのです。
人口集積がある大都市と、そうでない中小規模の都市との間では、本来であれば技術的に解決を図るべきテーマが別です。しかし、戦後は大都市も小都市も戦後復興、地方都市活性化に向けた政策によって、基本的に技術は同じものを採用しながら、「予算」支援、つまりお金の力によって無理やり成立させてきました。
例えば、都市は人口集積によって、「単位あたりコスト」を引き下げる効果があります。上下水道なども同じ中央処理型のシステムであれば、密度の高い都市部のほうが、人口密度の低い地方部より一人当たりの負担は少なくて済む。密度の高い地域でやっている技術をそのまま、密度の低い地域に持って行ってしまっては、本質的には地域の負担に対して割に合わないことが多数あります。
今後、地方に必要なのは、人口規模と人口密度で効率が左右されない方法を新技術で達成できるかどうかが1つの命題です。人口減少しながらも生産力を維持して稼ぐことができたり、密度が低くとも公的負担が低くとも衛生的で現代的な生活が可能になれば、地方は新たな活性化のシナリオを組み立てられます。
例えば、人口減少で労働力不足の地域こそ、生産性を高め、付加価値を向上する新たな技術が積極的に採用されれば、労働力に依存しない産業モデルを樹立できるようになります。自動化技術はその大きな柱となるものですが、日本はまだまだ地方での活用が遅れているものの、通信大手のソフトバンクやNTTドコモなどが地方バス路線を活用した実証実験を始めるなど、今後に期待が集まります。
また、従来は非効率なものとして成長を諦めてきた地方に集積する農林水産業分野においても、農業での生産管理、林業では自伐林業などの新業態に適した伐採機材の開発、水産業でも科学的な水産資源管理や魚価を高める地方空港からの飛行機輸送などを活用した取引、物流革新などによって、地方経済の成長力を引き出すことができます。例えば、羽田市場は地方空港を活用した航空路線を活用して朝獲れた海産物を夕方には都内などに流通させて魚価を上げ、地方産業の付加価値向上につなげています。
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