「一蘭」にハマった外国人観光客は、なぜオーダー用紙を持って帰るのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
ラーメン店「一蘭」といえば、食事をするスペースが仕切られている味集中カウンターが有名である。珍しい光景なので、外国人観光客も写真を撮影しているのでは? と思っていたら、店員さんに「オーダー用紙を持ち帰りたい」という声が多いとか。なぜ、そんな行動をしているのかというと……。
外国人観光客が感じた「何か」
そう聞くと、「じゃあ人気スポットを訪れた記念としてオーダー用紙を持って帰ってるんじゃない?」と思う人もいるかもしれない。もちろん、そこも大きいかもしれないが、記念ならばスマホで写真を撮ればいいだけの話である。そうではなく、わざわざオーダー用紙に手が伸びるということは、ここに外国人観光客が感じた「何か」が凝縮されているからではないだろうか。
それは、「唯一無二の食事体験ができた達成感」である。
トリップアドバイザーなどのクチコミサイトで一蘭を訪れた外国人たちの書き込みを見ると、味についての評価もさることながら、「驚き」や「感動」の声が非常に多い。そして、ここに至るまでの心の動きには共通の法則がある。
実際のコメントを引用させていただくと、まずは「機械的とも言うべき効率化されたシステム」や「非社交的なブース」という他店にはない独特なシステムに驚き、戸惑う。そして、実際に食してみたところ、自分が想像していた味をはるかに上回っていた、といういい意味で予想を裏切られる人が多いのだ。
つまり、他店にはない独特の体験を「入口」として、そのインパクトに負けない味のラーメンを「出口」で提供することで、単なる「おいしいラーメンの店」よりもさらに一段階上の満足感を与え、好意的なクチコミを量産することに成功しているのだ。
そんな理屈っぽい話じゃなく、たまたま外国人に物珍しさがウケてるだけだよ、と思う方も多いかもしれないが、これらのシステムの生みの親の言葉を耳にすれば、クチコミ量産が「たまたま」でないことがよく分かる。株式会社一蘭の吉冨学代表取締役社長だ。
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