16歳のアイドルを自殺に追い込む、「夢を食うおじさん」の罪:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
16歳の農業アイドルが自殺した。所属事務所のブラックぶりが明らかになりつつあるが、筆者の窪田氏は「事務所に注目が集まってしまうと、少女を死に追いやった『真犯人』を逃がしてしまうかもしれない」と危惧する。どういう意味かというと……。
我々は多額の先行投資をしている
一体なんのことやらという人のために分かりやすく説明しよう。
亡くなった少女は辞めたいと訴えたが、日本中には信じられないようなブラックな労働環境でアイドル活動を強いられている女性がゴマンといる。では、なぜ彼女たちは事務所側に文句を言わずに搾取されているのかというと、こんな罪悪感というか、事務所に対して負い目を持っているからだ。
「給料が安いとか休みがないのは、売れてない私が悪い。いつも応援してくれている社長やスタッフの皆さんのためにも弱音など吐かず、もっとがんばらないと」
アイドルは事務所に所属すると、ダンスや歌のレッスンを受ける。また、グループになれば楽曲のプロデュースもされるし、営業の代行も行ってくれる。そんな頭の上がらない存在であることに加えて、彼女たちに強烈な負い目を植え付けるのは、何かとつけて事務所から言われるこんな言葉だ。
「あなたたちのために我々は多額な先行投資をしている」
確かに、レッスンもプロデュースもタダではない。営業の人間を動かすのにも人件費がかかる。それらの費用をすべてアイドル本人への「貸付」のような扱いにすることで、彼女たちに強烈な罪悪感を植え付けているのだ。
筆者もこれまで取材などで、アイドルやタレントを目指す女性に何人かお会いしてきたが、レッスン料や営業代行などで事務所に借金をしていた方が圧倒的に多かった。中には、あまりの辛さにもう辞めたいと言うと、「これまでお前にいくら注ぎ込んだと思っているんだ」と逆ギレされた方もいた。損失を補てんせよとキャバクラでのバイトを斡せんされた方もいた。
つまり、罪悪感マネジメントというのは、事務所側が先行投資や経済的損失をちらつかせることで、少女たちに事務所に対して大きな負い目を持たせ、意のままに操るマネジメント法なのだ。
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