「佃製作所はやっぱりブラック企業」と感じてしまう、3つの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
ドラマ「下町ロケット」の特別編が放映され、14.0%という高視聴率を叩き出した。多くの人がこのドラマを見て胸が熱くなったかもしれないが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。ドラマの内容を考えると、「日本の未来に不安を感じる」という。どういう意味かというと……。
職場に「同調圧力」がまん延
(2)の「長時間労働を強いる職場の同調圧力」については、最も象徴的なシーンが昨年のドラマ放映時にあった。それは、定時で帰る社員に他の社員たちが文句を言う、というくだりである。
ネタバレになるのであまり詳しく述べないが、この定時で帰る社員は、家庭の事情で早く帰らざるを得なかったのである。また、自分に任されていた仕事に関しても決して手を抜くようなことはしていなかった。
が、人をイラっとさせるような特異なキャラクターと、「定時に帰る」という事実だけで、周囲から腫れ物のように扱われていたのだ。このことからも佃製作所の職場には、「人と異なる働き方は認めない」「みんなが残業しているのに帰るのは許せない」という「同調圧力」がまん延していることがうかがえよう。
もちろん、これはあくまでドラマの話だが、もし現実にこのような職場ならブラック企業のそしりを受けるのは言うまでもない。
士気を下げる。チームの輪を乱す。自分勝手な行動で周囲に迷惑がかかる。このような言いがかりで上司から理不尽なパワハラを受けたり、社内で孤立したり、という「ムラ社会ならではの集団リンチ」というのは、ブラック企業にかかわらず、日本の労働現場でたびたび問題とされる「悪しき慣習」だからだ。
ただ、佃製作所が、日本の「悪しき労働文化」を肯定していると筆者が感じる最大の理由は、(3)の「とにかく気合いで乗り切る精神至上主義」という点にある。
ドラマをご覧になっている方ならばよく分かると思うが、佃航平社長はとにかくアツい。朝礼で社員に語りかける時も熱意むき出しで、自分の思いを伝えるため土下座までしてしまうほどだ。
関連記事
- 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。 - 「外国人は来るな!」と叫ぶ人たちが、移民政策に沈黙しているワケ
いよいよ日本が、世界有数の「移民大国」へと生まれ変わる。普段、「外国人は来るな」と叫ぶ人たちは、なぜこの法案に沈黙しているのか。その背景には、「恐怖」が関係していて……。 - 日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
暑くなってきたので「満員電車」が辛くなってきた。「働き方改革を実現しよー」「時差出勤をしよー」と叫ばれているのに、なぜ“通勤地獄”は解消されないのか。その歴史をひも解いてみると、意外な事実が……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.