エンタープライズ:インタビュー 2003/08/16 12:18:00 更新


Interview:製品単体に価値なし! 企業にソリューションを訴求する新生マイクロソフト (2/2)

ZDNet エンタープライズソフトウェアソリューションカンパニーへ移行するという構想はいつごろから始まったのですか?

平井 2000年1月にスティーブ・バルマーがCEOに就任し、その約半年後に米国本社では業種別の営業部隊が発足しています。

ZDNet バルマー氏とは既に会っていると思います。本題からは離れますが、どういう印象を持ちましたか。

平井 4月に入社して約1カ月間、レドモンドでトレーニングを受けたのですが、そのあいだにバルマーともミーティングを持ちました。彼はとても情熱があり、周囲を勇気づけてくれる人だと感じました。

 また、話の中で、彼がそれまでに会った日本企業のCEOや役員の名前が次から次へと出てくるのです。その記憶力にも驚きましたし、それだけ現場主義なのだろうと感じました。彼に会った顧客の多くは、「また会いたい」と思っていただけるそうですが、その理由がよく分かりました。

ZDNet 日本法人で業種別の営業部隊がつくられたのはいつからですか。

平井 昨年度からです。今年度は、それを強化し、定着させる大切な時期であり、それが私の仕事だと考えています。

ZDNet 平井さんは「次期社長候補」と憶測報道されたこともありました。阿多前社長の突然の退任もその憶測に拍車をかけています。しかし、そうした一種の騒動は、顧客の信頼を勝ち取りたい企業としてはマイナスになりませんか?

平井 私はエンタープライズビジネスをやるためにマイクロソフトに入社しました。それ以外のことは考えていません。

 7月1日の新会計年度から社長を務めるマイケル・ローディングは、ビジネスプロセスを改善し、製品やサービスの質を高め、人材も強化し、顧客から信頼を得られるパートナーにマイクロソフトを変えようとしています。

顧客が求めているのはソリューション

ZDNet そのためにはエコシステムが重要ですか? ローディング新社長は、機会を捉えてはそれを強調しています。

平井 はい、そうです。デスクトップソフトウェアは単体でマーケティングできました。新しいリリースやロードマップが、それだけで売りになるのです。

 しかし、ほとんどの企業は、ソフトウェアを単体では購入していません。経営上の課題を解決してくれるソリューションを求めていて、そのために必要なITインフラとしてサーバやソフトウェアを決めていきます。経営から見れば、ソフトウェア単体では何ら価値がないと言ってもいいでしょう。われわれのソリューションは、パートナーらのサーバ、アプリケーション、あるいはシステム構築力と合わせ、トータルソリューションになって初めて価値を生むのです。

ZDNet 秋には新しいOffice Systemが登場します。例えば、その価値をどのように企業に訴求していくことになるのでしょうか。

平井 先ずは、「Information Rights Management」のフロントエンドツールとしてです。Office SystemとWindows Server 2003に組み込まれるWindows Rights Management Servicesと連携させることで、企業は機密性の高い情報を容易に保護することができるようになります。アクセス権とポリシーの管理はサーバベースで行われ、文書の転送、複写、印刷のコントロールだけでなく、設定した期限を過ぎると文書を廃棄することもできます。

 もう一つ挙げるとすれば、「つながるシステム」ということです。新しいOffice Systemは、XML Webサービスをフルサポートします。バックエンドのアプリケーションやビジネスプロセスのフロントエンドになり得るということです。IBMやOracle、BEA Systemsなど、ミドルウェアのソリューションを持つベンダーはほかにもありますが、エンドユーザーが使うクライアントソフトウェアのビューで語れるのはマイクロソフトだけです。

 われわれは、Windows Server上にオペレーショナルインフラ、アプリケーションインフラ、そしてインフォメーションワーカーインフラとしてSQL ServerやExchange Serverなどミドルウェア群を位置付け、「Windows Server System」として統合しています。

 しかし、だからといって顧客は統合されたソリューションすべてを導入しなければならないわけではありません。カフェテリア方式で選択し、WebSphereやOracleと組み合わせることができるわけですが、われわれにはOffice Systemというクライアントサイドの強力なインタフェースがあります。これは大きなアドバンテージです。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]