エンタープライズ:ニュース | 2003/09/14 00:15:00 更新 |
ジェイコブス氏に聞く、Oracleとライバル製品の違い
ドクターDBAことケン・ジェイコブ氏に話を聞いた。同氏はOracleとライバル製品の違いに触れ、データの保有の仕方が決定的に異なっていると話した
OracleWorld 2003が9月7日から11日まで開催され、途中爆弾騒ぎなども挟んだが、結局すべての講演が行われ、無事閉幕した。グリッド一色に染まった今年のOracleWorldでリリースされたOracle 10g Databaseの最大の特徴は、サーバやストレージの仮想化により、複数のマシンを1つのコンピュータに見立てて処理を行えること。
「バーチャルメインフレーム」という表現が外国のプレスから聞こえて来たことも興味深かった。なぜなら、メインフレームでは、筐体の体積以上のプロセッサは搭載できないが、バーチャルメインフレームならプロセッサの搭載数に限りがないとも考えられるからだ。
一方、グリッドコンピューティングという用語が、これまでの科学技術系の計算に用いていたモデルとは異なっているという指摘もあったが、Oracleは、企業向けに商用のグリッド環境を提供する「Enterprise Grid」として、明確に別の定義であるという立場を取っている。
ともあれ、10gは「複数マシンの仮想化や、運用の自動化により、システム管理を楽にする」という目標を掲げていることは確かだ。だが、運用の自動化をはじめとした一連のキーワードは、最近ほかのベンダーからも幾度となく聞かれる言葉だ。IBMのオートノミックコンピューティングや、HPのUtility Data Center(UDC)がこれに当たる。
では、Oracle 10gとIBMのオートノミック・コンピューティングの違いはどこにあるのか。
データの持ち方に違い
ドクターDBA(DataBase Administrator)であるケン・ジェイコブス氏はプレスとのインタビューで、データの保有の仕方に話を振り、「IBMはシェアド・ナッシング型であり、Oracleはシェアド・エブリシングである」と話す。ちなみに、MicrosoftのSQL ServerもIBMと同じシェアド・ナッシング型になっている。
ケン・ジェイコブス氏
これについては、ラリー・エリソンも基調講演で触れており、「いい悪いの話はしないが、OracleとIBMのDB2、MicrsoftのSQL Serverはこの点が決定的な違いだ」と話している。
つまり、Oracleは、複数のデータベースに格納されているデータを共有する1つのディスクに集約して持つことができる。一方で、シェアド・ナッシング型のデータベースでは、データベースの切り分けごとに、ディスクをそれぞれ分ける形でデータを保有する必要がある。
ジェイコブス氏による簡単な例では、もし10台のサーバマシンでシステムを運用している企業があり、仮に、2台のサーバに突然障害が起こった場合も、Oracleならばシステムそのものは中断しない。データを共有ディスクで一元的に保有しており、別のサーバマシンが機能を引き継ぐからだ。
一方で、シェアド・ナッシング型のデータベースでは、販売や人事など、さまざまな業務による分け方がある中で、アプリケーションとデータがマシンごとに個別に格納されている。そのため、一台のマシンに障害が起これば、その時点でシステムが部分的に停止してしまう。もちろん、シェアド・ナッシング型のデータベースも、この条件を踏まえた上で、クラスタリング技術を用意しているため、実際のシステム停止を避けることは可能だ。
すなわち、エリソン氏が「Oracleには単一障害点(シングルポイント・オブ・フェイラー)がない」とアピールしたのも、これを示してのこと。
そのため、データの持ち方の観点から見た場合、Oracleならば、大量のサーバマシンを利用したシステムを構築しやすい。一方で、シェアド・ナッシング型のデータベースを、大量のサーバマシンで運用することを考えると、その何百台ごとにデータを切り分けて格納しなくてはいけないことになり、「DBAの苦悩」は続いてしまう。
ジェイコブス氏はこの上で、「結局、シェアドナッシング型のデータベースソフトを採用する場合、多数のサーバマシンではなく、メインフレームと同じコンセプトの巨大なサーバを利用する方向へと向かうことは明らか」と話した。
そして、IBMのオートノミック・コンピューティングについて、「IBMのオートノミック・コンピューティングは、メインフレーム志向のコンセプト」と述べ、10gが向かう方向性とは異なっていると話した。
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[怒賀新也,ITmedia]