グリッド技術と顧客志向でBIの全体最適化を実現する日本オラクルBI革命を起こす日本オラクルの新プラットフォーム 【連載第1回】

日本オラクルが「Oracle Business Intelligence Suite Enterprise Edition日本語版」をリリースした。セキュアで完全に統合されたビジネス・インテリジェンスプラットフォームが現場の業務を統合し、業務効率アップを強力に推進できる。グランドデザインされた新たなBIプラットフォームにより、企業は「本当に活用できるBI」を実感し、ビジネスの拡大を図ることができる。

» 2006年06月27日 13時00分 公開
[ITmedia]
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 Oracle OpenWorld San Francisco2005のキーノートに登場したオラクル・コーポレーション(米国)のCEOラリー・エリソン氏が、「Project Fusion環境でIBMのWebSphereをサポートするという発表には、大勢の人が驚いたはずだ。ミドルウェアの領域では、IBMの製品であっても認定し動作を保証していく」と発言したのは2005年9月のことだ。

 さらにこのとき、「未決定事項だが、Oracle Fusion ApplicationsでOracle以外のデータベースも認定保証することを検討している」という衝撃的な発言が飛び出した。

 かつてのオラクルは、オープンな技術を取り入れて業界標準に積極的に対応するとはいえ、最終的にはOracleのデータベースを中核に自社のさまざまなソフトウェア群で周りを固めたシステムを、最良のソリューションとして提供してきた。オラクル製以外のアプリケーションやソフトウェアとの連携については、インタフェースは用意するものの、少なくとも「重視してきた」とはいえない。

 だが、2005年にこの方向性が大きく変化し、既存の投資を最大限に保護する「顧客志向」を重要なキーワードとして打ち出した。衝撃の発言から10カ月ほどが経過し、Oracle Fusion ApplicationsでDB2がサポートされるかはいまだ未定だが、オラクルの「顧客志向」への取り組みがさまざまな面で大きく進化を始めている。

BIでも顧客志向がキーワードに

 オラクルが提供するBI(Business Intelligence)は、システムのインフラとなるOracle Data Warehousing、その上に実際の分析環境となるOracle Business Intelligence Suite、ERPなどのアプリケーション群に強力な分析機能を追加するOracle Business Intelligence Applications、そしてBI環境を管理するGrid Controlの4つで構成される。

OracleのBIを支える製品構造

 このBI分野においても「顧客志向」のための新しい動きが起こった。2006年6月に新たに発表されたOracle Business Intelligence Suite Enterprise Edition(Oracle BI EE)では、データソースとして他社のデータベースをネイティブにサポートした。単にMicrosoft SQL ServerやDB2が使えるというだけでなく、検索時にはそれぞれのデータベースに最適化したSQL文を利用する。また、モデル・ベースのアーキテクチャを採用しており、ユーザーはどのデータベースを使用しているかを意識することなく、複数のデータベースの情報を同時に活用することが可能になる。

 「すべてをオラクルのデータベースに統合します、と言うことは簡単ですが、実現させるのは容易ではありません。既存のシステム資産を活かしつつ、どのように分析環境として統一したものをユーザーに提供するかが、BIの大きな課題となります」と話すのは、日本オラクル システム製品統括本部マネジャーの桑内崇志氏。

日本オラクル システム製品統括本部マネジャーの桑内崇志氏

 「いままではOracle Databaseやミドルウェアと密接に連携、統合することで強力なBI環境を提供してきました。この部分の機能、性能の高さはもちろん残しつつ、さらに幅広い機能を実装したのが、今回のOracle BI EEです。アラート機能やディスコネクト環境のサポートなど、他社では提供していない新機能はもちろん、さまざまなデータソースをネイティブにサポートする機能を実装しました」(同氏)

 通常であればETL(Extract,Transform and Load)ツールなどを使って、さまざまなデータソースからバッチ処理で巨大なデータウェアハウスにデータを取り込み、それを分析に用いる。この作業は負荷も高く、すべてのデータを決められた時間内に取り込むことができないということが、しばしば発生する。

 これに対し、データソースとなるデータベースに直接アクセスできれば、新たな投資を最小限に抑えながら、取り込む作業の負荷を大きく下げ、結果的に詳細かつリアルタイムなデータを分析に活用できることになる。つまり、Oracle BI EEには、顧客の既存の投資を無駄にしないという、新しいオラクルの方向性がしっかりと組み込まれているのだ。

垂直統合と水平連携で統合されたBI環境を実現

 分析環境の強化だけでなく真に統合されたBI環境の実現には、ベースとなるインフラ部分の強化も重要だ。新たにOracle Databaseのオプション製品として提供するOracle Warehouse Builder 10g Release 2は、負荷の高いETLの作業に対し強力な機能、性能を備えている。データクレンジング機能などETLツールとして他社と同等か、もしくはそれ以上のものを実装しているだけでなく、Oracle Database自体がETLの実行エンジンとなるためETL専用サーバーが不要で、高性能とリソースの有効活用の両方のメリットが同時に得られる。

 インフラ面でさらに強力なのが、グリッド機能だ。Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)のグリッド環境で実現するWarehouse Gridがあれば、「Think big,Start small(大きく考え、小さく始める)」が容易に実現できる。BIではETLや分析用の集計データの計算など、CPU負荷が高い作業が多数ある。これらの作業負荷のピークに合わせてシステムを準備すると、巨大かつ極めて高性能なシステムが必要になる。

 「企業にとって、最初から巨大で高価なサーバーを一気に導入するのは難しいものです。そしてその大きな投資に対し、効果の予測もしにくい。できることなら、最初は小さく導入して、データの増加やユーザー数の拡大に応じて適切なシステムリソースを追加できれば、結果として効率的なBI環境が素早く構築できることになります。Warehouse Gridでは、Oracle RACのスケールアウト機能をうまく活用することができます。将来的にはWarehouse Gridでデータ部分も統合していき、その上に最適化された分析環境を載せていくことで、真に統合されたBI環境が提供できると考えています」と桑内氏。

 オラクルでは従来からの強みである自社製品群を中核とした製品志向の垂直統合と、顧客の既存投資を最大限に活用できるOracle BI EEの顧客志向の水平連携を組み合わせ、双方の利点を発揮できる2つのアプローチで統合化されたBI環境を提供している。

Oracleの製品戦略は垂直連携と水平連携の2つのアプローチに分かれる

BIは個別最適から全体最適の時代に

 ところで、BI自体は10年以上も前から、帳票やレポーティング、OLAP分析などさまざまな形で既にシステム化されている。そのため、企業にはそのときどきに必要となった部門や分野ごとに、複数の分析環境が存在するのが普通だ。これらは、個々の目的に対しては最適化されているが、全体として最適化されていないので、さまざまな問題やリスクが発生する可能性がある。

 まずは、個別最適の状態では昨今のコンプライアンスや内部統制実現の要求に対し、大きなリスクとなる。例えば、経理部門と経営企画部門で異なるBIツールを用い、異なるデータソースを対象に分析やレポートを作成していたのでは、それぞれの部門で業績数字が異なってしまう可能性がある。

 そのような結果を使っていたのでは、企業は重要な判断を適切に行うことができない。結果として、内部統制が実現できているとはいえなくなってしまう。さらに分析環境が複数あり、それぞれのツールに最適化したデータを作っているようでは、業務プロセスもツールごとに分断されてしまう。内部統制実現のためには、人手の介入をなるべく排し、システムで自動的に運用する必要もある。これについても、バラバラなシステムで実現するのは極めて困難だ。

 さらに、リアルタイムなデータ分析も、個別最適化されたシステムで実現するのは難しい。時代の変化が激しい現状では、流通業などでは数時間単位で分析を実施したいという要望が出てきている。複数の分析ツールが混在するような場合、それぞれのツールごとにリアルタイム性を確保していたのでは手間もコストも大きく掛かる。データの整合性を確保しながらリアルタイムな分析要求に応えるには、ここでも全体最適化されたシステムが必要になる。

 全体最適化された統合BIシステムを構築できれば、当然、管理、運用のコスト面でも有利だ。分析ツールなどの管理、運用は、ユーザー部門に任せている企業も多い。しかし部門ごとにシステム管理要員を確保するのは大変で、さらに重要なデータがユーザー部門に分散配置されることになり、セキュリティリスクも増大する。こういった面からも、個別最適化されたBI環境を全体最適化されたものに進化させる必要がある。

 「個別最適化されたシステムでは、顧客のリアルタイムな分析要求に応えるために、フルスクラッチでシステムを再構築したといった話をよく耳にします。そういう要望には、個別にリアルタイム化するのではなく、全体最適化された統合的なBI環境の構築を検討するべきでしょう。とはいえ、複数のパッケージが散在するような状況では、すぐに移行するのは困難です。既存の資産を最大限活かしながら、段階的に統合BI環境を構築していく必要があります。オラクルであれば、既存のデータ資産を活かしながら、全体最適化された統合BI環境を実現できます」(同氏)

 今後の企業をとりまく状況を考慮すれば、全体最適化された統合BI環境を最終的な目標に設定し、段階的に既存システムを改良、拡張していく必要がありそうだ。

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提供:日本オラクル株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年7月26日