日経印刷株式会社:Exchange Server 2007+SMSによるパフォーマンス向上とスパム対策でメール環境を劇的に改善

 日経印刷は、カタログやパンフレット、書籍、白書、各種マニュアル、コミックなど、さまざまな出版物の制作・印刷を手掛けている総合印刷会社である。創業は東京オリンピックが開催された1964年。その後も着実な成長を続け、今年8月には新工場の竣工も予定されている。こうした業務拡張に合わせ、Linuxで構成されていたメールシステムをExchange Server 2007を中心とする新システムに刷新。今年2月より、本格的な稼働を開始している。Exchange Server 2007によるメールシステムは、従来のシステムが抱えていた課題を一掃するとともに、同社のこれからの飛躍を支える重要なインフラとして、ベストなソリューションであった。


メール流量の増加によりシステムが不安定に

dms_03.jpg 日経印刷株式会社 制作本部 制作部 制作技術課 課長 岡田洋一氏

 日経印刷では約3年半前に、主に顧客など外部とのやり取りに利用してきたメールシステムを、Linuxで構築した自社システムに更新した。当時、やり取りされるメールは1日に3000通ほどで、更新したシステムは快調に稼働していた。

 ところがその後、メール流量は予想以上に増加し、1日に最大3万通ものメールがやり取りされる状況となった。さらにデータ入稿へのシフトが進み添付ファイルが増大したこともあって、急速にメールシステムが不安定になった。特にメールのアーカイブ処理(すべてのメールをシステム側で保管しておく作業)に問題が発生し、その対応に追われた状況を、今回のシステム導入を担当した岡田洋一氏(日経印刷株式会社 制作本部 制作部 制作技術課 課長)は語る。

「メールの流量が増えた結果、メールのアーカイブ処理も増大して処理速度が低下しました。その結果、アーカイブを行うサーバでメールが滞留する現象が頻発するようになりました。また、サーバは外部からのメールを受け取っているのですが、そのあとの処理が遅延するため、『出したメールが届いていない』という問い合わせが相次ぎました。状況はクリティカルであり、早急な対策が必要でした」(岡田氏)

 メール流量が増加した理由としては、業務拡大に伴うアカウント数の増加もあるが、それ以上にスパムメールの増加が大きかった。

「スパムメールはここ一年で急増しました。システムが不安定になったころは、おそらく全メールの8割はスパムであったと思います」(岡田氏)

 日経印刷では、社員が使用するPCのメールクライアントがOutlook 2003に統一されている。このため、スパムメールはOutlook 2003が持っている機能の「迷惑メールフィルタ」を使って、社員が個々に対策していた。しかし、スパムメールそのものは社内に入ってきているため、不要なメールを受信することによる作業効率の悪化、メールのアーカイブ処理をはじめとするシステム全体にかかる大きな負荷など、スパムメールは大きな問題となっていた。

 従って新しいシステムに対しては、パフォーマンスの大幅アップとともに、スパムメールへの効果的な対策も要求されたのである。

3つのプランを検討し、メールシステムの全面刷新を決断

 以上のような課題を克服するため、岡田氏はメールシステムについて次の3つのプランを策定し、検討に取り掛かった。

  1. 部分的な置き換え・強化
  2. 外部ホスティング
  3. 全面リプレース

 第一の部分的に強化するプランは、最も安価に対応できるというメリットはあったものの、パフォーマンスを根本的に改善したり、メンテナンス性を高めたりするという効果が得られないことから見送られた。

 第二のホスティングサーバに切り替えるプランに関しては、アウトソースによるメンテナンスの軽減が大きなメリットであった。しかし、詳細な検討を重ねた結果、利用期間が長くなるほど高コストになることが分かったという。

「最初の3年ほどは、確かにホスティングの方が低コストですが、アカウントが増えるにつれて追加料金が掛かります。さらにアーカイブなどのオプションを付与すると1アカウントあたりの費用も決して安くはありません。長期的な視点で試算すると実は最も高コストになることが分かりました」(岡田氏)

 図1を見てほしい。これは、岡田氏が実際に作成し、会社の幹部層向けのプレゼンテーションで使用された資料である。ホスティングと社内構築を比較したコストの推移が、分かりやすくまとめられている。

yk_01.jpg 【図1】メールシステムのホスティングと社内構築にかるコスト比較

 1年目こそホスティングは社内構築の約半分のコストで済んでいるが、それ以降、ホスティングに掛かる費用は年を追うごとに比例して上昇している。これに対し、社内構築の場合は、年による変動がそれほどない。社内構築の棒グラフが5年ごとに大きくジャンプしているが、これはシステムの定期的なリプレースを考慮して計算した結果だ。それを含めても、11年目には年間で最低でも3000万円のコスト差が発生する。

「もちろん、今後ホスティングの価格が大幅に低下するといった可能性もありますが、現時点では、間違いなく社内構築の方が割安だと思います」(岡田氏)

 ホスティングの利用に関する懸念はコストの面だけではなかった。内部統制の法令に対応するためメールを定期的にアーカイブし、3年間保管する必要があったが、その点でもホスティングはサービスの利便性の低さなど柔軟性に欠けたと岡田氏は指摘する。

「コストだけでなく、Active Directoryとの連携や将来的な拡張性、システムの堅牢性、運用の柔軟性など、総合的に見て、社内で独自に構築するのがベストであると判断しました」

 メールシステムの更新を検討している企業にとっては、参考になる点が多々あるのではないだろうか。

Exchange Server 2007のセミナーがきっかけ

 実際に導入するシステムとしては、多くのベンダーの提案の中から、デルのExchange Serverソリューションが選定された。なぜデルのソリューションを選んだのか、その理由は何だったのだろうか。1つのきっかけは、2007年6月にデルが開催したExchange Server 2007のセミナーであった。

「メールシステムの全面刷新を決めてから、いくつかのシステムを検討する中で、デルの開催によるExchange Server 2007のセミナーに参加しました。その内容が、非常に信頼できるものだったのです。技術的な部分はもちろんのこと、導入にあたっての失敗談など、導入実績がないと絶対に分からない情報が語られ、かえってそれが信頼感につながりました」(岡田氏)

 Exchange Server 2007がまだ開発途中のβ版の段階から、マイクロソフトとデルは共同でさまざまな検証を行ってきた。その成果もあり、Exchange Server 2007を使ったシステム構築に関する経験値は、デルが他社を大きく引き離していた。

「実は、Exchange Server 2003の安定性を強調するベンダーが多かったのですが、われわれとしては64ビット化されたことによる高いパフォーマンスと拡張性・将来性に魅力を感じていました。ですからExchange Server 2007のシステム構築経験が豊富なデルに、お願いすることにしました」(岡田氏)

 さらに、以前のLinuxのシステムで味わった苦い経験も、この決断を後押しした。

「以前のシステムでは、ウイルス対策・アーカイブ・メールボックスなどのベンダーがそれぞれ異なる製品を単純に組み合わせて作られたものだったため、サポート窓口がバラバラでした。しかも、当時のシステム全体を把握していた担当者が異動し、障害発生時は個々のメーカーサポートと個別にやり取りせざるを得ず、迅速な対応が取れない状況となっていました。この種のトラブルを避けるためにも、ベンダーを絞ってサポート窓口を集約する必要性を感じていました」(岡田氏)

 その後、岡田氏はシマンテックのSMS(Symantec Mail Security)のセミナーにも参加。SMSによりスパムメールをほぼ完璧にシャットアウトできることを知り、Exchange Server 2007+SMSという基本なシステム構成が現実化していくことになる。

 昨年6月のデルのセミナーを起点にすると、システムの検討・選定に3カ月、導入に3カ月の計6カ月を経て、Exchange Server 2007による新システムが動き始めた。

システム構成はExchange Server 2007+SMSの良い意味での典型例

 図2が今回導入されたシステムだ。Exchange Server 2007+SMSのシステムとしてはオーソドックスな、良い意味での典型例と言える。インターネットからファイアウォールを経由して入ってきたメールは、まずSMSのサーバでウイルス/スパムのチェックを受ける。

yk_02.jpg 【図2】導入されたExchange Server 2007+SMSによるメールシステム(クライアントPCの数は約350台/メールアカウントは約400アカウント)

 岡田氏によれば、スパムメールはここでほぼ100%除外できるという。約8割がスパムであったというから、社内に入ってくるメールの量は、ここで約20%にまで減少することになる。重要なメールがスパムとして処理されてしまうトラブルについては、「現在までまったくありません」と岡田氏は言い切る。

 シマンテックによれば、SMSで重要なメールがスパムとして判定される確率を100万分の1とアナウンスしている。この数値の妥当性はともかくも、ユーザーである岡田氏が「驚きました。ほぼ完璧ですね」と発言したことは事実として捉えておくべきだろう。

 SMSを通過したメールは、社内のメールボックスに届けられ、定期的にアーカイブされる。また、差分バックアップおよびフルバックアップが定期的に実行され、3年分のメールデータがテープに保存される。

 図中右上の「リバースプロキシ」と書かれているサーバは、外回りの営業マンが所有するノートPCからのアクセスを引き受ける。従来は社外からアクセスすることはできなかったが、新システム導入後、ノートPCを使って社外でのメール送受信や社内のグループウェアへのアクセスができるようになった。現在運用テスト中だが順調に稼働しており、今後の業務効率の一層の向上が期待されている。

 また、印刷会社ということで、社内にはデザインやDTPで利用されるMacintoshの割合が多い。こうしたMacintoshユーザーにとっては、ブラウザベースでメールを送受信できるOWA(Outlook Web Access)の効果が大きかったという。

「当社のクリエイティブ部門やDTP部門には旧OSを含む複数の環境を持つMacintoshが数多く配備されています。しかし特定の環境でしかメールが取得できないといった利便性の低さや、メールクライアントの不統一が悩みの種でした。それが今回OWAによってすべての環境でOutlook 2003に近い操作性でメールを利用できるようになり、大変好評でした。同時に、WindowsとMacintosh間でよく発生するメールの文字化けも減りました」(岡田氏)

今後はスケジュールやドキュメントの共有も視野に

 新システムの導入により、エンドユーザーのメール送受信の体感速度は、明らかに向上したという。

「これまで、Outlookを起動後、2〜3分はメールの送受信にかかっていたのが、数秒で完了するようになりました。スパムが減ったことでメール全体の受信数が減り、メールが届いているかどうか、逆に不安に感じてしまう社員もいたくらいです(笑)」(岡田氏)

 Exchange Server 2007+SMSのシステムは、日経印刷のメール環境を劇的に改善したといってよいだろう。では、将来に向けた課題・問題点はないのだろうか。

「メールに関しては、今のシステムに大変満足していますが、今後は社内で利用している予定表システムとの融合やモバイルデバイスからのアクセスもできるようにしたい、と考えています」(岡田氏)

 日経印刷の社内では、サーバベースの市販のグループウェアが稼働しているが、Exchangeシステムとの連携はできない。これは、主にグループウェア側がExchangeとの連携機能を持っていないことによるが、将来的には予定表などのスケジュールデータも、Exchangeのシステムにのせていきたいという。さらには、社内のさまざまなドキュメントを共有するため、Microsoft Office SharePoint Serverの導入も、視野に入っているようだ。

 今回の取材を終えて、Exchange Server 2007+SMSのソリューションは、日経印刷にとってベストな選択であったという印象を強く受けた。また、ホスティングと社内構築のコストを精緻に計算し、費用対効果を見事に視覚化し、上層部を説得した岡田氏のスキル・力量にも感銘を受けた。メールシステムの導入・更新を検討している企業にとっては、さまざまな点で示唆に富む事例ではないだろうか。



提供:デル株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年5月31日