川澄化学工業株式会社:分散したメールシステムをExchange Server 2007による堅牢なシステムに統合

 川澄化学工業株式会社は、1957年に設立された医薬品・医療機器メーカーである。人工透析に使用されるダイアライザー(人工腎臓)をはじめ、血液バッグや生理食塩水、各種カテーテルなど、最先端の医療を支える数多くの製品を研究・開発・製造している。ITはインターネットの黎明期から積極的に活用してきたが、社内システムの老朽化に伴い、IT基盤整備のための3カ年計画を策定。その第一弾として、Microsoft Exchange Server 2007によるメールシステムを導入し、2007年8月より稼働している。システム導入にあたっては、デルの提案によりサーバの二重化を実施。冗長性のあるシステム構築に成功したことで、今後の企業活動を支えていく堅牢な情報系システムの土台が完成した。


3つのメールシステムと4つのドメインが混在

 新しいメールシステムを導入する以前、川澄化学工業では3つのメールシステムが混在していた。順番としては、最も初期に導入されたのがホスティングによるシステム、次がLinuxによるシステム、3番目がExchange 2000によるシステムであった。

 Exchange Server 2007による新システムを導入することになった大きな理由が、3つのメールシステムの統合にあったが、そもそも、なぜ3つものシステムが混在することになったのだろうか?

川澄化学工業株式会社 システム部 システム管理課 シニアリーダー 石田裕二氏 川澄化学工業株式会社 システム部 システム管理課 シニアリーダー 石田裕二氏

「世の中で電子メールが使われ始めたころ、まずホスティングサービスを利用して社内で部分的に導入しました。ただし、ホスティングですとユーザーが増えるにつれてコストがかさみます。われわれは大分県に工場を持っているのですが、工場の社員は社内との連絡が多く、外部とメールをやりとりすることはほとんどありません。そこで、Linuxでメールサーバを構築すれば、無料のアカウントをいくらでも発行できると考えたのです。また、Exchange 2000はグループウェアを使う目的で導入したのですが、最終的には社内でメールや予定表をやりとりすることだけに利用されることになりました」(石田氏)

 その場その場で必要とされるシステムを導入していった結果、3つの異なるメールシステムが混在することになったのである。その結果、個々の社員の業務にも支障を来していたという。

「結果的に、社内には4つのドメインが存在していました。そのため、社内にメールを出すときは社内用のアカウント、社外に出すときは社外用というように、メールを出す相手によってアカウントを切り替える必要があるなど、社員の日常業務にも支障が出ているという状態だったのです」(石田氏)

 確かに、このような状況は望ましいとは言えない。業務効率の面だけでなく、アカウント管理やサーバの管理・保守の点でもマイナスであり、セキュリティやコンプライアンスの面でもデメリットが多い。その解決策として、新しいメールシステムの導入が急がれたのである。

Exchange Server 2007によるメールシステムの統合を検討

 では、統合用のメールシステムとしてExchange Server 2007が選定された理由は何だったのだろうか?

川澄化学工業株式会社 システム部企画課 リーダー 緑川毅氏 川澄化学工業株式会社 システム部企画課 リーダー 緑川毅氏

「1つの理由はActive Directoryとの親和性でした。Exchange 2000の利用時からユーザー管理はActive Directoryで行っていましたので、Exchangeに統一すればActive Directoryでユーザーを一元管理できるというメリットがありました」(緑川氏)

 Linuxによるシステムも考えられたが、もともとLinuxによるメールサーバを導入した理由は、初期導入コストにあった。従って、Linuxシステムに新たな投資を行うということ自体、発想としてなかったという。同時に、運用・管理を継続的に行える人材が社内に不足していたということもあり、Linuxのシステムは採用されなかった。

 さらに社内体制が変更され、ITシステム部門に求められる役割が変わったことも、Exchange Serverによるメールシステムの統合を大きく後押ししたという。

「会社全体の業務プロセスを見直す必要があったのですが、会社全体の業務・システムを把握できているのが、われわれシステム部でした。そこで、われわれの仕事が企画やビジネスプロセスを考えるという方向に変化し、それまで行ってきたシステム開発や管理は、一部を外部に委託するという流れになったのです」(緑川氏)

高い技術力+高性能なハードウェア+低コストでデルを選択

 こうして、新しいメールシステムの構築がデルに委託されることになるのだが、システム検討の初期段階では、選択肢の中にデルの存在はなかったという。

「実を言うと、“デル=サーバなどのハードウェアを売っている会社”というイメージを持っていました。それが、Exchangeの検討を始めたころに、デルの営業の方と話しているときExchangeの話題になり、デルが構築サービスを提供していることを初めて知ったのです」(緑川氏)

 その後、デルのエンジニアを交えたミーティングの機会が持たれたが、その時点で緑川氏は彼らの技術力の高さに驚いたという。

「われわれもExchangeを使っていましたので、ある程度の知識はありました。デルのエンジニアと打ち合わせをしたとき、彼らの持つ知識や技量に対して“これはすごい”と正直に感じました。Exchangeに関する知識・技術はもとより、一人一人がハードウェアのプロ、サーバのプロ、インフラのプロ……という印象で、信頼できる人たちであることがすぐに分かりました」(緑川氏)

 また、ベンダーの選定にあたっては、ハードウェアのパフォーマンス・コストも検討された。

「ハードウェアの性能を比較して、デルが高評価を得ました。これでハードが決まり、そのハードメーカーのデルがExchange導入の高い技術力を持っていたわけですから、残るはコストだけでした」(緑川氏)

 当時、Exchange 2007の導入事例は国内でまだ数社という状態だったが、その点でもデルは他社に先行していた。この経験がコストを抑えることに役立ったと、システム構築に携わった森嶋 修平氏(デル株式会社 ソリューション・サービス本部 インフラストラクチャ・コンサルティング・サービス コンサルティング第2部 テクニカル コンサルタント)は言う。

「Exchange Server 2007によるシステム構築経験がありましたので、どこにどんなリスクがあるのかは分かっていました。これにより、経験がないために見えないリスクをコストに上乗せせざるを得ない他社よりも、コストを抑えることができました」(森嶋氏)

 こうしてコストの面でも、デルのソリューションは川澄化学工業に対して大きくアピールすることができたのである。

 エンジニアの高い技術力、高性能なハードウェア、経験に裏打ちされた低コストという3つの要素が揃った結果、デルによる川澄化学工業の新しいメールシステム構築がスタートした。

yk_dms04_04.jpg 左からデル株式会社 ソリューション・サービス本部の服部氏、森嶋氏、冨所氏、東日本営業部の渡邊氏

サーバの二重化でシステムの冗長性を確保

 では、ここで導入された新システムについて概観しよう。システム構成は図1のとおりだ。特長的なのは、サーバが二重化されている点だ。緑川氏は、当初ここまで堅牢なシステムは想定していなかったという。

システム概要 【図1】川澄化学工業のメール。アカウント数は750個

 「導入したシステムではサーバを二重化することで冗長性を保っていますが、当初は、ここまでのシステムは考えていませんでした。しかし、デルと繰り返し打ち合わせする過程で、二重化の必要性を痛感するようになりました。その結果、現在のような構成になったのですが、二重化して本当に良かったと思っています」(緑川氏)

 メールボックスサーバはクラスタ構成で二重化され、SANストレージに接続されている。SANストレージはディスク−ディスクのクローンコピーが行われ、クローンをバックアップサーバに吸い上げてテープに落とすという流れになっている。クローンデータをバックアップするため、バックアップ中もメールシステムに負荷を掛けないというメリットがあり、数百Gバイトのデータを数分でバックアップ可能という。

 また、ブラウザでメールボックスにアクセスできるOutlook Web Access(OWA)も導入。外回りの営業マンはもちろん、自宅からアクセスしたい社員にも、大変好評だという。さらに、海外の拠点で働く社員も、OWAでメールにアクセスできる。

 今回は、Exchange Server 2007の機能であるActiveSyncの設定も行った。現在は試験的に、ウィルコムのW-ZERO3が端末として利用され、外部からOutlookのメールと簡単に同期させることが可能となっている。ノートPCを持ち歩かなくてもメールや予定表を見たり、添付ファイルを閲覧したりできるので、社員の評価は非常に高いという。今後は、W-ZERO3以外のWindows Mobile端末も視野に入れ、利用を検討しているとのことだ。

構築された“あるべき姿”が将来のシステムを支える

 Exchange Server 2007による新しいメールシステムは、川澄化学工業の情報系インフラのあるべき姿を実現したと言える。3つのメールシステムが混在していた状況と比較すれば、大きな進歩であるのは間違いない。

 ただし、新しいシステムの導入により、一時的にユーザビリティが低下するという現象が起きたのだ。

「それまではメールクライアントをユーザーが自由に選べたのですが、新システム導入後はOutlookに統一しました。このため、一部のユーザーからは、使い勝手の面で不満も出ました。これに対しては、操作マニュアルを動画で制作して閲覧可能にするなど、教育・サポート面での工夫も必要でした」(緑川氏)

 ユーザーの不満は、Outlookの機能が不足しているという意味ではなく、機能が多すぎて使い切れないという不満が大半であったようだ。確かに、メールクライアントとしてだけ見ると、Outlookの機能は多い。しかし、システムの今後を考えるとき、Outlookの高機能は不可欠なものになるだろうと、緑川氏は言う。

「今後は、グループウェアや文書管理・検索システムなどを考えていますが、こうした新しい機能を追加するにつれて、Exchange+Outlookに統一した意味が出てくると考えています」(緑川氏)

 今後、全社員が新しいシステムが使いこなすようになると、さまざまな「〜したい」という要求が出てくると予想されるが、新しいシステムは、こうした要求に応えるのに十分なポテンシャルを持っている。新しいシステムが持つポテンシャルについて、石田氏は次のように総括する。

「これまでのシステムは、いわば部分最適の繰り返しでした。それが、今回、初めて全社最適なシステムが構築できたと思っています。その結果、将来、新しい機能が必要になったとしても、十分対応できる体制が整いました」(石田氏)

 例えば、J-SOX対応のためにジャーナルサーバを追加し、メールデータをアーカイブする機能を追加することも、必要であればすぐに対応可能であるという。

 メールシステムは、企業の情報システムにとって土台のような存在である。川澄化学工業の場合、この土台が3つに分かれていたわけだが、今回、これがExchange Server 2007による頑強な一枚岩の土台に置き換えられたと言えるだろう。

 その場その場で必要に応じて構築してきた情報系システムが、現在、微妙なバランスの上で稼働している企業は、決して少なくないだろう。システム刷新の必要性を感じながらも、明確な対処方法を見いだせないでいるシステム管理者も、また多そうだ。こうした企業やシステム管理者にとって、川澄化学工業の事例は、非常に参考になるのではないだろうか。



提供:デル株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年5月31日