エンジンとして企業を奮い立たせるXenが狙う次のフロンティア

「Xenはエンジンであり、それを搭載したさまざまな車が存在するようになった」――VA Linuxが先日開催した「Xen Conference Japan 2008」では、オープンで活発なエコシステムの中で業界標準のハイパーバイザとしての地位確立に歩を進めるXenの最新動向が数多く示された。


 「Xenはエンジンであり、それを搭載したさまざまな車が存在するようになった」――VA Linux Systems Japan(VA Linux)が11月19日に開催した「Xen Conference Japan 2008」で、Xenプロジェクトの創始者で同プロジェクトをけん引するイアン・プラット氏はXenの最新動向を自動車に例え、今まさにXenが市場で強力な存在感を持っていることを強調した。

パワフルで、かつその背後にコミュニティーがある

「仮想化技術はユビキタス化する」とイアン・プラット氏 「仮想化技術はユビキタス化する」とイアン・プラット氏

 2002年にXenハイパーバイザの開発が開始されて6年。この間、仮想化技術自体が市場で大きく花開き、Xenもまた、市場でのシェアを伸ばし続けてきた。プラット氏は、2008年5月にDellやHPが自社のサーバ製品上にXenServerを組み込んだ製品を市場に投入したことに触れ、「より密な最適化が図れるようになった。これは仮想化をデリバリーする点で重要」と、Xenをエンジンとした世界の広がりを喜ぶ。

 仮想化技術はもはやサーバにとどまらず、ラップトップPCやストレージ、アプライアンスなどにも進出していると紹介。さらに、Amazon EC2のようなクラウドサービスの基盤にXenが採用されている事実を挙げ、「パワフルで、かつその背後にコミュニティーがある」とAmazonのワーナー・ヴォーゲルスCTOの言葉を引用しつつ、オープンなエコシステムの中で生まれた高いパフォーマンス、高可用性、セキュリティを提供できていることが今の状況につながったとした。

 具体的な製品である「Citrix XenServer」「Citrix XenDesktop」に話がおよぶと、仮想化環境が苦手とする同時接続ユーザーが増えた場合のワークロードなどについての改善点が示された。XenServerで構築した仮想サーバに、XenAppによるオンデマンドアクセスを試みたパフォーマンステストでは、他社製品と比べて30%程多いユーザー数をカバーできるとした。

Xenの次のフロンティア

 プラット氏自身は現在、クライアントデバイスの上でXenを稼働させることに多くの時間を割いているという。同氏は、サーバとクライアントでは仮想化技術のユースケースが異なると指摘する。

 先日発表されたサーバ仮想化ソフトウェアの最新版「Citrix XenServer 5」では、ストレージ仮想化などの管理機能が強化されているが、そのほかに高可用性やディザスタリカバリのための改善も多く図られている。プラット氏は、これらはサーバ仮想化のユースケースに沿って実装されたものであり、クライアント仮想化では、セキュリティや管理性のサポータビリティ改善がより重要であると話す。

 実機によるデモでは、1台のノートPCにXenの仮想化環境を構築、Windows XPとWindows Vistaを同時に稼働させた上で、Vista側にキーロガーが仕込まれた場合でも、XP側には影響がおよばないことを示した。複数の仮想マシン(VM)をマルチレベルで安全に稼働させることで、ガバナンスと利便性をどう図っていくべきか悩む企業に、1つの解を示した格好だ。

 モバイルデバイスにも注目しているという。プラット氏は、モバイルデバイスの中で3つのVMを稼働させ、デバイスをリアルタイムにコントロールするVM、キャリアアプリケーションを管理するVM、ユーザーアプリケーションを管理するVMをそれぞれ分けることで、セキュリティや管理面の革新が期待できると話し、これらの市場が次のフロンティアになるだろうとした。

導入企業の選定ポイント

「“総合的に”勘案すれば選ぶべき製品は絞られる」と東氏 「“総合的に”勘案すれば選ぶべき製品は絞られる」と東氏

 住商情報システム(SCS)ITプロダクト&サービス事業部セキュリティプロダクト部サブリーダーの東一氏からは、国内の事例が紹介された。SCSはCitrixの日本法人立ち上げから認定ディストリビュータとしてビジネスを展開しており、仮想化技術の導入案件で多くの実績を持っている。

 組み込みソフトウェアを開発するデンソークリエイトの事例では、30台以上の物理サーバが存在しており、「サーバ増加による管理の複雑さ」「サーバルームの発熱量」などに対処するため仮想化技術を検討、XenServerの導入を決定したという。Citrix XenAppを先行して導入していたこともあり、全体のエンハンスも期待しての採用だったというが、選定のポイントとしては、ゲストOSとして64ビットWindowsをサポートしていることが大きかったという。他社製品については、機能やコストを“総合的に”勘案した結果、価格面で折り合わず、評価すらしていないと明かした。

 すでに本番稼働に入って半年が経過しようとしているが、安定稼働を続けていることを受け、同社は2009年度にはCitrix XenDesktopの検証を開始する計画であるという。

Xen/IA64はx86に次ぐ成熟度に

Linuxカーネル2.6解読室などの名著でも知られる山幡氏 Linuxカーネル2.6解読室などの名著でも知られる
山幡氏

 今回のカンファレンスを主催したVA Linuxからは、山幡為佐久氏が登壇し、仮想化環境下のI/O帯域制御の改善に対する取り組みや、Xen/IA64の開発状況について講演した。同氏はXen Summitに参加する数少ない日本人の1人で、Xenに対する理解も深い。

 同氏は、現状の仮想化環境下のI/O帯域制御はいまひとつだと考え、より汎用的なものを作りたかったのだとこの取り組みへのなれそめを語る。IOスケジューラも現在主流のCFQに依存することなく、かつ、I/O制限方式はポリシーとして分離させるという実装方針を決めた後も困難の連続であったと振り返る。例えば、アプリケーションからのI/O要求に対し、I/Oスケジューラもしくはデバイスマッパーのどちらに実装するのが正しいのかといった判断も、周囲の情勢なども踏まえながら進めていかなければならなかったと話し、先進的な取り組みの難しさを吐露した。現時点ではある程度安定した実装が終わり、ベンチマークテストでもおおむね期待通りの性能が出るようになってはいるが、アップストリームでのマージに向けた努力はまだ続くことになるとした。

 一方、自身がメンテナを務めるXen/IA64については、「毎年Itanium終了のお知らせのようなものがニュースになるが」と会場の笑いを誘った山幡氏。しかし、日本ではIA64の市場が確立しており、しかもそこには仮想化技術があまり浸透していないため、Xen/IA64を提供することの意義は大きいと話す。

 そんな山幡氏は、「ArmにXenをポーティングする動きもあるが、x86以外のアーキテクチャで唯一実用レベルになっているのがXen/IA64」と説明、IA64の命令フォーマットの制限や今後x86でも問題になってくると思われるEFI Mappingに対しても、手探りに近い状態ではありながら問題を解決してきた。最新のLinuxカーネルではこれらの成果が取り込まれており、これらの実績がVA Linuxにとっても大きなアドバンテージにつながるのではないかと述べた。


 イアン・プラット氏は講演の中で、「仮想化技術はユビキタス化する。サーバからデスクトップ、ラップトップ、そしてモバイルデバイス。Xenはそれらすべてに対応できる。皆さんが使わずにはいられない選択肢を提供したい」と述べ、オープンで活発なエコシステムの中でXenを育てながら、いずれは業界標準のハイパーバイザとしていきたいと決意を示した。そうした状況の中、ベンダー、システムインテグレーター、そしてエンドユーザーがXenに寄せる期待の大きさがあらためて浮き彫りとなったカンファレンスとなった。



提供:VA Linux Systems Japan株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2008年12月21日

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