廃棄されたPCはこうしてよみがえる――安全な中古PCの流通に貢献するマイクロソフト情報漏えいやマルウェア感染のリスクを解消

厳しい経済情勢から安価な中古PCを購入する場合、業者によって適切な処理がされていない製品にはマルウェアなどの不正プログラムが混入している恐れがある。企業で使用されたPCの廃棄には、情報漏えいの危険が付きまとう。これらのセキュリティ上の問題に対処して、安全な中古PCの流通に取り組む企業の現場を訪問した。

» 2010年10月18日 10時00分 公開
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 経済情勢の厳しさから安価に購入できる中古PCに注目が集まっている。市場に流通するPCのうち、10台に1台は中古PCと言われるほどだ。その利用ユーザーの多くはコンシューマーであるものの、企業での利用も増えつつある。だが、「中古品はきちんと動くのか心配だ」という企業が少なくない。また、企業では使用したPCを廃棄する際に、情報漏えいなどのセキュリティリスクも存在する。

 そこで今回は、中古PC業界の最大手企業であるパシフィックネットを訪問し、中古PCがどのように回収され、どういった工程を経て再利用されていくのかを追った。同社は個人や企業などから引き取った中古PCのデータを適切に消去し、マイクロソフトが提供する中古PC向けの正規ライセンスを利用して再生した製品の販売を手掛けている。

中古PCの利用実態

 まず企業における中古PCの利用実態をみてみよう。アイティメディアが2010年5月に読者を対象に実施した「中古PC購入と利用に関する調査」によると、17.8%の企業が中古PCを利用していることが分かった。企業規模別では、従業員数100人未満の小規模企業が26.8%であるのに対し、1000人以上の大企業では8.6%だった。企業における中古PCの利用は小規模企業が中心であるようだ。

 また、中古PCの購入場所はPC専門ショップが31.7%と最も多く、メーカー(16.0%)、ネットオークション(10.2%)が続く。これらが中古PCの流通経路の大半を占めている。

 中古PCを安全に利用するためには、正規ライセンスのOSがプレインストールされたものを購入することが推奨される。非正規品や偽造品のOSには、マルウェアなどの不正プログラムが混入している恐れがあるためだ。だが、調査では32.3%が「OSなし」の製品を購入していた。この中には非正規品や偽造品のOSを使用しているケースも含まれていると想定される。

 PCのソフトウェアライセンスの管理について、42.5%の企業は管理用ソフトウェアを使用していたが、8.8%は個人任せであった。企業規模別でみると、管理ソフトウェアを使用しているのは、大規模企業で68.2%なのに対し、小規模企業では21.2%となる。小規模企業ほど管理が適切に行われていない様子がうかがえる。

 PCの廃棄方法については、「回収業者による引き取り」(42.9%)と「リース業者による引き取り」(20.4%)を合わせると過半数を超えるものの、「わからない」という回答が18.7%に上った。「その他」の自由記述では、専門業者や自社でデータ消去を行う意見が目立つが、中には「ネットオークションに出品する」「希望者に譲渡する」「不燃ごみに出す」といった企業での対応としては懸念されるものがあった。

グラフ PCの廃棄方法について(出典:アイティメディア読者調査レポート「中古PCの購入と利用に関する調査」、n=1935)

 これらの調査結果から、中古PCを利用する機会の多い小規模企業の中には、正規のOSやソフトウェアを利用していないこと、管理を個人任せにしているところが少なくないようだ。ウイルス感染や情報漏えいといったさまざまなセキュリティリスクを抱え、故障などのトラブルについても適切に対応することが難しい環境にあると考えられる。

 今や市場に流通する中古PCは年間170万台以上の規模に達しているといわれる。アイティメディアの調査結果からも分かるように、著作権侵害などに対する意識がユーザーに十分に浸透しているとは言い難い。マルウェアなどの不正プログラムによるリスクもある。こうした状況を改善するため、マイクロソフトは2009年4月に「Microsoft Authorized Refurbisher(MAR)プログラム」を開始した。これは大規模な中古PC再生業者に向けて、正規のWindows OSがインストールする中古PCを対象に、新規ライセンスより低価格な「セカンダリライセンス」を提供するという取り組みである。大手の中古PC再生事業者が参画を表明し、現在は10社が参画している。(関連記事を参照)

 そのうちの1社が、中古PC業界の最大手企業であるパシフィックネット(東京・港区)である。今回は、中古PCの回収から再販や資源として再利用するため工程を手掛ける同社の東京テクニカルセンターを訪問した。セキュリティや著作権侵害などのリスクの心配がない中古PCの安全な流通を実現している現場を紹介しよう。

どんな中古PCも“買い取り”

 中古PCが再生される工程は、まず中古PCの買い取り依頼を受けることから始まる。買い取り依頼は、電話やFAX、電子メールで受け付けており、回収の日時や物件(メーカー、型番、台数など)の情報を独自の回収管理支援システム「ReLease」でデータベース化し、「依頼・回収・入荷・データ消去・チェック・販売」といったすべてのプロセスを一元管理できるようにしている。中古PCのトレーサビリティ(履歴管理)を確保するための方策だ。

 買い取り作業には、原則として自社所有のトラックを使用している。東京テクニカルセンターには11台の自社トラックがあり、東京を中心に関東一円をカバーする。現地では依頼主に立ち会ってもらい、依頼した内容と現物が合っているかを確認する。内容に間違いがなければ、各機器に仮発行のバーコードシールを張り付ける。

 同社は基本的に、どのような状態の中古PCでも買い取るようにしている。中には状態がひどく値段が付かないものもあるが、廃棄料金を徴収することはないという。買い取りの依頼は1台から受け付けている。

データ消去は専用ソフトと物理的な破壊で対応

杉研也氏 東京本店 東京営業部の杉研也部長

 東京テクニカルセンターの内部を見渡すと、ほとんど壁がないことに気付く。壁の代わりに金網のフェンスによって区画が仕切られているのだ。その理由として、東京本店東京営業部部長の杉研也氏は、「万が一何者かが中古PCに保存された情報を盗み取ろうと考えても、死角になるスペースをなくすことで、すぐに発見できます」と話す。

 買い取りを終えたトラックが戻ってくると、「入荷・仕分け作業エリア」で待機したスタッフが荷物を受け取る。買い取り現場で中古PCに張られたバーコードを担当者がハンディターミナルで読み込み、内容に相違がないかを確認する。「これによって、トラックが運送途中に盗難被害に遭っていないかなどのチェックができます」と、東京本店東京テクニカルセンター部長の濱崎友裕氏は説明する。

 その後、独自の在庫管理システム「C-Brain」に回収した中古PCの情報を本登録する。同時に中古PCの外装をチェックし、リースシールなど以前の使用者を特定できるものをはがして、情報の漏えいを防いでいる。

濱崎友裕氏 東京本店 東京テクニカルセンターの濱崎友裕部長

 中古PCは、「リユース」(販売)できるものと、「リサイクル」(再生)できるものに仕分けされる。そして、それぞれで記憶媒体が存在するものとしないものに分別する。

 記憶媒体がなく、リサイクルに回すものは、リースシールなどをはがし終えたことを確認するシールを張り付ける。リサイクル業者に素材品として販売し、作業は終了となる。この確認シールには同社の従業員番号が記されており、誰が作業したのかをすぐに把握できるようにしている。

 一方でHDDなどの記憶媒体にデータが保存され、リサイクルに回すものについては、データを消去する。データ消去には2通りの方法があり、1つは世界各国の政府機関が推奨し、国際的に評価されているフィンランドのBlancco製のデータ消去ソフトを利用する。もう1つは、専用ソフトで消去できない場合に物理的に破壊する方法である。いずれかの方法で記憶媒体のデータを消去したものは、同様にリサイクル業者に販売して作業終了となる。

 「データ消去の作業でも、終了後に確認のシールを張っています。作業ミスがあってはいけないので、このシールには消去した従業員と消去されたことを確認する従業員の2人が印鑑を押しています」(濱崎氏)

東京テクニカルセンター 東京テクニカルセンターの内部。買い取り直後の機器には機密情報が格納されているものもあり、厳重に管理されている

 なお買い取りを依頼した企業の中には、データ消去証明書を求めることがあるという。パシフィックネットは、「PCホワイト」というデータ消去証明書の発行サービスも提供している。「専用消去ソフトによるデータ消去は“ゼロ”データの1回上書きを基本としていますが、書込み指定や上書き回数を指定される企業もありますので、要望に合わせてデータを消去し、その証明書を発行しています」(濱崎氏)

HDD 専用装置によって物理的に破壊したHDD。記憶媒体のデータを完全に悪用できないようにする

中古PCとして再生

 中古PCとしてリユースするものも、やはり専用消去ソフトでデータ消去を行うが、できない場合はHDDだけを取り出して物理的に破壊する。その後、独自の商品情報管理システム「Lightning」で約40項目にわたってチェックを行う。データ消去はもちろんのこと、動作状況や外装の傷の具合などを1台ずつ商品情報としてデータベースに登録する。

 リユースするものは独自の基準で査定し、A〜Dまでの4ランクに格付けする。その中でOSをインストールするものには、マイクロソフトのMARプログラムで提供されたライセンスを使用しているとのことだ。AおよびBランクの中古PCは、保証対象商品となるもので、DランクはHDDやメモリがないような状態の商品だが、ジャンク品として販売する。

 MARプログラムによる新しいOSをインストールした中古PCには、リカバリ用CD-ROMの添付と「Certificate of Authenticity」(COA)ラベルの貼り付けが行われ、適切な作業によってリフレッシュされた製品であることが一目で分かるようになっている。

リユースPC リユース商品となった中古PC。MARプログラムに基づいてマイクロソフトから提供されたリカバリ用CD-ROMとCOAラベルが製品に添付される

 その後にクリーニングが行われ、商品棚に在庫商品として保管される。この状態の商品はすべて番号で管理されており、特定の商品でも社内端末から型番など条件で検索して、その商品がどの場所に保管されて、どのランク付けがされているかを検索できる。

 こうした工程を経たリユースの中古PCは、パシフィックネットが運営するオンラインショップ「PCNET U-Station」や、全国に9店舗展開する専門ショップ「PCNET」などで販売されている。


 このように、マイクロソフトのMARプログラムに参加する各事業者は、セキュリティ対策と著作権保護を行った上で中古PCを適切に取り扱っている。企業には、ライフサイクルに基づいたPCの管理が求められるが、「廃棄」フェーズではデータ消去など措置が忘れられてしまうケースが少ないだけに、MARプログラムに参加する事業者を利用することが賢い方法の1つだといえよう。

 また、廃棄されたPCがリユース製品やリサイクル品として正しく流通することで、限りある資源を保護することにもつながる。社会貢献の面からも、マイクロソフトのMARプログラムような制度に基づく流通の利用をお勧めしたい。

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提供:マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2010年11月17日