いま求められる「クラウド最適化の方程式」とは?業務からデータまでシームレスにプロセス連携

クラウド利用が本格化する中、基幹システムとの連携に課題も残る。データプロセスから業務のプロセスまでをシームレスに連携し、最適なクラウド基盤を構築するメソッドはあるのか? 専門家に聞いた。

» 2012年07月18日 10時00分 公開
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IT基盤はサイロ化したシステムがスパゲッティー状に絡み合っている

 企業システムにおけるクラウドコンピューティングの活用が、本格化しつつある。 確かにクラウドは、リソース調達が容易なので、短期的なITニーズに応えるためのソリューションとしては大変便利である。しかし、その無計画な利用は中長期的な観点から見ると大きなリスクもはらむ。特にパブリッククラウド型のサービスは、システムの機能やデータが社外のIT基盤上に閉じた形で置かれるため、自社ガバナンスによる統制、システム連携による社内システム最適化を図る上でも限界がある。

 これは、オンプレミスのシステムでもよくある話だ。そもそも企業ITの歴史を振り返れば、初めはごく限られた範囲の業務を支援するために、業務ごとに独立したシステムを個別にスクラッチ開発するのが常だった。それが、ITの業務への適用範囲が広がるにつれ、より効率的なシステムの開発と利用を求めて、パッケージソフトウェアの適用やコンポーネント開発の手法が取り入れられてきたのだ。

 その結果起きたのが、システムの「スパゲッティー化」である。個々のシステム単位での最適化はある程度達成された反面、ITの利用範囲を広げようとすると、連携インタフェースの管理が複雑化し、その開発工数も無視できなくなってしまう。

 こうした状況下で、ある特定のシステムだけをクラウド化し短期的なコストメリットを出したとしても、企業システムの全体最適化の観点から見ると、解決策にはならない。むしろ、ガバナンスやセキュリティーの観点から見ると、マイナス面の方が大きくなることすら考えられる。

複雑化したシステムを連携基盤ミドルウェアで整理する

日立 ソフトウェア本部 第2AP基盤ソフト設計部の吉村誠 担当部長

 では、全体最適化された企業システムの姿と、その中でクラウドが果たす役割とは、どのようなものなのだろうか? 日立製作所(以下、日立)では、この点について明確なビジョンとロードマップを顧客に明示した上で、具体的なソリューションを提案しているという。同社ソフトウェア本部 第2AP基盤ソフト設計部で担当部長を務める吉村誠氏は、次のように説明する。

 「クラウドへ移行する前に、まずはサイロ化し、複雑化してしまったシステムをいったん整理して、個々のシステムをきれいにつなげられる形にする必要があります。その上で、適切なシステムを順次クラウドに移行して、オンプレミスのシステムと相互連携させれば、システム全体を最適化できるのです」(吉村氏)

 具体的には、個別システム間でばらばらに作り込んでいた連携インタフェースを、単一のシステム連携基盤上に集約して整理し、このシステム連携基盤をオンプレミスだけでなくクラウド基盤上にも拡張すれば、適切なシステムを容易にクラウド上に移行して、システム全体のオフバランスを図れるというわけだ。そのためには、クラウド基盤にも自社システムの延長線上で利用できるだけの柔軟性やセキュリティーが求められる。つまり、パブリッククラウドのサービスでなく「プライベートクラウド」のシステム基盤が必要になってくるのだ。

 日立ではそのための具体的なソリューションとして、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づく技術を活用したミドルウェアソフトウェア製品群を提供している。

 プライベートクラウドについては、既に現実的なソリューションとして多くの企業が導入を進めつつある。現に日立では、顧客の社内システムをセキュアなクラウド基盤上に拡張する「バーチャルプライベートクラウド」のソリューションを提供しており、さらにはその上でシステムを構築するためのミドルウェア機能を、クラウドサービスとして提供することを予定しているという。

 「クラウドのメリットを生かして既存のサービスをつなぎ合わせることで、より効率的にシステムを開発・利用できるための仕組みを提供します。具体的には、クラウドアプリケーションを開発するための開発環境を提供するサービスや、業務の作業手順をナビゲートするツールなどをクラウド基盤上で提供する予定です」(吉村氏)

作業プロセスからデータプロセスをシームレスに連携できるSOAの効果。バーチャルプライベートクラウドが有効な手段となる

ユーザーの業務課題から最適なシステム整理の方法を導き出す

 このように、サイロ化したシステムがスパゲッティー状に複雑に絡み合った状態を、整理・整頓した上で、それをクラウド上に拡張してオフバランスしていく。これが、日立が提唱する企業システム全体最適化のロードマップだ。

 ちなみに、ここまで紹介してきた内容は、どちらかというと企業システムを構築・運用する情報システム部門にとってのメリットを強調したものだ。しかし、企業システムを整理して全体最適化を図れば、システムを直接使う立場にある業務部門のユーザーにとっても、大きな効果を期待できる。

 そもそも、異なるシステム同士を連携させたいというニーズは、システムのユーザー側の要請によるものだ。例えば、営業支援システムを販売管理システムと連携できれば、販売実績に基づいたセールスや顧客エンゲージメントの戦略を立てられる。あるいは、生産管理とERPをつなげることができれば、販売・購買データや在庫情報と照らし合わせながら最適な生産計画を立案できる。

 とはいえ、いざユーザーにとって本当にメリットのあるITの整理・整頓に着手しようと思っても、実際には具体的に何から手を付けたらいいのか分からないかもしれない。事実、単にシステム間連携のインタフェースを整理するだけで、ユーザーのニーズをすべて満たせるとは限らない。そこで日立では、実際にユーザーが抱えている課題を分析した上で、その解決に効果がある具体的なIT施策を導き出せる独自のメソドロジーを用意している。

 このメソドロジーのベースには、企業ITに対する日立独自の2つの切り口がある。1つが、システム間連携に対する考え方である。日立では、システム間連携やそれに付随するプロセス間連携を、3階層に分けて定義している。最下層に位置するのが、データ統合のプロセス連携だ。

 これは、システム間連携の前提となるマスタデータベースの同期といったデータ連携を指す。そして中間層が業務プロセス連携。具体的には、各業務プロセスを司るアプリケーション間の連携を指す。そして最上位層に位置するのが、作業プロセスの連携だ。これは、ユーザーが日々の業務を行う上での作業手順や作業ノウハウなどを、ミドルウェアを使ってフロー化し、可視化することで一連の作業プロセスの流れを作り上げるというものだ。

作業・業務・データのプロセスを連携する

 そしてもう1つの切り口が、ユーザーがITとかかわる際の立場の違いだ。日立では、ITにかかわる立場を「業務主管元のユーザー」「アプリケーション開発者」「システム運用管理者」の3者に分けた上で、それぞれの立場で業務のPDCAをスムーズに回すことを支援するのが、ITの本来の役割であると定義している。

ITの視点から、役割ごとにPDCAを回す。このことがBPMにつながる

 その上で、このPDCAの各フェーズにおいて、先述した3階層のプロセス連携がどのように役立つのかを、詳細に定義している。そして日立では、立場やPDCAフェーズごとに、どの階層のプロセス連携が有効であるかをすべてマトリクスの形で整理している。

 「これらは机上で考えられたものではなく、これまで日立が手掛けてきたソリューションの実績を統計化し、定義したものです。顧客にソリューションを提案する際には、まずはユーザーが抱える課題をヒアリングし、それをこのマトリクスと照らし合わせた上で、具体的に適用するソリューションを導き出しています。この手法は顧客からも、『課題の明確化とソリューション選定がやりやすくなった』と高く評価されているものです」(吉村氏)

作業プロセス連携のためのソリューション「Navigation Platform」

 このように、日立ではエンドユーザーの多様な業務課題それぞれの解決に適したソリューションを細かく定義しているが、ここではその中でもエンドユーザーに最も近い位置にある作業プロセス連携のソリューションに着目してみたい。

 同社では、作業プロセス連携のための具体的なソリューションを、「自動作業フロー」「画面情報連携フロー」「対話作業フロー」という3つのエリアに分けて定義している。それぞれに対応するミドルウェアは、自動作業フローにはESB、画面情報連携フローにはポータル基盤、そして対話作業フローには作業手順ナビゲーションツールが用意されている。

 これらの中でも、特に3番目の作業手順ナビゲーションツールに相当するミドルウェア製品「uCosminexus Navigation Platform」(以下、Navigation Platform)は、日立独自のユニークなソリューションだ。同製品は、ユーザーが業務の現場で行う作業の手順をフローチャートとして定義し、さらにその詳細な作業内容をビジュアルな形で提示してくれるというものだ。よくあるワークフローツールとは異なり、実際に業務を遂行するためにユーザーが利用するシステムと連携でき、かつフロー定義やコンテンツ作成もエンドユーザー自身が簡単に行えるようになっている。

 このNavigation Platformを活用して現場作業の手順やノウハウを可視化し、ユーザー間で広く共有することで、ユーザー自らの手で作業の属人化を排除し、作業品質を上げていくことができるわけだ。先に挙げたソリューションマップによれば、特に業務主管元ユーザーとアプリケーション開発者のPDCAサイクルを回す上で、Navigation Platformの適用は絶大な効果があるという。

 また、冒頭でも挙げたクラウド活用によるシステム全体最適化のシナリオとも、Navigation Platformは親和性が高い。他システムと連携できるため、クラウド移行の前準備として必要なシステム間連携において大きな役割を果たす。また日立では、Navigation Platformをクラウドサービスとして提供する計画もあるという。これが実現すれば、社内システムの一部をバーチャルプライベートクラウド環境へと拡張した後も、クラウド環境上でNavigation Platformを活用し、各種サービスを連携することでクラウドを効率的に利用できるようになる。

 こうした例を見ただけでも、日立が提唱するシステム全体最適化のシナリオは、情報システム部門はもとより、実際にITを使って日々の業務を遂行するエンドユーザー部門にとっても多くのメリットをもたらすものだということが分かる。事実、既に多くの企業がNavigation Platformを活用して、現場ユーザーのレベルで効果を実感できるシステム最適化への取り組みを始めているという。本稿では紙幅の関係上、その具体的な内容を挙げることができなかったが、機会をあらためて具体的な事例を順次紹介していく予定だ。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2012年8月17日