大規模基幹システムをクラウド化、システム部の“あるべき姿”を追求するタマホームLead Initiative 2014 レポート

タマホームはオンプレミスの基幹システム運用にかかる工数とコストの増大化という課題を解決すべく、IaaSを活用。煩雑な運用管理が不要になり、「ITを武器にして、収益を生み出す」というシステム部のあるべき姿を追求する体制が整ったという。

» 2014年07月18日 10時00分 公開
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運用管理、コスト、システムの課題解決にクラウド

 木造注文住宅の大手企業・タマホームは、オンプレミスのデータセンターにSAPシステムを構築し、本社サーバルームにある業務系システムと連携した運用で、設計から施工までを一元管理していた。だが、その運用に課題を抱えていたという。7月10日に開かれたインターネットイニシアティブ(IIJ)主催セミナー「Lead Initiative 2014」では、タマホーム 経営統括本部システム部長の賀来義明氏が、クラウド活用による課題解決の道のりを講演した。

賀来氏 タマホーム経営統括本部システム部長の賀来義明氏

 賀来氏によると、旧来の運用方法には3つの大きな課題があった。1つは運用管理。ハードウェアとソフトウェアのメンテナンス負荷が増大するだけでなく、全ての業務に対して属人化が発生し、非効率な管理体制になっていた。2つめはコスト。状況に応じた適切なコスト管理ができず、計画外費用や変動コストが発生。コスト管理負荷も増加していた。3つめはシステム。個別最適化されたシステムが乱立し、いたるところで過剰スペックやスペック不足の問題が発生していた。

 こうした課題を解決するため、タマホームが選択したのがクラウドの導入である。本社内のサーバ室のスペース不足や、サーバの老朽化に伴うメーカーからのパーツ提供の終了もクラウド化を後押しした。

 「業務改革を行う上でのシステム統合や運用見直しや、グローバルな事業を支える機密性や拡張性の高いシステム構築も要求され、それに対応するためにもクラウド化を進める必要性が高まっていた」

 当時、タマホームの情報システム部門は11人で構成されていたが、IT分野の専門家と言えるスタッフはいなかったという。日々増えていくシステム運用は同部門が行っており、余計な管理工数は排除したいと考えていた。

 同社がクラウド事業者に求めたものとして賀来氏は、(1)実績とそれに裏付けられた確たる技術力と先進性、(2)使いやすく豊富なサービス・サービス全体での拡張性の高さ・可用性、(3)適格な説明・迅速な対応・分かりやすさ、(4)タマホームの抱える問題である「全体最適化」を意識しているか――の4つを掲げた。

タマホームが探していたクラウド環境

 クラウド導入のポイントは大きく3つあったという。1つはコストであり、良いものを安く導入したいと考えた。2つめは信頼できるパートナーの選定。「タマホームはシステムの保守運用会社ではないので、餅は餅屋に任せたい」と決めていた。3つめはシステム部門のあるべき姿への移行。専業でないシステム運用はアウトソースし、本来の業務に専念できる環境を整え、1つでも多くの経営課題を解決できる体制を整えたかった。

 クラウドへの移行範囲は、本社にあるSAPの開発環境と人事給与システム、業務システム。これらとデータセンター内のSAPシステムを同一のプラットフォームで展開することを考えたという。

 こうした要件をSIerに伝えると、「長年の実績に基づくノウハウとアプリケーションとデータセンター運用、Basisの三位一体の推進体制がそろっていないとシステムの運用はできない」と回答があった。つまり、1社に運用保守を全て委託することが運用品質や業務負荷の側面でユーザー企業にとっては最良であるということだ。

 「だが、本当にそうなのだろうか」――タマホームはSIerの言う“常識”を疑ってみることから始めたという。そして複数のクラウド事業者にあたったところ、要件を満たすクラウドがIIJの「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」だった。

 同サービスでは、仮想化環境をタマホームのスタッフ自身がコントロールできる。OSを自由に構築したり、仮想サーバを自由に設計したりすることができるといった利点がある。

 導入を決めたポイントは、(1)幅広いソフトウェアをサポート、(2)オンプレミスと同等の自由度、(3)実績あるリソースプール、(4)プライベート接続とほかのGIOサービスとの連携――の4つ。「“持たないプライベートクラウド”を実現できるサービスで、既存資産の移行が簡単に行え、ネットワークポリシーも維持できる。エンタープライズニーズに対応するもので、タマホームが探していたクラウド環境に合致していた」とのことだった。

「とにかくやる!」という強い決心

 ところが、導入前に問題点が浮き彫りになった。「SAPS値(システムサイズを測定するための単位)」の存在と、ベンダー各社の役割分担についての交通整理である。

 「最大の苦労は『やったことがないからよく分からない。だからやりたくない』というSIerなどの対応だった。それでも『とにかくやる!』という強い決心を固めた」

 クラウドへの移行は、3つのフェーズに分けて進めた。フェーズ1ではクラウドの実現性を見極め、フェーズ2では構築と移行手順を確立し、フェーズ3で準備から移行、そして本番稼働を迎えた。システム停止による移行期間は2日を予定したが、実際には1日で終了したという。

 SAPシステムの安定稼働には一定のSAPS値が必要となる。導入したIIJのクラウドでは、1仮想ホストあたり数千〜数万SAPSを実現。また、3万超のIOPSを確保できた。その結果、I/Oに起因する処理は最大330%程度向上し、CPUに起因する処理も最大150%程度の向上を図ることができた。

 なお、クラウド導入時の役割分担はタマホームが決めた。「これが今回のプロジェクトの大きなポイントだ」と賀来氏は言う。

 プロジェクトの結果として、フェーズ1でしっかりと確認し、フェーズ2で構築し、フェーズ3では大きなトラブルもなく移行を完了させた。「つまり、やればできる。当初SIerが話していた三位一体の推進体制がないと運用品質が落ちるといったことは、やれば解決できることだということが分かった」

 今後の取り組みとして賀来氏は、「メールポータルの刷新と、業務システム再構築推進は既に完了した。次はITを武器として収益を生み出す仕組みづくりを行うというシステム部門のあるべき姿を構築していきたい」と話す。

 最後にIIJのクラウドサービス導入の振り返りとして賀来氏は、(1)SAP固有の問題かもしれないが、選定と調達までのリードタイムの長さに不満が残る、(2)構築自体のスピードは速い、(3)気になっていた移行についても最良の提案をしてもらえた、(4)コストは満足、柔軟な基盤が構築できた――の4つを挙げた。「最終的には良いエンジニアと営業担当者に恵まれたことが、本プロジェクトの成功につながった」と締めくくった。

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