オープンデータは世界的なムーブメント、第一人者が語る最前線Lead Initiative 2014 レポート

政府や自治体などの公共データを利活用することで新たな社会価値を創造しようという「オープンデータ」。IIJが開催した「Lead Initiative 2014」ではこの分野の第一人者として知られる公共イノベーション代表取締役の川島宏一氏が、オープンデータの最新動向を紹介した。

» 2014年07月16日 13時00分 公開
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オープンデータとは何か

 ここ数年、政府や自治体などが保有する公共データを利活用しようという「オープンデータ」への関心が高まりつつある。インターネットイニシアティブ(IIJ)主催の「Lead Initiative 2014」のセッション「オープンデータから社会イノベーション」ではこの分野の第一人者として知られ、政府のIT戦略本部・新戦略推進専門調査会や佐賀県特別顧問などを務める公共イノベーション 代表取締役の川島宏一氏が、最新動向などを解説した。

川島宏一氏 公共イノベーション 代表取締役の川島宏一氏

 「オープンデータ」とは、その文字から何らかの形を持ったデータと思われがちだろう。しかし正確には、「Open Government Data Movement」と呼ばれる。政府や自治体などが作成・管理している原則全てのデータを機械判読可能な形で公開し、営利・非営利を問わず利用できるようにすることで、新たな価値を創出していく動きをいう。

 「オープンデータとは、公共データを利活用して社会をより良くしていこうという『世界的な動き』」と川島氏。

 例えば、国勢調査のデータや建築確認、不動産登記などのデータを組み合わせて分析すれば、ある地域の市場性などを明らかにできる。この情報を公的に利用するだけでなく、企業の新規事業など民間分野でも積極的に活用していこうというものだ。

 公的機関が保有する情報の提供手段としては、国内には情報公開制度がある。同制度とオープンデータの根本的な違いは「Open by Default」であること。情報公開制度では原則的に利用者側が公的機関に“申請”しなければ開示されない。しかしオープンデータは、公共のデータは国民の資産であるという考えが根本にあり、“常に利用可能な状態”であるべきとの方針に従う。

 オープンデータが具現化された背景には、情報がデジタル化されたことによる提供コストの低下、インターネットの普及によるアクセス性の向上、そして、データを無償提供することによる経済的価値の創出という認識の高まりがある。こうした意識は世界的に広まり始めており、2013年6月に英国・北アイルランドで開催された主要国首脳会議(G8)では、オープンデータ憲章が採択されている。

価値を創出する8つのカタチ

 オープンデータによって実際にどのようなサービスが生まれているのか。川島氏は以下の8種類の形に分類している。

  1. わかりやすい可視化型
  2. 対話型
  3. リアルタイム型
  4. 悉皆(しっかい)型
  5. ハイブリッド型
  6. 地域パッケージ型
  7. 仲介型
  8. コンシェルジュ型

 (1)では行政の透明性や信頼性の向上を目的としたケースに、国内からも150の自治体が参加する「税金はどこへ行った?」というWebサイトがある。同サイトでは自治体やユーザーの年収を指定すると、1年間に支払った税金と各種の社会サービスで税金が1日あたりどのくらい使われているのかを知らせてくれる。(2)では国民参加の要素を加味した英国の100以上の自治体が参加する「You Choose」が代表的であり、同サイトではユーザーが税金の使用目的を提案できるようになっている。

 (3)は国民の利便性向上という観点から英国・ロンドンではWebサイトで地下鉄の運行状況をリアルタイムに地図上で表示するサービスが提供されている。(4)では全国6000以上の図書館の蔵書や利用頻度を比較できる「カーリル」が有名だ。「民間活用の場合、例えば出版社が貸出頻度の高いジャンルなどを把握して新刊本を企画できるかもしれない」(川島氏)

 (5)は新サービスを創出して経済を活性化させるという事例。The Climate Corporationが代表的な事例。(6)は一定の地域に関わる様々な情報を組み合わせることで、国民への情報提供コストを削減しようというものである。(7)では例えば、鉄道やバスなどのあらゆる交通機関のリアルタイムのデータを第三者機関が一元化し、民間企業を通じてユーザーに提供するというもの。乗り換え案内サービスがこれに近い形であり、「競争関係にある各事業者の情報を公平に集計して活用できる仕組みを提供する」(川島氏)という。

 (8)のケースに横浜市金沢区の提供する「かなざわ育なび.net」がある。同サイトでは区民が郵便番号と子どもの生年月日を登録すると、予防接種の実施日や医療機関などの情報を表示するパーソナライズ機能を提供している。

 このように国内外では多種多様なサービスが既に提供され、川島氏はオープンデータが「やっていこう」というステージから「やるべきもの」というステージに移行していると解説する。上述の事例を含むオープンデータの利活用について、世界各地で活発な取り組みが展開される状況である。

 川島氏は、これからのオープンデータでは事業化に結び付けるノウハウが重要になると指摘する。そのためには、(1)成果から逆算して価値を生み出す流れを設計する、(2)透明性・説明責任・市民協働の視点を包含した展開とする、(3)Open by Defaultを制度化する、(4)データが生成、流通して活用されるエコシステムを形成する――との4点を挙げている。

 多種多様で膨大な公共データのほとんどは、まだ光を浴びていない。オープンデータというムーブメントによってようやくそのチャンスが生まれつつある。最後に川島氏は、クラウドこそがオープンデータのプラットフォームになると語った。

 クラウドによってあらゆるデータを活用していける仕組みが実現する。そして、情報が組み合わされることによって無数の価値が社会に提供されていく時代がすぐそこにまで来ている。

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