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» 2017年08月30日 10時00分 公開

強制適用まで残り1年半! IFRS16により激変する業務と日本基準への適用の行方

日本国内でも導入企業が増えているIFRS(国際財務報告基準)。2019年1月から、その最新基準IFRS16が適用される。IFRS16は現行業務にどのような影響を与えるのか、対応に向けた主な論点は何か、日本基準の改正の行方はどうなるのか――。これらの疑問点についてIFRS16対応の固定資産管理ソリューションを提供するプロシップに聞いた。

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 2019年1月以降開始の事業年度から強制適用となる「IFRS16」。本基準では借手のリース契約は原則全てオンバランス化を要求しており、リース取引を活用する企業にとって、大幅な会計処理の変更を要求している。

激変する業務への影響

Photo プロシップのIFRS推進室で室長を務める巽俊介氏

 「端的に言えば、決算開示は3倍、仕訳パターンは4倍以上に増加する」――。こう説明するのは、プロシップのIFRS推進室で室長を務める巽俊介氏だ。

 まず決算開示についてIFRS16は、主な定量的開示として図1のような開示項目を要求しており、現在と比べて開示項目が増えるのは確実だ。

 従来と異なる点として、まずファイナンスとオペレーティングリースの区分が廃止され、全ての借手リース契約に対して開示が必要になることが挙げられる。さらに、認識の免除規定を採用している短期と少額資産リースは、これまで開示情報として必要がない項目であったが、今後は開示対象に含まれる。本社経理は、免除規定を採用したリース契約についても情報管理が必要となる点に注意が必要だ。

Photo 図1:IFRS16で求められる開示項目(IFRS16第53・54項をもとに編集部で作成)

 仕訳起票については、これまで日本基準とIAS17(現行リース基準)の間でほとんど基準による違いはなかったが、IFRS16では、日本基準とIFRSとでオンバランス化範囲の範囲が異なるため、大きな基準差が発生する。

 そのため単体決算(日本基準)では、オペレーティングリースであるために支払リース料仕訳で完結していた処理も、連結決算(IFRS)ではオンバランスされるため、減価償却費と利息に分けて仕訳を起票する必要がある(図2参照)。そのため、計上から契約満了に至る仕訳のパターンは従来と比べ、4倍以上に増えると想定される。

Photo 図2:日本基準とIFRS16におけるオペレーティングリース仕訳例

 加えてIFRS16は、内部統制の見直し(強化)も必要となる。仕訳作成業務や開示のための情報収集業務が追加または変更されるため、当該変更に伴う財務諸表数値の適切性を担保するための内部統制の整備が必要となる。

 「コンプライアンス順守に向けた内部統制の強化は、経営層にとっての責務であり、近年の幾つかの事件によって、社会的にもその重要性が強く叫ばれるようになっています。IFER16への対応は、そのための現実的な策の1つとして前向きに捉えることもできるわけです」(巽氏)

業績評価に与えるインパクト

 従来、費用処理をしていたオペレーティングリース契約が全てオンバランス化されるのに伴い、売上や利益などに影響を与えることなく、資産のみ増額されることから、適用する全企業のROA(Return On Asset:総資産利益率)は低下すると想定される。

 ROAが下がるとROE(Return On Equity:自己資本利益率)にも影響が及ぶため、これら業績評価指標等に与える影響を踏まえて、早期に本会計基準の適用による影響額を把握し、対策を講じる必要があると考えられる。

 また、現行のオペレーティングリースに係るリース費用は、従来は販管費等に計上されていたが、今後は使用権資産に係る償却費と利息費用に分けて計上される。そのため、利息費用は金融費用として営業外費用となることから営業利益は増加する。

 図3の例題で考えると賃料総額の約10%が支払利息となり、営業利益を押し上げることになる。マネジメント層への報告においては、特に営業利益にインパクトがある制度改正であれば、本社経理部から早急に影響額を報告する必要が生じると考えられる。

Photo 図3:営業利益に与えるインパクト

 さらに、IFRS16により、損益に与える影響以上に多額の資産負債が計上されるようになる。そのため、部門別・事業別のBS・投下資本を適切に管理できるよう、業績管理の仕組みの見直しも検討する必要がありそうだ。

日本基準への適用の行方は

 「資産管理に対してバランスシートや営業利益にこれほど影響を与える制度変更はIFRS16が初めてと言っていいでしょう」――巽氏はこう指摘する。

 その策定の背景には、「リースで収益を上げているなら、固定資産と同様にリース資産をバランスシート上に計上すべき」という10年以上にわたる国際的な議論がある。

 議論の結果、2016年1月にIFRSが、次いで同2月に米国会計基準のリースに関する会計基準が改定された。米国会計基準は借り手の費用計上のパターンでIFRS16と細かな差異はあるが、全リース取引を原則としてオンバランスで行う点は共通している。

 このように、IFRSを採用する欧州と米国でリースに関する基準の見直しが進む一方で、国内の会計基準の改定に向けた正式な動きは、現時点ではまだ見られない。

 「ただし、日本の会計基準設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)は2016年8月に、今後3年間の日本基準の開発の基本的な方針を示す「中期運営方針」を公表しており、その中でリース取引の認識の違いが国際比較で議論となることを指摘している。近い将来のコンバージェンスの可能性も現実問題として極めて大きいといえる」(巽氏)

 そのため企業は、IFRSにとどまらず将来的な日本基準への対応も視野に入れた上で、検討を進めることが求められる。

先行事例にみる検討のポイント

 IFRS16適用に伴う検討のポイントは大きく2つある。業務プロセスの見直しと会計処理ルールの整備だ。

(1)業務プロセスの見直し

 従来はオフバランス処理を実施しているため、各契約締結現場で業務が完結し、本社経理では情報を把握していないケースが多い。一方でIFRS16ではオンバランス処理を要求しているため、本社経理部では各契約の使用権資産とリース債務の残高を管理する必要がある。そのため、各現場から本社経理部への情報収集を行うソリューションの検討が必要となる。

 まずは本社経理部が主体となり、各契約締結部署と本社経理とのリソースやリテラシーを踏まえた役割分担を検討し、状況に合わせてワークシートの展開やシステム対応を検討することが重要となる。それに伴い、稟議プロセスもこれまでの費用計上から資産計上のフローに変更になるため、固定資産やファイナンスリースの物件等を参考にした申請、承認続きの整備が必要となる。

Photo 図4:IFRS16適用前後の処理フロー

(2)会計処理ルールの整備

 主に適用範囲、会計期間、再測定時におけるルールの整備等があげられる。まず適用範囲として、企業における不動産リースは多種多様な物件(本社ビル、営業拠点/店舗、社宅、駐車場など)が想定されるが、IFRS16をどの範囲まで適用するか、重要性の概念を踏まえて監査法人との協議が必要となる。次に会計期間を決めるが、本基準は契約期間=会計上の期間にならない可能性があることに注意が必要である。

 期間の定義は、「解約不能期間+合理的に延長や解約の行使が確実な期間」と定められているため、過去に繰り返し契約更新をしている物件などは延長することも視野にいれた期間設定が必要になる。また、使用中の不動産のリース期間となるため、期間決定にあたっては資産除去債務の履行期間や減損会計の測定に利用する将来キャッシュフローの期間などとの整合性にも注意が必要である。

(3)十分な準備期間をもって対応を

 これまでの説明からも分かる通り、IFRS16への対応は一筋縄でいくものではない。対応漏れを防ぐためにも、まずは現状のリースに関する管理状況の分析を行い、その結果を踏まえて監査法人と対応方針を固め、業務とシステムの両面で仕組みを整備するといった具合に、段階的に対応を進める必要がある。

 ただ、対応範囲の広範さから、影響の大きい企業については一般的に作業完了までには約2年を要すると見られており、「今から準備を始めても初年度での対応は困難」という声も聞こえ始めている。

Photo 図5:先行事例にみる対応までのスケジュール

 そこで“鍵”を握るのが、作業負荷を軽減するためのシステム(ソリューション)選びだ。国内の会計基準は当面現行基準での対応が必要なことから、システムには複数帳簿への対応が必須となる。また、日々の経理業務の軽減のために、開示対象を自動収集できることが求められる。さらに、現場に入力を促すためには、使い勝手の良いインタフェースが不可欠だ。

 プロシップが提供するProPlus総合固定資産管理ソリューションは2017年1月にIFRS16新リース対応版をリリース。動産、不動産リース双方の使用権資産とリース債務の一元管理を実現し、1契約に対して複数基準対応と自動判定機能を実装している。

 次回はシステム対応に求められる機能要件とソリューション、影響額試算などの活用を見込める具体的なツールについて解説する。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2017年9月29日