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続・クラウド時代のシステムインテグレーターの役割Weekly Memo(2/2 ページ)

富士ソフトとマイクロソフトが先週発表したクラウド事業における協業強化は、クラウド時代のシステムインテグレーターの役割を探る上で興味深い動きといえそうだ。

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グーグルとマイクロソフトを選択肢に

 白石社長と並んで会見に臨んだマイクロソフトの樋口泰行社長も、富士ソフトとの協業強化の意義をこう強調した。

 「まず、ユーザーにとってはオンプレミスとクラウドを融合したシステム構築が可能となることで、ビジネスニーズの変化に柔軟に対応するとともに、業務効率の改善とITコストの削減を図れるようになる。マイクロソフトとしてもそうした融合戦略において、富士ソフトの高い技術力を活用することで、一緒に新たな市場創出を図っていけると考えている。富士ソフトとのパートナーシップは、クラウド分野では最初から強力に連携してきたわけではないが、今回の協業強化によって共に繁栄していけるように尽力したい」

 協業強化の内容や意義についての説明はこれくらいにして、話を元へ戻そう。富士ソフトがサービスインテグレーション力を持つシステムインテグレーターへの道を歩み始めたとみられるのは、すでに2008年夏からマイクロソフトにとって宿敵であるグーグルの企業向けサービス「Google Apps Premier Edition」を販売展開しているからだ。

 当時、グーグルが日本で同サービスの販売代理店契約を結んだのは、富士ソフトが初めてだったことから、2008年6月11日に両社の首脳が並んで行われた発表会見に注目が集まった(「「Googleで変えたい」と富士ソフトの堀田副社長」)。さらに、従来からマイクロソフトと親密な協業関係にある富士ソフトがグーグルと組んだことも注目度を一層高めた。そして富士ソフトは今や同サービスの国内トップセラー企業となっている。

 冒頭、クラウド時代のシステムインテグレーターの役割を、プラットフォームの選択肢も保持した上でクラウドの利用の仕方を検討したいというユーザーニーズに応えることと述べたが、グーグルとマイクロソフトのサービスおよびプラットフォームを選択肢として提案できるようにするのはまさに理想的なスタンスだ。

 白石社長はマイクロソフトとの協業強化とグーグルのサービス展開との兼ね合いについて、「当社はマルチベンダーに対応した独立系のインテグレーターとして、個々のユーザーニーズに応えるのが最大の使命。その意味ではどちらも品ぞろえの一環だ」と言い切った。

 ただし、「実際、市場にはマイクロソフトのアセット(資産)が多く、オンプレミスからクラウドへ移行するコストに対して懸念するユーザーが少なくない。そうしたユーザーにはマイクロソフトのソリューションが適している」と、マイクロソフトとの協業強化に結び付けるコメントも忘れなかった。

 グーグルに加えてマイクロソフトのクラウドサービスにも本腰を入れ始めた富士ソフト。マイクロソフト製品関連の売り上げとして、2010年度に20億円、2012年度には70億円を見込んでいるが、果たしてしっかりと収益を上げられる事業構造を構築することができるか。先陣を切ったサービスインテグレーターの果敢な取り組みに注目したい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。




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