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Chapter 2:Windows NT 4.0のTCP/IPサービス 〜WINSとDHCP〜

2.4 レプリケーション

 WINSには,DNSのような階層構造の概念はないため,各WINSサーバーが独立して動作する。このため,WAN環境で複数のWINSサーバーを利用している場合は,各WINSサーバーのデータベースを参照できるようにする仕組みが必要になる。これを解決するために,WINSサーバーには,サーバー間のデータベースをレプリケーションする機能が備わっている。WINSサーバー間でデータベースをレプリケーションすることにより,ネットワーク上に存在するWINSサーバー間で各WINSサーバーに登録されたNetBIOS名を共有できるようになる。

 レプリケーションは,各WINSサーバーから,ほかのすべてのWINSサーバーに対して実行する必要はない。あるWINSサーバーからレプリケーションされたデータベースの内容を,ほかのWINSサーバーに複製することも可能である。つまり,WINSサーバーを階層的にレプリケーションさせることもできる。とはいっても,これはDNSのように分散データベースを構築できるという意味ではない。WINSサーバーでレプリケーションした場合,単純に同じ内容のデータベースが各WINSサーバー上に存在することになる。

Fig.2-5 WINSが存在する場合のクライアントからのブラウジング
fig.2-5

 レプリケーションするWINSサーバーには,プッシュパートナーかプルパートナーの指定をしなければならない。パートナーに指定されていないWINSサーバーは,データベースのレプリケーションには参加できない。プッシュパートナーとプルパートナーの違いは次のようになっている。

プッシュパートナー
 WINSデータベースに変更があったとき,更新を通知するWINSサーバー。
プルパートナー
 WINSデータベースのレプリケーションを,指定された複製間隔に従ってリクエストするWINSサーバー。

 たとえば,WINSサーバーAとWINSサーバーBがあり,WINSサーバーAでプッシュパートナーとしてWINSサーバーBを指定した場合,WINSサーバーBではWINSサーバーAをプルパートナーとして指定する必要がある。プッシュパートナーとプルパートナーの動作の違いを見ればわかると思うが,頻繁にデータが更新されるWINSサーバーであれば,プッシュパートナーを指定すればよいし,WANを経由していて負荷が気になる場合は,プルパートナーを指定すればよい。このように,プッシュパートナーとプルパートナーは,WINSデータベースの情報の重要度や,ネットワークの構成によって決定することになる。

 レプリケーションは,WINSサーバーに指定された複製間隔に従って実行される。このとき,WINSデータベース上にある,すべてのレコードを複製するわけではない。レプリケーションするときに複製すべきレコードであるか否かを判定するために,各WINSサーバーが管理しているバージョンIDを使用する。レプリケーション元に存在するレコードのバージョンIDがレプリケーション先のバージョンIDよりも大きい場合には,そのレコードが更新されているものと判断され,複製される。

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