クルマ専用の4Mbps高速通信
ETCの無線インフラを活用したクルマ向け情報サービス実験
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1月29日〜2月2日の5日間、常磐自動車道・守谷サービスエリア(茨城)で、「スマートコミュニケーション実験」が実施された。これは、国土交通省と、自動車、情報通信、建設などに関連した民間企業184社・団体で構成される「スマートウェイパートナー会議」が主催したもの。
スマートコミュニケーション実験はプレス関係者だけでなく、一般向けにも公開された。トヨタ自動車、日産自動車、松下電器産業、三菱電機がそれぞれクルマを持ち込み、車内では試作車載器によるデモが行われた。ハード面はほぼ出来上がっているという印象を受けた
スマートコミュニケーションとは、1つの車載器によって、さまざまな情報を車内で得られるサービスのコンセプト。通信インフラには、高速道路の料金収受システムであるETCに使用されている「DSRC」と呼ばれる無線通信技術をさらに進化させ、通信速度を高めた(1Mbps→4Mbps)「マルチDSRC」システムを利用する。高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で、近隣のドライブスポットやエリア内施設の詳細な情報提供や、ファストフード店のドライブスルーでの商品注文や支払い、ガソリンスタンドでの交通情報配信や支払いなどのサービスが想定されている。また、ホームページの閲覧や電子メールも、IP電話(課金方法は現在検討中)の利用も可能だ。
日本道路公団の試験用画面。道路交通情報、SA・PAの施設案内、道路関連ニュースなどドライブに役立つ情報を提供する
リアルタイムに道路の画像を表示することも可能。このように積雪時には雪の降り具合や雪かきの状況も知ることができて、とても便利だ。交通量も確認できる
車線規制についてもわかりやすく表示。事前にこのような情報がわかると、ドライバーとしては安心感が違う。詳細な区間や時間も表示することができる
およそ100km先までのSAやPAの施設情報を表示する。レストランだけでなく、なんとトイレの込み具合まで確認が可能だ
インターネット接続や電子メール、IP電話など、さまざまなサービスを予定している。これまでの車載通信システムに比べ通信速度が速い分、用途は広い
ただしマルチDSRCは、基本的にETCと同様、極めて狭い範囲にしか電波が届かないために、通常の無線やFM波のように広範囲で情報を得ることはできない。SAやPAの場合は駐車スペースの一部でしか利用できないという(ハンドオーバーの技術も検討されている)。無線LANのホットスポットのようなものと考えるとわかりやすい。
さて気になる実現化だが、車載器メーカー側では「早ければ来年度末」までの商品化を目標とし、価格は「現在のETC車載器+α」程度に抑えたいという。
あとはインフラの整備だが、この不況下でどれだけの民間企業が設備投資を行い、新システムを導入するかは未知数だ。使える場所が役所関連施設、高速道路関連施設だけとなれば、数万円もする車載器を購入する人などほとんどいないだろう。スマートコミュニケーションが現実となれば便利で快適に違いないが、超えるべきハードルはまだまだ多いようだ。
マルチDSRCの仕組み
DSRCとは、ETCで採用されている無線通信技術。高速(最大伝送速度4Mbps)な双方向通信が可能で、車向けの多様なITSサービスに応用できる。マルチDSRCサービスでは、リクエストに応じた走行サポート情報、音楽・動画配信、インターネット、電子決済などが利用できるようになる。
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■国土交通省道路局 ITSホームページ
www.its.go.jp/ITS/j-html
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