日本初! 既設マンション全戸をFTTH化
〜埼玉県・さいたま市の大規模マンションの場合〜
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アルーサ北与野ノースピア上落合団地は1992年に分譲。マンションの基幹部までが光ファイバー化された、いわゆる「光収容」のためADSLの導入が難しく、早くからインターネット設備の導入を検討してきた
新築の分譲マンションでは、もはや付いていて当たり前の感さえあるインターネット接続環境。中には各住戸に直接光ファイバーを引き込み、最大100Mbps対応をうたっているところもあるが、一方で既設のマンションでも、インターネットの設備を導入するところが増えてきている。
ただし、既設のマンションの場合は、マンション内部の配管にケーブルを通す空きスペースがないなどの理由から、マンションの基幹部までは光ファイバー化されていても、各住戸からのアクセスにはADSLと同様に電話回線を使う方式が主流。より高速で安定度の高い光ファイバーを部屋の中まで引き込むのは、技術面、コスト面からも難しいとされてきた。
そんな中、NTT-MEが先日、既設の大規模マンション全戸に、光ファイバーを導入したと発表した。1992年に分譲された、さいたま市の「アルーサ北与野ノースピア上落合団地」で、既設マンションの全住戸にまで光ファイバーを引き込んだのは、日本で初めての試みという。
インターネットを利用する場合は、シェア型の「WAKWAKピアル」または「Bフレッツ」のいずれかのサービスを申し込み、それぞれに対応するメディアコンバータを取り付ける
各戸には2心の光ファイバーが引かれている。1つはインターネット接続。もう1つは将来の映像系サービスなどに使用することが想定されている
NTT-ME システムデザイングループの石橋英二氏によれば、今回の試みが実現した背景には、同社がこれまで培ってきたノウハウに加え、光ファイバーケーブルの進化がある。これまでよりも曲げに強いものを採用することで、細い電話線用の配管にケーブルを通すことが可能になり、配管の空きスペースのない既設マンションでも、各戸に光ファイバー回線を引き込めるようになった。また、施工方法を工夫することで、従来よりも低コスト化を実現。同マンション管理組合理事長の椿本雅則氏は、「新たに住民に負担をかけることなく、積立金の範囲内で工事を行えたので、とくに反対もなく導入することができた」という。
今回の事例では、最大100Mbpsの回線を複数のユーザーで共有するシェア型のサービスに加え、希望する住民には、NTT東日本と直接契約することで一般の戸建て向けサービスと同様に、最大100Mbpsの回線を占有できる「Bフレッツ」が利用できるようにした。安くインターネットを利用したい人はシェア型サービス、速さを求める人やほかのプロバイダを利用したい人はBフレッツと、住民が自分でサービスを選べるようにしたのだ。
これまで、既設のマンションにインターネットを導入する場合、ユーザーが利用できるのは、プロバイダを選べないシェア型のサービスに限定されていたが、今回、各戸に光ファイバーを引き込み、Bフレッツの利用を可能としたことで、その選択肢はぐっと広がった。同マンションでは現在、全494戸のうち、85戸がシェア型、10戸がBフレッツを利用しているが、椿本氏はこれを「住民に呼びかけて、さらに利用者を増やしていきたい」としている。
各戸につながる光ファイバー回線を集約するパッチパネル。横にはNTT東日本の光成端キャビネットが取り付けられていて、ここに各戸の回線を直接つなぐことで、Bフレッツが利用できる
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