今年3月からいよいよFTTH事業へ乗り出した東京電力。電力ネットワークの効率的運用・管理を目的に、1978年以降、光ファイバーネットワークの整備に取り組んできた同社が、IT化の進展やブロードバンド通信のニーズの高まりなどにより、FTTH事業に参入することになったのは自然な流れといえるだろう。東京電力 光ネットワーク・カンパニー ジェネラルマネージャーの田代哲彦氏に今後のFTTH事業への取り組みについて聞いた。
東京電力のFTTH事業は、他社へのホールセールとなっている。現在、約6.2万kmの光ファイバー網を張り巡らせており、2005年度までに新たに約5万kmの光ファイバーを敷設する予定だが、「穴を掘ってケーブルを敷設すると、数千万〜数億円かかってしまうが、既にある電柱にケーブルを張ることで、コストを抑えられるというメリットがある」という。さらに、「伝送装置が安くなってきたことと、光ファイバー自体も工事費が安くなってきたため、供給コストはそれほど高くはならない」とのことだ。
現在、@nifty、BIGLOBE、TTnet、So-netが東京電力のFTTH回線を利用しているが、さらに「20数社と提供に向けて交渉している状況」とのこと。
また、関西電力などほかの電力系FTTHとの価格差については「戦略の違い」とし、「関西などでは価格を安くしてユーザーを増やすことでコストを回収しているため」だという。東京電力以外はプロバイダー事業も併せて行っているため、そのあたりもホールセールに特化した東京電力との価格差に表れているのかもしれない。
いち早くFTTH事業に乗り出した有線ブロードネットワークスは、個人向けのFTTHサービス「BROAD-GATE 01」を月額利用料6100円という低価格で提供している。
有線ブロードネットワークスは、顧客が確実にいるところに光ファイバーを引くことで、回線整備にかかる1人当たりのコストを下げ、価格を低く抑えている。
既にあるファイバー網を利用するNTTや電力系と違い、エリアを広げる競争ではどうしても遅れ気味になる。その一方で、価格優位性を生かし、例えば、Bフレッツと競合した荒川区では、NTT以上のシェアを獲得することに成功している。
また、有線ブロードネットワークスでは、FTTH以外にも光ファイバーケーブルと同軸ケーブルを組み合わせたHFC(Hybrid Fiber Coax)通信のフィールド実験を6月より開始している。このフィールド実験は、有線音楽放送用に全国に敷設している約22万キロの同軸ケーブルをアクセス回線の一部として活用するために必要な技術検証やマーケティング調査を行うためのものだ。
HFCによるサービスが実現すれば、投資対効果の関係でエリアを広げきれていないFTTHサービスよりも広範囲で高速なインターネット接続サービスを提供できる。8月末までのフィールド実験ののち、月額3000円台での本年度中の商用化を目指している。FTTHを補完し、有線ブロードネットワークスのエリア展開の速度を加速するものとして期待される。
有線ブロードネットワークスはIP電話サービスも開始した。