ここまで読んでどのような感想を持っただろうか。「ネットランナーらしいな」と思った人もいれば「ふざけんな、ネットランナー編集部員は全員今すぐに回線切って手首切って首吊って豆腐の角に頭ぶつけてシネ」と憤りに打ち震えた人もいることだろう。決して今回の結果が万人にとってベストではない。これはあくまでもネットランナーが選んだものだ。きっと、あなたの心の中には別の「ベスト・オブ・悪用厳禁ツール」があるに違いない。もし、そういう隠れた名ツールがネットの片隅にひそかに存在しているのであれば、ぜひとも編集部まで知らせてほしい。
それぞれの部門の候補を絞り出す作業は困難を極めた。ネットには、膨大な数のツールが存在している。更新はされずとも根強いファンが使い続けているツールというのもあったし、作者がいなくなっているのに有志の手によって支えられ続けているという素晴らしいツールもあった。
ここで、あらためて今回の各受賞作品を振り返ってみよう。サーバ&コミュニティー部門賞での「BlackJumboDog」は単体ソフトでありながらウェブサーバ、メールサーバ、プロクシサーバの3種類の機能を持ち、ファイル観賞部門賞の「極窓」はファイルの圧縮・解凍から拡張子判別までさまざまなことをこなしている。この両者はどちらも1粒で何度もおいしいツールだ。
ブラウズ部門賞の「Sleipnir」とダウンロード部門賞の「Irvine」はどちらも、それまでに存在した同ジャンルのソフトのよい部分を積極的に取り込んだ総合的な機能を持ったツールだ。特定の機能だけが優れているわけではなく、豊富な機能とそのバランスが絶妙なのだ。特に大賞となった「Winny」はその傾向が最も顕著だ。P2Pのそれまでの欠陥の1つである匿名性を克服しているだけでなく、基本的な機能も作り込まれている。今回受賞されたツールは、どのツールも決して手抜きはしない、妥協はしないというのが共通項だ。
ツールというものは作者が1人で作るものではない。ユーザーと共に作り込んでいくものだ。どんなに優秀なツールであっても、だれにも使われず、注目されなければ意味がない。だから、ツールを使うこと自体でも立派な開発支援となる。これからもネットランナーは開発支援の礎となるべく、日々優秀なソフトや注目株のソフトを探し出して皆様に紹介し続けることを誓おう。そして、既にこの瞬間から、次の「ベスト・オブ・悪用厳禁ツール」探しは始まっているのだ。