ISDNとADSLは、ともに一般電話回線を使用するため、周波数帯域が重なる部分で相互干渉が発生し、やり取りされるデータがダメージを受けてしまう。そのためAnnex-Cでは独自の方法が採用されている。ISDNのデータ通信方法は「ピンポン式」と呼ばれ、1.17ミリ秒ごとに送信と受信を切り替えている。ISDNの送信時にはADSLの下り信号が、受信時には上り信号が干渉するため、ピンポン式とシンクロしてADSLも上りと下りの信号を切り替えている。
12MbpsのADSLサービスには、高速化と長距離化のための技術が採用されている。そのうち高速化に広く使われている技術が「S=1/2」だ。「S」はデータの精度を上げるための「リードソロモン符号」のことで、250マイクロ秒という時間の中に通常1つのリードソロモン符号によって255バイトのデータが作成され、DMTシンボルとなる。これが「S=1」だ。しかし、この方法では変調ごとに255バイトのデータしか送信できない。これが現在の8Mbpsサービスである。「S=1/2」では、250マイクロ秒にデータを2つ作成することで、DMTシンボルのデータ量を倍にしている。計算上は16Mbpsということになるが、実際には1変調あたりの容量が15ビットなので13.38Mbpsが上限となり、実測値は12Mbpsとなる。